コンテンツにスキップ

日本シティメディア

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
Qメールから転送)

日本シティメディア株式会社(にほんシティメディア)は、かつて存在した日本の電気通信事業者

概要

[編集]

東京都区部を中心に国道16号の内側をサービスエリアとし、テレターミナル無線呼び出しサービスの一種)事業を展開していた。

1987年7月13日日本電気パイオニア東京電力らの出資を受け設立。1989年12月20日にサービスを開始した[1]。当初は9600bpsの通信速度でデータ通信が可能な端末を利用したサービスを行っていた。このテレターミナルに対応したパソコン通信草の根BBSとしてMIYA-NETも存在した。

1996年12月には、モトローラが開発した新方式「データTAC英語版」により通信速度を19200bpsにアップさせたほか、テレターミナル端末同士での双方向通信も可能な新サービス「Qメール」をスタート。当時流行していたポケットベルに対抗して「Pの次にはQが来る」のキャッチフレーズを用い、イメージキャラクターにシャ乱Qを起用して拡販を目指したが、携帯電話の急速な普及・サービスエリアが狭いなどの影響で、同サービスは全く普及しなかった。

この結果同社の経営は急速に行き詰まったが、当時加入者の急増による電波帯域不足に悩まされていたNTT移動通信網(現 NTTドコモ)が、テレターミナル用として800MHz帯に割り当てられていた5MHzの帯域(下り838-843MHz、上り893-898MHz)に目をつけ、1998年7月1日にテレターミナル事業をNTT移動通信網に譲渡。その後もテレターミナルのサービスは続けられていたが、利用者減少により2007年7月にサービスを終了した[2]

事業譲渡後、割り当てられていた5MHzのうち2MHzは、目論見通りに、関東圏にかぎりmovaに帯域転換した。


沿革

[編集]
  • 1985年
    • 3月 郵政省から「テレターミナルシステム構想」の打ち出し[3]
    • 8月29日 郵政省のテレターミナル研究会(安田靖彦座長)から報告書[4]
    • 12月17日 「テレターミナルシステム実用化促進協議会」(仮称)の発起人会を開催、於 ホテルオークラ、参加 セコム・日興証券・松下通信工業・東芝・三菱電機・日本電気・東京海上火災保険・明治生命・トヨタ自動車・東京電力・第一勧銀・富士通・東京ガス・財団法人移動無線センター[5]
  • 1986年1月 「テレターミナルシステム実用化促進協議会」設立[3]
  • 1987年
    • 5月 調査企画会社の設立準備室が発足(協議会の臨時総会で承認)[3]
    • 7月 基本システム完成(財団法人電波システム開発センターが受託開発)[6]
    • 7月13日 調査企画会社として日本シティメディア株式会社を設立[6]
    • 9月 東京都内で実験開始、赤坂(財団法人移動無線センター)・西新宿(東京ガス)・芝浦(沖電気工業)の3サイト[6]
  • 1988年
    • 10月 事業会社に移行[3]
    • 12月21日 郵政省が陸上移動無線データ通信を制度化(無線局免許手続規則・無線設備規則・特定無線設備の技術基準適合証明に関する規則を改正)[7]
  • 1989年12月20日 開局式・運用開始[8]
  • 1996年12月 通信速度を19200bpsに向上、「Qメール」を開始
  • 1998年
    • 7月1日 テレターミナル事業をNTT移動通信網に譲渡
    • 7月31日 解散[9]
  • 2007年7月 サービスを終了

資本金および出資者

[編集]

資本金

[編集]

4億円(当初)[6]

出資者

[編集]

下表のとおり(出資比率順、当初)。

出資者(当初)[6]
出資比率 出資者
10% 財団法人移動無線センター
8% 東京電力
8% 東京海上火災保険
8%  日本電気
3% トヨタ自動車
3% セコム
3% 東京ガス
3% 日興証券
3% 第一勧業銀行
3% 新日本製鉄
など

利用料金

[編集]

下表のとおり(開業時)。

料金表(開業時)[8]
契約時の費用 申込手数料・工事費 1,800円
陸上移動局としての無線局免許取扱手数料(電波法に定められた手数料相当額) 6,000円
接続費用:他の第一種電気通信事業者との接続(ユーザーセンターが対象) 当該事業者の定める料金・費用
毎月の費用・利用料金 基本料:定額(端末1台またはユーザーセンター接続(1か所ごと))
通信料:利用パケット当たり0.5~6.0円 
2,400円
標準通信 1.2円
同報通信
 1ゾーン0.5円
 全ゾーン6.0円
他の第一種電気通信事業者の回線利用料(ユーザーセンターが対象) 当該事業者の定める料金
臨時費用 無線局再免訂取扱手数料→陸上移動
5年に1回
(電波法に定められた手数料相当額)
3,000円
定期検査:認定点検手数料→陸上移動局
(認定点検に必要な手数料)
6,700円
工事費:利用の一時中断・利用休止・再開の工事費(一つの工事ごとに) 1,000円
その他の費用:他の第一種電気通信事業者との接続変更等の費用(ユーザーセンターが対象) 当該事業者の定める料金・費用


関連項目

[編集]
  • 関西シティメディア - 1997年2月から1999年まで、大阪府内でテレターミナルサービスを展開していた電気通信事業者。1998年7月31日解散[10]
  • RC-9801 - 携帯型無線パソコン、日本電気製。型名:RC-9801

脚注

[編集]
  1. ^ 「1 電気通信 1-1 電気通信事業等 (1) 第一種電気通信事業 資料1-1 第一種電気通信事業者の概要」『平成9年版 通信白書(資料編)』 郵政省
  2. ^ 『通信ネットワーク用語事典 改訂第5版』 秀和システム、2007年、783ページ
  3. ^ a b c d 「テレターミナルシステム 来年末にもサービス開始 日本シティメディア(株)が事業会社に移行」、Wave 21 1988年11月号、(財)移動無線センター、16ページ
  4. ^ 「テレターミナル・システムまず都内4区で実現へ」.日刊工業新聞1985年8月30日2面
  5. ^ 「テレターミナル促進協 設立発起人会開く」.日刊工業新聞1985年12月18日15面
  6. ^ a b c d e 「テレターミナル・システム,今秋より東京で実験稼働」,日経コミュニケーション1987年8月31日号46~49ページ
  7. ^ 昭和63年12月21日郵政省令第75~76号、第78号
  8. ^ a b 「テレターミナル通信サービスが運用開始 無線系のデータ通信ネットワークが完成」、Wave 21 1990年1月号、(財)移動無線センター、26~27ページ
  9. ^ 解散公告、官報 平成10年(1998年)8月3日本紙23ページ(第一回)、同月5日同26ページ(第二回)および同月7日同26ページ(第三回)
  10. ^ 解散公告、官報 平成10年(1998年)8月3日本紙24ページ(第一回)、同月5日同27ページ(第二回)および同月7日同24ページ(第三回)