コアニチドリ
コアニチドリ | |||||||||||||||||||||
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福島県尾瀬ヶ原 2017年7月
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分類(APG III) | |||||||||||||||||||||
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学名 | |||||||||||||||||||||
Amitostigma kinoshitae (Makino) Schltr.[1] | |||||||||||||||||||||
和名 | |||||||||||||||||||||
コアニチドリ(小阿仁千鳥) |
コアニチドリ(小阿仁千鳥、学名:Amitostigma kinoshitae )は、ラン科ヒナラン属の多年草[2][3][4]。
特徴
[編集]根は、狭長楕円形に肥厚した大小2個のものと、綿毛状のひげ根2-3本がある。茎は肥厚した根から出て、細く、高さは10-20cmになる。葉は、茎の半ばよりやや下側に1-2個つき、形は広線形で長さ4-8cm、幅4-8mmになり、先端はとがり、基部は茎を抱く[2][3][4]。
花期は6-8月。茎先に白色または淡紅色の花を2-5個つける。苞は長さ3-8mmの広披針形になる。背萼片は長さ3.5-4.5mmで楕円形、側萼片は同長で斜卵形。側花弁は背萼片よりやや短く、広卵形。唇弁は長さ7-8mmになり、表面の基部には紅紫色の2列になる斑紋が並び、3裂した中裂片の先端は少しへこむ。短い距があり、長さ1-1.5mmになる。蕊柱は短く、葯は淡紅紫色になる。花後、花序の先にむかごができる[2][3][4]。
分布と生育環境
[編集]日本では、北海道、本州の東北地方・北関東地方・北陸地方に分布し、多雪地、亜高山の湿原に地生するか、湿った岩壁に着生する[3]。国外では、南千島に分布する[2]。
和名、学名の由来
[編集]コアニチドリ(小阿仁千鳥)の「小阿仁」は、秋田県上小阿仁村にある小阿仁川に由来する。1902年(明治35年)に木下友三郎によって、同地において最初に採集されたことによる[1][5]。種小名の kinoshitae は、採集者の木下への献名。
園芸的利用
[編集]大輪花、純白花、唇弁に大きな斑紋が1個だけある品種(園芸用語では「紅一点花(こういってんか)」と呼ぶ)、斑入りなど多様な変異個体が発見されており、園芸品種として増殖流通する。ただし比較的暑さを嫌い、関東以南の平低地・市街地での栽培にはあまり適していないため栽培・流通量は多くない。
同属のイワチドリと交配が可能。交雑種の「エノモトチドリ」Amitostigma Enomoto-chidori (愛好家の榎本一郎の栽培棚で虫媒によりできた自然実生が初記録。榎本自身はコイワチドリという名称で公表)は原種より強健で観賞価値も高いため、園芸流通量はコアニチドリ以上に多い。近年はそれぞれの原種の変異個体同士を人工交配することで、エノモトチドリの純白花や紅一点花も作出され流通している。
エノモトチドリは不稔に近いが、イワチドリの花粉を受粉させる「戻し交配」を行うと少数の種子が得られることがある。この交配種「サンラク」Amitostigm Sanraku(初発表品種の「三楽」に由来)も少量ではあるが園芸流通している。さらに戻し交配を進めた後代交配種も作出されているが、世代が進むと外見からは純粋な原種か、交配種か識別困難な個体が出てくるようになるので注意を要する。「オオイワチドリ」という商品名で流通している植物(野生個体が存在しない)も外見的な特徴から「サンラク」か後代交配種だと推測されているが、来歴に関する記録が無く、遺伝子解析なども行われていないため正体は不明である。
保全状況評価
[編集]絶滅危惧II類 (VU)(環境省レッドリスト)
ギャラリー
[編集]脚注
[編集]参考文献
[編集]- 佐竹義輔・大井次三郎・北村四郎他編『日本の野生植物 草本Ⅰ 単子葉類』、1982年、平凡社
- 牧野富太郎原著、大橋広好・邑田仁・岩槻邦男編『新牧野日本植物圖鑑』、2008年、北隆館
- 門田裕一監修、永田芳男写真、畔上能力編『山溪ハンディ図鑑2 山に咲く花(増補改訂新版)』、2013年、山と溪谷社
- 米倉浩司・梶田忠 (2003-)「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)
- コアニチドリ -秋田県上小阿仁村
- Amitostigma kinoshitae -eMonocot