サラセミア
サラセミア(thalassemia)は、ヘモグロビンを構成するグロビン遺伝子の異常による貧血である。(溶血性貧血をきたす遺伝性疾患である)地中海沿岸に多いので地中海貧血、地中海性貧血とも言う。
病態
グロビン蛋白の異常によって正常な赤血球が作られず貧血になる。異常なヘモグロビンを持つ赤血球は脾臓で次々と破壊される。赤血球が脾臓で破壊されることを血管外溶血と言う。標的赤血球と呼ばれる特徴的な赤血球が見られる。
分類
ヘモグロビンは、ポリペプチド鎖であるα鎖グロビン2分子とβ鎖グロビン2分子が結合した四量体(tetramer)にヘム(鉄錯体)が加わったものである。サラセミアは、αグロビン/βグロビンのいずれの鎖が生成できないかで分類される。
- αサラセミア : α鎖が正常に生成できない場合。16番遺伝子の2箇所が原因となる。アフリカ出身者に多く見られる。
- βサラセミア : β鎖が正常に生成できない場合。11番遺伝子の1箇所が原因となる。地中海東部の国と東南アジアに多く見られる。ギリシャのサラセミア・キャリアは全人口の7.5%に及ぶといわれる。
原因
ヘモグロビン蛋白を構成しているα鎖あるいはβ鎖をコードする遺伝子の異常により、蛋白がうまく生成できない疾患。
統計
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症状
異常ヘモグロビンにより貧血を来たす。血管外溶血により黄疸や脾腫を呈する。
合併症
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検査
- 血液検査
- 血清生化学検査
- 血清鉄とフェリチンの増加。
- ヘモグロビンA2増加
- 末梢血塗沫染色標本検査
- 小球性低色素性貧血が認められる。赤血球の真ん中の窪みに膨らみが出来て、濃淡濃の縞模様が見られる。この同心円状の縞模様が標的に見える事から標的赤血球(target cell)と言う。
- 血清生化学検査
- thalassemia index
- MCV / RBC x 106 ≦13 であればサラセミアが強く疑われる。[1]
治療
対症療法として輸血を行い、鉄の臓器過剰沈着に対し鉄キレート剤を投与する。重症例には骨髄移植を行う場合がある。
予後
重症型は予後不良で30歳までに心不全などにより死亡する。
診療科
歴史
1925年、クーリー(Cooley)とリー(Lee)によって病態の診断が確定される。当初はクーリー貧血と呼ばれたが、地中海沿岸地域に多発しているため、ギリシア語の海を表すΘαλασσα(Thalassa)から、サラセミア(Thalassemia)と名づけられた。ただし、地中海特有というわけではなく、世界中、特にマラリア多発地域において散見される。
各国において
地中海沿岸
発症頻度が高い。遺伝子異常の種類によって軽症から重症まで様々あり、地域性も異なる。
日本
スクリーニングを含めた研究プロジェクトで、サラセミアは日本人にも決して少なくないことが明らかとなった。日本人のβサラセミア(日本人の700~1000人に1人の頻度)の8割は8種類の変異のどれかであり、しかも変異によってかなり地域的に偏ることがわかった。[要出典] [2]
脚注
- ^ DeLoughery TG. Microcytic Anemia. N Engl J Med 2014; 371:1324-1331. DOI: 10.1056/NEJMra1215361
- ^ 服部幸夫 「日本人におけるサラセミアの遺伝子異常(総説)」『山口医学』第50巻, 第3号, 2001年、637-644頁。
関連項目
- 突然変異
- 鎌状赤血球症 - 同じく異常ヘモグロビンによる遺伝性の貧血症
- グルコース6リン酸脱水素酵素欠損症 - 同じくマラリアに抵抗性をもつ疾患