風 (映画)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
The Wind
ポスター(1928)
監督 ヴィクトル・シェストレム
脚本 フランシス・マリオン
原作 ドロシー・スカーボロ
出演者 リリアン・ギッシュ
撮影 ジョン・アーノルド
編集 コンラッド・A・ネルヴィッヒ
配給 メトロ・ゴールドウィン・メイヤー
公開 アメリカ合衆国の旗 1928年11月
日本の旗 1929年11月
上映時間 95分
製作国 アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国
テンプレートを表示

』(かぜ、原題:The Wind)は、ヴィクトル・シェストレム監督による1928年公開の無声映画。主演はリリアン・ギッシュ。ドロシー・スカーボロの原作をフランシス・マリオンが脚色し、映画化された。不可視の自然現象である『風』を可視化したサイレント映画の傑作とされる。

あらすじ[編集]

バージニア州生まれのうら若き乙女・レティは、テキサス州に住む従兄のビバリーを頼り、砂嵐の吹き荒れる大平原の中にあるビバリーの家で暮らすようになる。ビバリーの子供達はすぐレティになつくが、彼の妻コーラは若く美しいレティに嫉妬し、いじめるようになる。

コーラのいじめに耐えかねたレティはビバリーの家を出、近所に住むがさつ者のカウボーイ・ライジと結婚することを決意する。しかしレティには、ライジの愛を受け入れるだけの心の準備がなかったため、二人の関係はぎくしゃくしたものとなってしまう。 レティのヴァージニアへの思慕が日に日に募るのをみたライジは、レティをヴァージニアへ帰すための資金を稼ぐべく、仲間と共に家を空ける。

猛烈な風にレティの神経が痛めつけられる中、かつてレティを誑かそうとした好色漢ロディが現れ、レティに襲い掛かる。レティは砂嵐を起こすという伝説の幽霊馬の幻を見ながら、失神する。

翌朝、レティは昨夜の出来事を思い出し、ロディを射殺してしまう。遺体を砂の中に埋めたものの、やむことの無い風は容赦なく砂を吹き飛ばし、埋めたはずのロディの遺体が徐々にあらわになり、レティは気も狂わんばかり。そこへライジが帰宅し、昨夜からの出来事は幻であったことにレティは初めて気付き、同時に夫・ライジへの真実の愛に気付くのであった。レティは、風が吹き荒れるこの地にライジと共に住み続けることを決心し、映画は幕を閉じる。

キャスト[編集]

  • レティ:リリアン・ギッシュ
  • ライジ:ラース・ハンソン
  • ロディ:モンタギュー・ラヴ
  • コーラ:ドロシー・カミング
  • ビバリー:エドワード・アール

スタッフ[編集]

その他[編集]

  • 本作は、原作を読んだリリアン・ギッシュ自身が強く映画化を希望し、MGMのボーイ・ワンダーとよばれたアーヴィング・タルバーグらに製作をもちかけ、自らの主導により撮影を進めた。
  • リリアン・ギッシュは後年、『この作品の撮影は、女優としての最悪の経験。8台のプロペラ飛行機で砂を吹き付けられ、嵐の効果を出すための硫黄の燃えさしが飛び交う中、目を開けている必要があった』と語っているほど撮影は困難を極めた。暑さのあまり、フィルム表面の乳剤が溶け出したほどであった。
  • サイレント映画末期に作成された作品であるため、部分的にサウンド(人の声など)が同調された。
  • 本来は、レティがロディを射殺して発狂、砂の嵐の中に消えていくはずであったが、メトロ・ゴールドウィン・メイヤー首脳陣が反対し、ハッピーエンドに変えさせた。

外部リンク[編集]