アンフィコティルス
アンフィコティルス | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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アンフィコティルス・マイルシ(群馬県立自然史博物館所蔵)
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地質時代 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
後期ジュラ紀キンメリッジアン | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
分類 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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学名 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
Amphicotylus Cope, 1878 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
種[2] | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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アンフィコティルス(学名:Amphicotylus)は、後期ジュラ紀のアメリカ合衆国に生息していたゴニオフォリス科に属するワニ形上目の属。舌基弁の動作に寄与する舌骨の形態や内鼻孔の位置が現生のワニに類似しており、既に水中での呼吸能力を獲得していたと推測されている[3][4][5][6]。主に沼沢に生息して魚類を獲物にしていたと見られるが、生態系を共有していた恐竜の死骸を摂食した可能性もある[7]。
発見と命名
[編集]アンフィコティルスは1878年に胴椎・腰椎・肋骨・皮骨板に基づいてエドワード・ドリンカー・コープにより記載された。カマラサウルスと同一の産地から発見されたこれらの化石に基づき、コープはこの動物が現生のアメリカアリゲーターよりも小型であったと考え、第一発見者であった管理者ルーカスにちなんで本種を Amphicotylus lucasii と命名した[8]。コープは同一の産地および層準から頭骨要素も収集していたが、彼はこれをアンフィコティルス属に割り当てなかった。頭骨要素は1942年にチャールズ・C・ムックにより調査され、産地の同一性だけでなく、大きさ、一般的な形態の特徴、その時代の他のワニ類の化石記録の欠如に基づき、標本をタイプ種として同定した[9]。またこの時、ムックは頭骨標本を暫定的なネオタイプに指定した[9]。
1930年代にWorks Progress AdministrationはJ・W・ストヴァルが最初の調査を行ったオクラホマ州でさらなる標本を発見し、Amphicotylus gilmorei との類似性を指摘した。この標本はムックにより1964年にゴニオフォリスの種 Goniopholis stovalli として正式に記載された。2012年にエリック・ランドール・アレンはモリソン層で発見されたゴニオフォリス科爬虫類の口蓋骨に見られる解剖学的特徴がヨーロッパのグループと大きく異なること、具体的にはイギリスおよびヨーロッパ本土の分類群と異なり後鼻孔により口蓋骨が完全に分かれていることを主張した。後にアレンは、"G. felix" といったこれまでゴニオフォリス属に分類されていたモリソン層のゴニオフォリス科爬虫類に対してアンフィコティルス属が一貫性のある分類群であり、またゴニオフォリス属がヨーロッパの種を包括する分類群である理由を主張した。さらに、唯一知られている A. gilmorei の標本と A. lucasii の標本に重大な差異がないこと、唯一の特筆すべき形態学的特徴が破損に起因するものであることが指摘され、A. gilmorei は A. lucasii のジュニアシノニムとなった[10]。
1933年にワイオミング州でクリフォード・マイルスらが行った発掘遠征では、2021年時点で最大かつ最も完全なゴニオフォリス科の骨格がモリソン層で発見された。当該の骨格はカマラサウルスなど他の脊椎動物の化石と共に発見され、日本の群馬県立自然史博物館も発掘を行い、マイルスの協力で同館での収蔵・展示が可能となった[1][6]。1996年に所蔵された後、2017年から学術研究が開始され[11]、マイルスにちなんで2021年に Amphicotylus milesi と命名された[1][6]。
記載
[編集]アンフィコティルスは概ね三角形で吻部が板状の頭骨を有しており、これは現在のワニの頭骨形状と類似する。ヨーロッパに生息した他のゴニオフォリス科との相違点で特筆すべき点は口蓋骨の形状である。アンフィコティルス属の口蓋骨は後鼻孔により完全に互いに隔てられている一方、ゴニオフォリスの口蓋骨は後鼻孔の前方で広く接触している。この特徴はエウトレタウラノスクスと共通する[10]。
Amphicotylus milesi は最大の種であり、頭骨長は43センチメートルに達する[1]。全長は約3メートルと推定される[4]。発見された標本は右の脛骨と腓骨が折れており、骨性の腫瘍を患っていた、すなわち病変の証拠が見られている[7]。
系統
[編集]複数の系統解析により、アンフィコティルスはゴニオフォリス科に位置付けられること、そして典型的には大半のヨーロッパの属種を含む系統群から外れた位置にあることが判明している[1][12][13]。ゴニオフォリス科の後期白亜紀の属である Denazinosaurus は2015年にはアンフィコティルス属の姉妹群とされていたが[13]、2021年にはヨーロッパの系統群の一部とされた[1]。また、2021年には Sunosuchus thailandicusがスノスクスとして解析に含められている[1]。これは S. thailandicus をチャラワン属へ再分類したMartin et al. 2013に従わないものである[14]。
以下の系統樹は Yoshida et al. (2021) に基づく。
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出典
[編集]- ^ a b c d e f g Yoshida, J.; Hori, A.; Kobayashi, Y.; Ryan, M.J.; Takakuwa, Y.; Hasegawa, Y. (8 December 2021). “A new goniopholidid from the Upper Jurassic Morrison Formation, USA: novel insight into aquatic adaptation toward modern crocodylians”. The Royal Society 8 (12). doi:10.1098/rsos.210320.
- ^ Pritchard, A. C.; Turner, A. H.; Allen, E. R. & Norell, M. A. (2013). “Osteology of a North American Goniopholidid (Eutretauranosuchus delfsi) and Palate Evolution in Neosuchia”. American Museum Novitates (3783): 1–56. doi:10.1206/3783.2. hdl:2246/6449 .
- ^ 「ワニ祖先の新種と判明 水中適応、解明に期待―福島県立博物館など」『時事ドットコムニュース』2021年12月8日。オリジナルの2021年12月8日時点におけるアーカイブ。2021年12月8日閲覧。
- ^ a b 三浦研吾「「おまけ」の化石、新種ワニだった 展示から四半世紀たって発見 群馬」『毎日新聞』2021年12月8日。オリジナルの2021年12月8日時点におけるアーカイブ。2021年12月8日閲覧。
- ^ “ワニ祖先に近い化石から新種発見 水中活動できる仕組み持つ”. NHK NEWS WEB. NHK (2021年12月8日). 2021年12月8日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年12月8日閲覧。
- ^ a b c 『恐竜時代の地層からみつかったワニの祖先型化石を新種「アンフィコティルス・マイルシ」と命名~ワニ類における水生適応への進化のはじまりを解明~』(プレスリリース)福島県立博物館、北海道大学、カールトン大学、群馬県立自然史博物館、2021年12月8日 。2021年12月8日閲覧。
- ^ a b 『世界の巨大恐竜博2006 生命と環境─進化のふしぎ』日本経済新聞社、NHK、NHKプロモーション、日経ナショナルジオグラフィック社、2006年、65頁。
- ^ E. D. Cope. 1878. Descriptions of new extinct Vertebrata from the Upper Tertiary and Dakota Formations. 'Bulletin of the United States Geological and Geographical Survey of the Territories, 4(2):379-396
- ^ a b Mook, C.C. (2 April 1942). “Skull Characters of Amphicotylus lucasii Cope”. American Museum Novitates (1165).
- ^ a b Allen, E.R. (2012). “Analysis of North American goniopholidid crocodyliforms in a phylogenetic context”. M.C. thesis, University of Iowa.
- ^ 「水中適応では最古...ワニ祖先の新種 福島県立博物館のグループ」『福島民友新聞』2021年12月9日。2021年12月9日閲覧。
- ^ Marco Brandalise de Andrade; Richard Edmonds; Michael J. Benton & Remmert Schouten (2011). “A new Berriasian species of Goniopholis (Mesoeucrocodylia, Neosuchia) from England, and a review of the genus”. Zoological Journal of the Linnean Society 163 (s1): S66–S108. doi:10.1111/j.1096-3642.2011.00709.x.
- ^ a b Puértolas-Pascual, E.; Canudo, J.I. & Sender, L.M. (2015). “New material from a huge specimen of Anteophthalmosuchus cf. escuchae (Goniopholididae) from the Albian of Andorra (Teruel, Spain): Phylogenetic implications”. Journal of Iberian Geology 41 (1): 41–56. doi:10.5209/rev_JIGE.2015.v41.n1.48654.
- ^ Martin, J. E.; Lauprasert, K.; Buffetaut, E.; Liard, R.; Suteethorn, V. (2013). "A large pholidosaurid in the Phu Kradung Formation of north-eastern Thailand". In Angielczyk, Kenneth. Palaeontology: n/a. doi:10.1111/pala.12086. edit