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エントロピー最大化モデル

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

エントロピー最大化モデル(エントロピーさいだいかモデル、英語: Entropy Maximising Models)は、アラン・G・ウィルソン英語版により導出された空間的相互作用モデルである[1]。このモデルではエントロピーの概念が使用されており、モデル式は統計力学的な方法で、パーソントリップを分子運動のように捉えて導かれた[1]。また、このモデルが重力モデルの理論的な根拠を説明したことで、重力モデルの問題点の一部が解消された[2]

モデル式

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発生―吸収制約モデル発生制約モデル吸収制約モデルの場合について、モデル式は以下のように表される[3]

発生―吸収制約モデルの場合
(1)

ただし

発生制約モデルの場合
(2)

ただし

吸収制約モデルの場合
(3)

ただし

導出

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発生―吸収制約モデルの場合の導出を以下に示す。

発地を個、着地を個、流動数の総和を[注釈 1]、地域から地域への流動をとする[1]。このときの流動パターンを考え、流動量が最多となる場合の発着地の組合せを把握したい[4]。このときの制約条件は以下の通りである(ただしは総移動費用)[5]

(4)
(5)
(6)

ここではに分配する、場合の数の最大値の決定を行えばよい[5]。このとき、

(7)

が成立する[6][7]。ここで、最大値の導出のために、式(7)の両辺を自然対数変換すると以下の式が得られる[8]

(8)

ここで、スターリング近似により、が十分に大きいときが成り立つため

(9)

が導かれる[8]。よって、の最大化を目標としていく[6]。その際、ラグランジュの未定乗数法を用いる[5]は式(4)、は式(5)、は式(6)のラグランジュ乗数とするとき、ラグランジュ関数

(10)

となる[5]。ここで、の最大値を与えるは、偏微分方程式を解くことで求められる[9]。よって、以下の式が成り立つ[10]

(11)

式変形すると、以下の式が得られる[10]

(12)

さらに式変形すると、以下の式が得られる[注釈 2]

(13)

が得られる[10]。このとき、

(14)
(15)

とおくと、式(13)は

(16)

と表示でき、発生―吸収制約モデルのときのエントロピー最大化空間的相互作用モデルが導かれた[11]

この他、発生制約モデルの場合は式(4)・式(6)を、吸収制約モデルの場合は式(5)・式(6)を、無制約モデルの場合は式(6)を制約条件として使用することで導出できる[12]

脚注

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注釈

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  1. ^ は、発着地の組合せ種類の流動数の総和であり[1]
    が成立する[4]
  2. ^ 式(12)を、式(4)・式(5)に代入して得られる以下の2式
    を、さらに式(12)に代入すればよい[6]

出典

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  1. ^ a b c d 村山 2013, p. 167.
  2. ^ 杉浦 1986, p. 171.
  3. ^ 村山 2013, p. 169.
  4. ^ a b 高阪 1979, p. 6.
  5. ^ a b c d 村山 2013, p. 168.
  6. ^ a b c 高阪 1979, p. 7.
  7. ^ 張 2011, p. 3.
  8. ^ a b 杉浦 1986, p. 165.
  9. ^ 杉浦 1986, p. 168.
  10. ^ a b c 杉浦 1986, p. 169.
  11. ^ 杉浦 1986, p. 170.
  12. ^ 村山 2013, pp. 168–169.

参考文献

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  • 石川義孝『空間的相互作用モデル―その系譜と体系―』地人書房、1988年。ISBN 4-88501-061-6 
  • 高阪宏行「空間的相互作用モデルとその展開」『人文地理学研究』第3巻、1979年、1-11頁。 
  • 杉浦芳夫 著「空間的相互作用モデルの近年の展開」、野上道男、杉浦芳夫 編『パソコンによる数理地理学演習』古今書院、1986年、138-185頁。ISBN 4-7722-1366-X 
  • 張長平空間的相互作用による地域間の人口移動分析―在日中国人を事例として―」『国際地域学研究』第14巻、2011年、1-13頁。 
  • 村山祐司 著「地域間の流動をみいだす」、村山祐司・駒木伸比古 編『新版 地域分析』古今書院、2013年、159-170頁。ISBN 978-4-7722-5272-0