転置法
表示
転置法(てんちほう、Hyperbaton)とは、強調もしくは効果のため、自然にグループを成していた言葉をおのおの切り離す修辞技法のこと。こうした人為的または修辞学的な分離は、文意が語順(統語論)に密接に依存しない、高度な屈折言語の中でなら、より大きな程度で可能である。ラテン語や古代ギリシア語においては、転置法の効果は一般に最初にくる言葉の強調である。
語源
[編集]「Hyperbaton」という語はギリシャ語のhyper(〜を超えて)+bainein(歩を進めること)に、動詞的形容詞接尾辞の-tosから由派生した ὑπέρβατον, hyperbaton(置き換え)の借用である。
転置法の種類
[編集]転置法という語は一般に(標準的な語順から意図的かつ劇的に逸脱した)無秩序な技法を指すこともある。アエリウス・ドナトゥス(Aelius Donatus)はその著書『転義法(比喩)について』の中で、転置法を次の5つの種類に分類した。
- 倒逆法(Hysterologia)
- 倒置法(Anastrophe) - この語は時として漠然と転置法の類義語としても使われる。
- 挿入語句(Parenthesis)
- 分語法(Tmesis)
- Synchysis
さらに同格法も加えられることもある。
例
[編集]- Cheese, I love it!(チーズが大好き!) - 語順が逆さまになっている。
- Bloody thou art; bloody will be thy end. - (汝は血塗られている。汝の最期も血塗られたものになるだろう)ウィリアム・シェイクスピア『リチャード三世』第4幕第4場198
- Object there was none. Passion there was none. - (対象はなかった。情熱もなかった。)エドガー・アラン・ポー『告げ口心臓』
- This is the sort of English up with which I will not put. -(こういう英語だ、私が我慢できないのは。) 前置詞で文を終えないという規範文法のルールをあげつらっている。ウィンストン・チャーチルの言葉とされる[1]。
脚注
[編集]- ^ Ernest Gowers, Plain Words, 1948
関連項目
[編集]- 倒置
- 同格法
- 修辞技法
- 挿入語句
- 分離不定詞(Split infinitive)
参考文献
[編集]- Smyth, Herbert Weir (1920). Greek Grammar. Cambridge MA: Harvard University Press, p. 679. ISBN 0-674-36250-0.