7.62x39mm弾

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7.62×39mm
スチール製の薬莢の7.62×39mm FMJ実包
種類 ライフル用
原開発国 ソビエト連邦の旗 ソビエト連邦
使用史
使用期間 1944年–現在
使用者・地域 ソビエト連邦, ワルシャワ条約機構, 中華人民共和国, カンボジア, 北朝鮮, ベトナム, フィンランド, ベネズエラ, その他多数
製造の歴史
設計時期 1943年
生産期間 1943年–現在
特徴
薬莢形状 リムレス, ボトルネック
弾丸 7.92 mm (0.312 in)
首径 8.60 mm (0.339 in)
肩径 10.07 mm (0.396 in)
底面径 11.35 mm (0.447 in)
リム径 11.35 mm (0.447 in)
リム厚 1.50 mm (0.059 in)
薬莢長 38.70 mm (1.524 in)
全長 56.00 mm (2.205 in)
薬莢容量 2.31 cm3 (35.6 gr H2O)
ライフリング 240 mm (1 in 9.45 in)
雷管のタイプ ボクサー・ラージ・ライフル
最大圧 355.00 MPa (51,488 psi)
火薬 SSNF 50 火薬
火薬重量 18.21 gr
弾丸性能
弾頭重量/種類 初速 エネルギー
123 gr (8 g) フルメタルジャケット 720 m/s (2,400 ft/s) 2,073.6 J (1,529.4 ft⋅lbf)
154 gr (10 g) Spitzer SP 641.3 m/s (2,104 ft/s) 2,056.3 J (1,516.6 ft⋅lbf)
123.5 gr (8 g) フルメタルジャケット 804 m/s (2,640 ft/s) 2,460 J (1,810 ft⋅lbf)
出典: Chuck Hawks[1] Wolf Ammo[2] Omar [3]

7.62x39mm弾は、第二次世界大戦中のソビエト連邦で開発された小銃弾であり、中間弾薬としての性格が強い短小弾である。ソ連軍での制式名称は1943年式7.62mm弾7,62-мм патрон обр .1943 года[4]

概要[編集]

世界で最も有名なライフルと言われているAK-47はこの弾を使用する銃器として戦後すぐに開発された。1970年代までソビエトでは最もスタンダードな銃弾であり、現在においても世界中で軍用から猟用にいたるまで幅広く使用されている。

ミリメートルでの呼称は7.62でいわゆる30口径であるが.308winや30-06等の西側諸国の30口径の弾頭径が0.308インチであるのに対し、0.312インチという若干大きい弾頭径を持つ。
弾頭は舟形(boat-tail)をしており、弾芯は鉄製でその周りに鉛がかぶせられ、さらに銅ジャケットで覆われている。鉄製弾芯であることから徹甲弾と誤解されることがあるが、鉄より高価な鉛の使用量を減らすことが目的である。とはいえ実際の性能面でも、7.62x39mm弾はカービン弾ながらフルサイズ小銃弾である7.62x51mm NATO弾(鉛弾芯銅コート)に匹敵するほどの貫通力を有しており、ボディーアーマーで身を固めた相手にも有効性が高い。プライマーは共産圏でよく使用されるベルダンプライマーで薬莢は鉄製である。

薬莢は円錐形状にテーパーをつけることで、薬室との摩擦を抑え装填・抽筒を容易にしており、AK-47の高信頼性の一助となっている。AK-47の弾倉が“バナナマガジン”と形容されるほど曲がっているのはこの強いテーパーのためである。弾頭の形は改良されたこともあったが、薬莢は開発されてからほとんど手を加えられていない。鉄薬莢は一般的な真鍮製薬莢に比べ廉価だが錆びに弱いため、ラッカー塗料で錆び止めした上、缶詰に密閉して出荷されることが多い。

日本の狩猟では、スターム・ルガーMini30、ヴァルメハンター、モロトハンターなどのライフル銃がこの実包を使用するものとして知られる。

7.62x39mmの後継は5.45x39mm弾であり、物理的な威力は7.62mm弾に劣るが、小口径であるがゆえに銃口初速が速く、より長射程になっている。また弾頭重量が軽いため反動が小さく、フルオートマチックでの射撃もより容易になっている。これは米軍が使用弾薬を7.62x51mm NATO弾から5.56x45mm NATO弾(現在はSS109)に変えたことに呼応したためである。しかし7.62x39mm弾は、7.62mmNATO弾を切り替えさせた最大の要因である、フルオート射撃を困難にするほど反動が過大ではなく、携行弾数にかかる弾薬の重量やサイズも一段小さかったことから、多大な負担をもって主力弾薬の供給体制切替を行うほどの必要性を認めない国が少なくなかった。また、ボディアーマーが犯罪者やテロリスト等にまで普及が進み、小口径高速弾の威力不足が問題になってきたこともあり、NATO弾ほど大規模な更新・普及がなされないまま5.45mm弾と並行して配備が続いている。

歴史[編集]

1942年、ソビエト連邦において、新型自動火器のコンセプトが発表された。この新型火器は小型軽量で、戦場における兵士の積極的な活動を可能とし、短機関銃よりも射程があり、短距離から中距離での戦闘に十分な性能を備えるものとされた。しかし、戦時下において新型弾薬を設計する時間的な余裕はなく、この時点では既存の拳銃弾7.62x25mmトカレフ弾を用いることとされた。その後、同じくトカレフ弾を使う軽機関銃の設計が試みられた。短機関銃は射撃距離が200mを超えると精度が著しく低下するが、比較的重い銃身や二脚などを備える軽機関銃であれば、同じ弾薬でも長射程が期待できるのである。そのため、この新たな軽機関銃は短機関銃と従来型軽機関銃のギャップを埋める装備と位置づけられた。この種の軽機関銃として最も成功したのは、LAD軽機関銃であった。しかし、既存拳銃弾を用いる軽機関銃の開発は、ドイツ製突撃銃の影響を受けた別プロジェクトの開始もあり、1943年10月に中止された[5]

1942年末、ドイツ製突撃銃MKb.42(H)が鹵獲された。ソ連の銃器設計者らは、突撃銃そのものよりも、銃の特性を実現せしめた7.92x33mm弾に注目した[5]。当局では同等の新型弾(いわゆる中間弾薬)およびこれを用いる一連の火器の設計を急ぐこととなる。1943年8月、砲兵総局は新型弾を用いる汎用火器システム(自動カービン、自動小銃、軽機関銃を兼ねる火器)の設計要件を示した。この時点では使用するべき新型弾薬が未だ存在せず、後に銃と並行して開発されたため、プロジェクトの複雑化を招いた[4]

  • 二脚、銃剣、弾倉、負い紐、その他付属品を取り付けたときの総重量は5kgを超えてはならない。
  • 銃剣を除いた全長は900 - 1,000mm。
  • 着剣時の全長は1200 - 1,300mm
  • 少なくとも30連発の容量を持つ弾倉から給弾を行う。
  • 最大射程は1,000mで、50mごとに切替可能な照準器を備えなければならない。
  • 射程距離内での戦闘における単発射撃の精度は、7.62mm仕様M1891/30小銃の戦闘における精度よりも劣っていてはならない。また、連発射撃の精度は、DP軽機関銃に劣っていてはならない。
  • 射撃速度は600発/分以下でなければならず、バースト射撃(3 - 5発)を行う場合の実際の射撃速度は80発/分以上、単発射撃を行う場合の実際の射撃速度は35発/分でなければならない。
  • 火器の寿命は、少なくとも20,000発の射撃に耐えなければならない。

1943年7月から設計が始まった新型弾薬は、9月に1943年式7.62mm弾7,62-мм патрон обр .1943 года)、すなわちM43弾として採用された。以後はこの弾薬を用いて新型火器の開発が進められていくこととなる[4]

価格[編集]

7.62x39mm弾はセンターファイヤーライフル弾(雷管が薬莢の中心にある弾)としては屈指の安さを長年誇ってきた。ライフル弾の中では最安の部類に入り、2006年初頭に軍用の7.62x39mm弾の値段が跳ね上がり、ロシアからアメリカに輸出される高品質な7.62x39mm弾が一発17セントになるまで長らく1発10セント(約12円)ほどの値段であった。

この安さは驚異的で、拳銃弾や種類によっては22ロングライフル弾といった弾よりも安い場合がある。しかし近年、弾薬のアメリカにおける市場価格は2倍近くに高騰している。これはアフガニスタンイラク軍隊をアメリカが再建支援しているためで、これにより大量の7.62x39mm弾が発注されたことによる(アフガニスタンやイラクの軍、警察では大量のAK-47とその派生型が使用されている)。しかしながら、2007年の時点でアメリカ市場において最も安いライフル弾であることに変わりはない。

形状[編集]

脚注[編集]

  1. ^ The 7.62×39 Russian (Soviet) Model 43”. 2010年8月26日閲覧。
  2. ^ Wolf Rifle Ammo”. 2008年9月5日閲覧。
  3. ^ [1] clear.net.nz, Rifles. Retrieved on March 30, 2011
  4. ^ a b c В самом начале”. Оружейный журнал "Калашников". 2020年12月4日閲覧。
  5. ^ a b В самом начале. История отечественных автоматов”. Оружейный журнал "Калашников". 2020年12月4日閲覧。

外部リンク[編集]