ポール・アルテ
ポール・アルテ(Paul Halter、1956年6月19日 - )は、フランスの推理作家。
経歴
[編集]1956年6月19日、フランスのバ=ラン県アグノー郡に生まれる。幼少のころから推理小説を好み、最初のお気に入り作家はアガサ・クリスティだった。その後ジョン・ディクスン・カーの著書と出会い、ファンとなる。カーのシリーズ探偵であるギデオン・フェル博士やヘンリー・メリヴェール卿の活動を続けさせたいという思いから創作活動を始める。1986年に私家版で『赤髭王の呪い』を発表するが、主人公はフェル博士の予定だった。しかし許可が得られず、やむなく独自の探偵を創出することになる。これが現在もシリーズ探偵として活躍するツイスト博士である。
1987年、『第四の扉』を発表し、作家デビュー。同年同作品でコニャック・ミステリ大賞を受賞する。
1988年、『赤い霧』を発表し、フランス犯罪小説大賞を受賞する。
日本では2002年、早川書房から『第四の扉』の訳書が出版され、原書房の2003年版『本格ミステリ・ベスト10』で1位を獲得する。以降同ランキングで3年連続1位を獲得、他のランキングでも高順位を占め、日本のミステリファンに認知される。
作風
[編集]カーに憧れて創作活動を始めたというだけあり、密室殺人や怪奇趣味、不可能犯罪をテーマとした本格ミステリを書き続けている。本格推理小説の黄金時代への敬意からか、当時の有名な作品の名前が時にはそのまま、時には暗に登場する。シャーロック・ホームズやワトソン博士と思われる人物が登場したこともある。
シリーズ探偵は犯罪学者のアラン・ツイスト博士やオーウェン・バーンズ。年齢は60歳前後で長身痩躯、口髭を生やし、鼻眼鏡をかけている。かなりの大食漢。大声を上げたり格闘するなどの荒事は行わず、純粋に与えられた情報でもって犯罪を解決に導く。
主な作品
[編集]ツイスト博士シリーズ(長編)
[編集]- La Quatrième porte(1987年)
- 第四の扉(平岡敦訳、早川書房 ハヤカワ・ポケット・ミステリ、2002年5月 / 早川書房 ハヤカワ・ミステリ文庫、2018年8月)
- La Mort vous invite(1988年)
- 死が招く(平岡敦訳、早川書房 ハヤカワ・ポケット・ミステリ、2003年6月 / 早川書房 ハヤカワ・ミステリ文庫、2022年7月)
- La Mort derrière les rideaux(1989年)
- カーテンの陰の死(平岡敦訳、早川書房 ハヤカワ・ポケット・ミステリ、2005年7月)
- La Chambre du fou(1990年)
- 狂人の部屋(平岡敦訳、早川書房 ハヤカワ・ミステリ1801、2007年6月)
- La Tête du tigre(1991年)
- 虎の首(平岡敦訳、早川書房 ハヤカワ・ポケット・ミステリ、2009年1月)
- La Septième hypothèse(1991年)
- 七番目の仮説(平岡敦訳、早川書房 ハヤカワ・ポケット・ミステリ、2008年8月)
- Le Diable de Dartmoor(1993年)
- À 139 pas de la mort(1994年)
- 死まで139歩(平岡敦訳、早川書房 ハヤカワ・ポケット・ミステリ、2021年12月)
- L'image trouble(1995年)
- La Malédiction de Barberousse(1995年[注釈 1])
- 赤髯王の呪い(平岡敦訳、早川書房 ハヤカワ・ポケット・ミステリ、2006年8月)
- L'Arbre aux doigts tordus(1996年)
- Le Cri de la sirène(1998年)
- Meurtre dans un manoir anglais(1998年)
- L'Homme qui aimait les nuages(1999年)
- L’Allumette sanglante(2001年)
- La Toile de Pénélope(2001年)
- Les Larmes de Sibyl(2005年)
- Les Meurtres de la salamandre(2009年)
- La Corde d'argent(2010年)
- Le Voyageur du passé(2012年)
- La Tombe indienne(2013年)
ツイスト博士シリーズ(短編)
[編集]- Les Morts Dansent la Nuit(1988年)
- 死体は夜中に踊る(平岡敦訳、ハヤカワ・ポケット・ミステリ『赤髯王の呪い』に併録)
- Meurtre à Cognac(1999年)
- コニャック殺人事件(平岡敦訳、ハヤカワ・ポケット・ミステリ『赤髯王の呪い』に併録)
- L'Appel de la Lorelei(2000年)
- ローレライの呼び声 (平岡敦訳、ハヤカワ・ポケット・ミステリ『赤髯王の呪い』に併録)
- La Tombe de David Jones(2002年)
- La balle de Nausicaa(2008年)
- Le mystère du gong indien(2010年)
- L’échelle de Jacob(2014年)
- La vengeance de l’épouvantail(2016年)
- Le Livre jaune(2017年)
- Les feux de l'enfer(2018年)
オーウェン・バーンズシリーズ(長編)
[編集]- Le Roi du désordre 1994年
- 混沌の王(平岡敦訳、行舟文化、2021年9月)
- Les Sept Merveilles du crime(1997年)
- 殺人七不思議(平岡敦訳、行舟文化、2020年9月)
- Les Douze Crimes d'Hercule(2001年)
- La Ruelle fantôme(2005年)
- あやかしの裏通り(平岡敦訳、行舟文化、2018年7月)
- La Chambre d’Horus(2007年)
- Le Masque du vampire(2014年)
- 吸血鬼の仮面(平岡敦訳、行舟文化、2023年6月)
- La Montre en or(2019年)
- 金時計(平岡敦訳、行舟文化、2019年5月)
- Le Mystère de la Dame Blanche(2020年)
オーウェン・バーンズシリーズ(短編)
[編集]- La marchande de fleurs(1998年)
- 花売りの少女(平岡敦訳、行舟文化、2019年5月[注釈 2])
- La Hache(2000年)
- 斧(平岡敦訳、行舟文化、2018年7月[注釈 3])
- L'Homme au visage d'argile(2012年)
- 粘土の顔の男(平岡敦訳、行舟文化、2020年9月[注釈 4])
- Le Loup de Fenrir(2015年)
- 怪狼フェンリル(平岡敦訳、行舟文化、2021年9月[注釈 5])
- Le Casque d'Hadès(2019年)
- Le Voleur d'étoiles(2021年)
- 星を盗む者(平岡敦訳、行舟文化、2023年6月[注釈 6])
その他
[編集]- Le Brouillard rouge(1988年)
- 赤い霧(平岡敦訳、早川書房 ハヤカワ・ポケット・ミステリ、2004年10月)
- La Lettre qui tue(1992年)
- 殺す手紙(平岡敦訳、早川書房 ハヤカワ・ポケット・ミステリ、2010年10月)
- Le Cercle Invisible(1996年)
- Le Crime de Dédale(1997年)
- Le Géant de pierre (1998年)
- Le Mystère de l'Allée aux Anges(1999年)
- Le Chemin de la lumière(2000年)
- La Nuit du loup(2000年)
- Les Fleurs de Satan(2002年)
- Le Tigre borgne(2004年)
- Lunes assassines(2006年)
- La Nuit du Minotaure(2008年)
- Le Testament de Silas Lydecker(2009年)
- La Balle de Nausicaa(2011年)
- Spiral(2012年)
単行本未収録
[編集]- 殺人エスカレーター(平岡敦訳、早川書房 『ミステリマガジン』 2009年9月号) - 短編
- 狼の夜(平岡敦訳、早川書房 『ミステリマガジン』 2014年9月号) - 短編
- つずみ綾「ポール・アルテとのメイル交換」(南雲堂『本格ミステリー・ワールド』) - 年1回刊行のムックに2009年版から掲載
脚注
[編集]注釈
[編集]出典
[編集]外部リンク
[編集]- http://www.paulhalter.net/ - 公式サイト