悔悟節のための4つのモテット
『悔悟節のための4つのモテット』(Quatre motets pour un temps de pénitence) FP 97は、フランシス・プーランクが1938年から1939年にかけて作曲した4曲の宗教的モテット。痛悔のためのラテン語のテクストを用いて書かれており、無伴奏混声合唱のための楽曲となっている[1][2]。
概要
[編集]プーランクは1936年に初めて宗教音楽へ意識を戻して『黒い聖母像への連禱』 FP 82を作曲、翌1937年には続けてミサ曲 ト長調を書き上げた。続いて4曲のモテットが[3]、それぞれ異なる時期に作曲された。プーランクは次のように述べている。「ミヨーの素晴らしい『平和のカンタータ』と『2つの都市』の初演(中略)に出席していた間に(中略)自分のモテット集のまさにその着想が浮かんできた(中略)まるでマンテーニャの絵画のように生き生きと、そして悲劇的に[4]。」第1曲の「Timor et tremor」は最後に書かれており、1939年1月にノワゼで完成されてマイエ司祭へ献呈された。同地では1938年12月に第2曲「Vinea mea electa」の作曲も行われ、これはイヴォンヌ・グーヴェルネへ献呈されている。第3曲「Tenebrae factae sunt」が作曲順では最初にあたり、同じ場所で7月に完成されるとナディア・ブーランジェへ捧げられた。第4曲「Tristis est anima mea」は1938年11月にパリで書かれ、エルネスト・ブールモークに献呈された[1]。ア・カペラの混声合唱のためのモテットであるが、声部は時にそれ以上に分割される[5]。
初演はクロワ・ドゥ・ボワ少年合唱団により[注 1]、1939年2月にパリで行われたものと思われる。クロード・シャンフレー(Claude Chamfray)の伝えるところによると、受難週のうちに複数の教会で再演されたという[6]。
楽曲構成
[編集]4曲のモテットの構成は以下の通り[1]。
- 恐れとおののき、われを襲い (Timor et tremor)
- 選ばれしわがぶどうの木 (Vinea mea electa)
- 辺りは闇となった (Tenebrae factae sunt)
- わが心は悲しむ (Tristis est anima mea)
第1曲の「Timor et tremor」は詩篇54篇と30篇から韻文を合わせたものであり、オルランド・ディ・ラッソも同じテクストでモテットを作曲している[7]。他の3つのモテットは受難週のレスポンソリウム(応唱)に基づいている[7]。「Vinea mea electa」は聖金曜日の早課への応唱、「Tenebrae factae sunt」は聖土曜日の早課への応唱、「Tristis est anima mea」は聖木曜日の早課への応唱である[1]。
演奏時間は約13分[4]。
脚注
[編集]注釈
- ^ Les Petits Chanteurs à la Croix de Bois
出典
- ^ a b c d Schmidt 1995, p. 288.
- ^ Bowen 2008.
- ^ Lace 2000.
- ^ a b 悔悟節のための4つのモテット - オールミュージック. 2022年1月3日閲覧。
- ^ Schmidt 1995, p. 289.
- ^ Schmidt 1995, p. 292.
- ^ a b Schulz 2016.
参考文献
[編集]- Bowen, Meurig (2008年). “Francis Poulenc (1899–1963): Quatre motets pour un temps de pénitence (1938–39)”. Hyperion Records. 28 December 2016閲覧。
- Lace, Ian (2000年). “Francis Poulenc (1899–1963) / Libertè – Francis Poulenc a cappella”. musicweb-international.com. 4 January 2016閲覧。
- Schmidt, Carl B. (1995). The Music of Francis Poulenc (1899–1963): A Catalogue. Oxford: Clarendon Press. ISBN 978-0-19-816336-7
- Schulz, Ingo (2016年). “Francis Poulenc (1899–1963): Quatre motets pour un temps de pénitence (1938–39)” (ドイツ語). emmaus.de. 28 December 2016閲覧。