コンテンツにスキップ

少年伯爵シリーズ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

少年伯爵シリーズ(しょうねんはくしゃくシリーズ)とは流星香:著、おおきぼん太:挿絵の少女向けライトノベル角川ビーンズ文庫より発行されている。全6巻。

概要

[編集]

吸血鬼」をテーマにした西洋ファンタジー小説。貴族ならではの苦悩や、人と吸血鬼の狭間の苦悩が描かれている。

あらすじ

[編集]

16歳で伯爵の位に就いた少年ベルナルドは、可愛らしい外見とは裏腹の強気な性格、それでいて人への気遣いに満ちあふれた優しい心の持ち主である。ところが爵位を継承していくらも経たないうちに不慮の事故にあい、領民達への想いから人ならざるもの「求血鬼」となってしまう。

一方、上司部下から絶大な信頼を寄せられている軍人レオニールは、都に蔓延る怪物を退治ていくうちに自身に異変を感じ始める。そして彼は、護るべき人々への想いから人ならざるもの「給血鬼」となってしまう。

少年伯爵と彼を取り巻く過保護な従者や、敏腕軍人と彼を補佐する苦労人が奏でるヴァンパイアストーリー。

登場人物

[編集]
ベルナルド(愛称:ベル)
本作の主人公。16歳で爵位を継承した若き少年伯爵。
可愛らしく繊細そうな外見とは裏腹に、かなり強気で豪胆な性格。しかし「領民のために」という責任感や無関係の人々を巻き込みたくないという想い、小鳥やリスなどの小動物に懐かれることからも、とても優しい心の持ち主であることがわかる。
ある日、王子の誕生パーティーにて開かれた狩猟会で、白鹿と間違えて誤射されるという事故に遭い生死の境を彷徨う。その時、自分が死んでしまったら領民達が重い税に苦しみことになる、という責任感と優しさから死を拒み、辛うじて一命を取り留める。しかし、死を拒絶する強い想いが、彼の中に眠っていた王族の血を呼び覚まし、結果として「求血鬼(血を求める鬼)」となってしまう。そのため、領主として領地を治めることが出来なくなったので、双子の弟を身代わりにたてて、忠義な従者4人を連れて屋敷を出た。現在は吸血鬼化したという遠縁の人を訪ねて旅をしている。
レオニール(愛称:レオン)
若い身空でありながら、一小隊を任されるほどの軍人。人柄や功績から、上司の信頼が厚く部下の畏敬の念を引いて止まない凄腕の人。天賦の才を持ちながらも決して努力を怠らない真面目な人。またルックスも良いため、貴族の令嬢を虜にしているが、そっち方面には疎いのか全く気づいていない上に興味がないらしい。とある貴族の養子であるが、レオニール自身も王族の血を引く貴族である。意外と可愛い物好きであるが、外見が外見であるために動物からはなかなか懐かれない。が、本人は全く気にせず嫌がる動物を無理矢理可愛がっているらしい(それがベルナルドへの接し方にも影響している)。
突然都に蔓延り人を襲う怪物を退治ていくうちに、人を護りたいという正義を貫こうとする絶対的な想いが生まれる。その想いが、彼の中に眠っていた王族の血を呼び覚まし、結果として「給血鬼(血を与える鬼)」となってしまう。覚醒してからは、今までよりもワイルドな雰囲気を出し、少々好戦的にもなったようである。そして、対を成す「吸血鬼」ベルナルドと出会い、彼に隷属となる契約を交わした。
セルバンティス(愛称:セルバン)
ベルナルドを溺愛する伯爵家の執事。ベルナルドの父親に人買市場で買われ、それを恩義に感じて彼の死後もベルナルドに仕えている。行動の判断基準が常にベルナルドであり、ベルナルドからの信頼も厚い。その心は、彼を護るために義手義眼となり、声を失って機械で補うことから、かなりのものだとわかる。
また、彼を護るために身につけた剣技は相当なもので、怪物を倒す様を見ていたレオニールが「戦力に数えられないのが惜しい」と思ったほどである。
オースティン(愛称:オーサ)
伯爵家の庭師。どちらかというと寡黙であるが、ベルナルドについてきたことから彼を心底大切に思っていることがわかる。庭師であるため、怪物と戦うときはを用いるが、彼に使わせればただの鎌でも木々を切り倒し怪物を撃退するほどのものである。
マーゴット(愛称:マギ)
伯爵家に仕えるメイド兼メイド頭。さっぱりとした姉御肌のような女性でしっかりもの。メイド頭なだけあって、てきぱきと指示を出す姿にはどこか風格がある。
ミリアム(愛称:ミリ)
伯爵家に仕える新米メイド。器量が悪く不器用で、失敗ばかりしているドジっ子。しかし、ひたむきで芯の強いところがあり、主である伯爵のピンチには身体を張って護ろうとする勇気もある。
ベルナルド伯爵(愛称:ルディ)
ベルナルド伯爵の双子の弟で、同名だが、弟であるために愛称は名の下の部分で呼ぶ。兄伯爵と容姿も声も瓜二つだが、性格は正反対で、繊細かつ素直でたおやか。しかし一度言い出したら聞かない頑固な面も持つ。甘い物が得意ではない。貴族間では「長子の双子は凶事」とされるため、いざというときの影武者として森の中で密かに育てられた。両親の愛情を一身に受け、従者達に囲まれて幸せに暮らす兄伯爵を羨み、兄が死んだ代わりに晴れて表舞台へと出られたが、あることから兄伯爵が生きていると知って、当初は彼を殺すとしていた。後に和解してからは二人きりの兄弟として仲良くなり、それまで離れていた反動もあってか極度のブラコンとなる(兄伯爵も弟伯爵にはかなり甘い)。
ランディオール(愛称:ランディ)
弟伯爵付きの執事。元は一族総出の盗賊団の一員で、トールキンス侯爵のに捕まったときに引き取られた子ども。妹を人質にとられ、その代わりに弟伯爵の教育係を任される。変装術が得意で、顔はもちろん声や仕草、癖なども完璧に模倣することが出来る。裏社会で生きてきたのでやや粗暴な面もあり、仕事とあらば人を傷つけることも厭わないが、面倒見がよく根は優しい。大切な若さまである弟伯爵には情もたっぷり移っているようで、彼のために兄伯爵を殺そうとまでし、そのことに弟伯爵が関与していることは口を割ろうとしなかったほどの忠誠心がある。
フェルナンド(愛称:フェル)
レオニール小隊の副隊長で、レオニールの親友。給血鬼として覚醒し始めた彼を案じる。猪突猛進しようとする隊長のストッパーとも言える存在。ある意味一番の苦労人。
ハニーデューク
謎の多い医者だが、医師免許(本物)を持っている。飄々とした性格でつかみどころがなく、よくわからない人。酒好きでよくワインを飲んでおり、いつも酔っぱらっている。それでも医者としての腕は確からしく、犬を使ってまで彼を捜そうとする患者から逃れるために、屋根や塀の上を歩いているのだそう。なぜかいつも大量のレミングを連れている。「吸血鬼」についていろいろと知っているらしいが、詳細は不明。
ジョシュア王子
ストロハイム国王の嫡男にして、次期国王。長い金髪を持つ美しき王子。その自身も美しいものを好むが斑っ気があり、いままで気に入っていたものを急に壊したり乱暴に扱うなどするという。現在のお気に入りはベルナルド伯爵で、しょっちゅう二人でお茶を楽しんだり、伯爵のピアノを聴いたりしている。王族だけに遊びであれど敗北は許されず、ダイスチェスなどのゲームも負けナシ。また、ベルナルド兄・弟伯爵のすり替えに気づいたり、怪物の研究の指揮を執っていたり、その他諸々怪しげな面を持つ謎の多い人物。公式設定のドS
トールキンス侯爵
ベルナルド伯爵の祖父。に多大な影響力を持ち、ストロハイム国王のチェスの指南役でもある。軍事に関わっているだけあって非情な面もあるが、人としての温情はある。実際、ランディオールの妹を人質にとってはいるが、彼女の暮らしぶりは決して悪いものではない。孫の二人を猫かわいがりしており、「ベルちゃん」と呼んで抱きついては頬擦りし、バラの花をかけまくっている。スキンシップを受けるのはもっぱら兄伯爵で、当然本人は煙たがっているが改善される見込みはない。

関連語句

[編集]
吸血鬼
遙か昔、1人の王様が「不老不死」に憧れて秘薬を作らせた。しかし当然ながら薬は失敗作。それを服用した王様は、薬のためか発狂して多くの人々を殺し死んでいったが、王様の死後に大変なことがわかった。失敗したはずの薬が、新たな効力を持って王家の血筋に残った。その血に宿る力は強い想いによって目覚め、王家の血を引くものを「吸血鬼」とする。
宮廷建築家が図面を引いた建物には、吸血鬼の気配を隠す力があるらしい。また、桐の棺に収まっていること・墓場の土にも同様の効力がある。
求血鬼
人の「死を拒む」強い想いに反応して覚醒する。求血鬼は動植物や物からも生気を奪うため、その者の周りは自然と温度が低くなる。触れただけで植物は枯れ、動物は死に、物は朽ちるスピードが速まる。
血を得ると、体温が高まって生気を奪う必要がなくなるので、動植物にも普通に触れられる。身体能力も人を超越したものとなるし、言霊で人を操ることも目で暗示をかけることもできる。傷の治りも早いし、銃で撃たれた程度では死ぬこともなく、老いていくスピードも人と同じになる。血を得ることで、「給血鬼」と隷属の契約を交わすこともできる。
給血鬼
人の「力を欲する」強い想いに反応して覚醒する。身体の中で常に血が溢れている状態なので、体温がどんどん上昇していく。血を与える存在なので、「求血鬼」に触れてもなんの問題もなく、むしろその方が好い。
血を与えると、体温が一定となり、冷静になれる。他に血を体外に出す(自傷行為など)ことでも同様の効果がある。身体能力・治癒能力共に人を超越したものとなる。また、「求血鬼」と契約すると、求血鬼を主として服従することになる。

既刊タイトル

[編集]
  1. 少年伯爵は月夜に目覚める(2007年8月、ISBN 9784044456115
  2. 少年伯爵は月下に奏でる(2007年12月、ISBN 9784044456122
  3. 少年伯爵は闇夜を駆ける(2008年4月、ISBN 9784044456139
  4. 少年伯爵は月影に慕う(2008年8月、ISBN 9784044456146
  5. 少年伯爵は月花を愛でる(2009年2月、ISBN 9784044456153
  6. 少年伯爵は月光を纏う(2009年8月、ISBN 9784044456160