音声モールス発生器

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
音声モールス発生器

音声モールス発生器(おんせいモールスはっせいき、英:Speech/morse generator、独:Sprach/Morse Generator)は、ドイツ民主共和国(東ドイツ)で開発された通信装置の通称である[1]。開発名称は"Gerät 32620 (Device 32620)"と言われている。紙テープに打刻されたモールス信号を合成音声(ドイツ語スペイン語)に変換、キーパッドに入力した数字をモールス信号に変換するなどして音声出力する装置であり、もっぱら東側諸国の乱数放送などで用いられた。

概要[編集]

この装置は1980年代前半に旧東ドイツの宇宙研究所で開発された、とされる[1]。老朽化したシュナッターリンヒェン(Schnatterinchen, Device 32028)と呼ばれるアナログテープ式の装置の後継機で[1]、東ドイツのシュタージをはじめ、ポーランド公共安全省英語版、その他、ソビエト連邦キューバなど東側の諜報機関において、乱数放送用の音声データを作るのに用いられた[1][2]。キーパッド入力、シリアルポートからの外部入力(音声やモールス信号など)、紙テープ(5孔式鑽孔テープ)から元となる信号を取り入れ、それをモールス信号音や英語・ドイツ語の数字読み上げ音声に変換して出力するものであり、短波送信機に直結することで電波に乗せることもできた[1]。当初の読み上げ音源(ドイツ語・スペイン語)は、内蔵テープに吹き込まれていたが、のちにデジタル音源化された[1]。また、プログラム支援装置(Device 32621)を使用することで、英語やロシア語などの他の言語に当てはめることもできた[1]

現在では乱数放送の廃止や情報開示などにより、この機械の存在が公に知られているが、今でもロシア発の乱数放送(G06など)ではこの音声モールス発生器を使用している電波が見受けられ[3]、2020年現在でも稼働している動画がyoutubeに掲載されている[4]

諸元[編集]

出典による[1]

寸法:290×260×135mm

重量:約7.1kg

動作電圧:交流:110V・127V・220V、直流:12V

入力方式:キーパッド入力、シリアルポート入力、紙テープ(5孔式鑽孔テープ)

出力方式:KS-51ソケットによる外部出力・内臓スピーカー

出力言語:ドイツ語・スペイン語・モールス信号

LEDディスプレイ付き(エラーコード付き)

ニカド電池によるデータ保持機能

キーパッド入力[編集]

出典による[1][5]

キー入力 モールス入力 ドイツ語 意味 機能
0 - Nul 数字の0 操作画面における「No」キー
1 .---- Eins 数字の1 操作画面における「Yes」キー
2 ..--- Zwei 数字の2 モールス信号モードでは短点打鍵
3 ...-- Drei 数字の3 モールス信号モードでは長点打鍵
4 ....- Vier 数字の4
5 ..... Funf 数字の5
6 -.... Sechs 数字の6
7 --... Sieben 数字の7
8 ---.. Acht 数字の8
9 ----. Neun 数字の9
: ...- Achtung 傾注(暗号開始)
/ ........ Trennung 分離(スラッシュ)
+ ...-.- Ende 終了(暗号終了) 音声発生モードでの終了信号
= 対応なし モールス信号モードでは「アドレスセパレーター」
? モールス信号での終了信号
SPA スペースキー
RES リセットキー
STA/STP 暗号再生・一時停止
進む(設定画面)
戻る(設定画面)
MODE モード設定
INP 入力モードキー
OUT 出力モードキー
CLR クリアキー
EX CLR、OUT、RESの実行キー

使用例[編集]

以下の乱数放送で音声モールス発生器が使用された。

出典[編集]

外部リンク[編集]