階段を昇る裸婦

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『階段を昇る裸婦』
カタルーニャ語: Dona nua pujant l'escala
フランス語: Femme nue montant l'escalier
作者 ジョアン・ミロ
製作年 1937年
種類 デッサン
寸法 78 cm × 55.8 cm (31 in × 22.0 in)
所蔵 ミロ美術館バルセロナ

階段を昇る裸婦』(かいだんをのぼるらふ、: Femme nue montant l'escalier)は1937年にジョアン・ミロが厚紙に鉛筆と木炭で描いたスケッチ。この絵はバルセロナミロ美術館が所蔵している[1]

来歴[編集]

エドワード・マイブリッジの『The Human Figure in Motion』(人体動作の連続写真集)にある「階段を降りる女」(1887年)。マルセル・デュシャンはこれに触発されて『階段を降りる裸体英語版』を描いた。

ミロはスペイン内戦のさなかにこの絵を描いた。彼は当時パリに住み、グラン・ショミエールの肖像画のクラスに通い始めていた。彼はカタルーニャで起こっている事態を表現しようと、人物画の制作に立ち返った。その心境は、階段を昇る歪んだ裸婦の姿で現わされた[2]。この時期の他の作品には、『古い靴のある静物』と『スペインを救え』がある[3]

解説[編集]

画像外部リンク
マルセル・デュシャン『階段を降りる裸体』

ミロ美術館によると、「内戦の道義的な悲劇に対するミロの失望感が、人物の極端な変形、気だるげな手足、階段を昇ろうと苦難する様子に現われている[4]。」すなわち人物の変形と苦難の様子は、スペイン内戦の反映だと解釈されている[4]。画面の右上では窓か箱らしきものから、光線が室内に射しこんでいる。女は右手で梯子を掴もうとしている。この梯子は、脱出の象徴としてミロがいくつかの作品で使っているものである。女の露出した性器は大きく誇張され、『排泄物の山を前にした男と女英語版』で描かれたものと似ている[5]

この『階段を昇る裸婦』は、マルセル・デュシャンの『階段を降りる裸体英語版』との関連性が指摘されている。1912年にバルセロナのダルマウ画廊で開かれたキュビスト展で、ミロは初めてこのデュシャンの作品を見ている[6][7]。興味深いことに、デュシャンの絵は全くのオリジナルではない。それは、動物の動作を最初に記録した写真のひとつである、エドワード・マイブリッジの写真に触発されたものだった[8]。マイブリッジが示した階段の女の動作は、デュシャンとミロの想像力を捉えただけでなかった。同時代のサルバドール・ダリもデュシャンの作品のオマージュを制作している。ダリの作品では、ミロ同様、モデルはやはり階段を昇っている[9]

展示[編集]

開始 終了 展覧会 会場 都市 出典
1964年 1964年 テート・ギャラリー ロンドン [10]
1964年 1964年 チューリッヒ美術館 チューリッヒ [11]
1978年9月20日 1979年1月22日 Dessins de Miró ポンピドゥー・センター パリ [12]
1980年6月1日 1980年10月31日 ベラスケス宮殿スペイン語版 マドリード
1986年11月21日 1987年2月1日 チューリッヒ美術館 チューリッヒ [13]
1987年2月14日 1987年4月20日 デュッセルドルフ市立美術館 デュッセルドルフ [14]
1988年11月24日 1999年1月15日 Impactes. Joan Miró 1929–1941 ミロ美術館 バルセロナ [15]
1989年2月3日 1989年4月23日 Joan Miró: Paintings & Drawings 1929–1941 ホワイトチャペル・ギャラリー英語版 ロンドン [16]
1990年7月4日 1990年10月14日 マーグ財団美術館英語版 サン・ポール・ド・ヴァンス [17]
1993年4月20日 1993年8月30日 ミロ美術館 バルセロナ [18]
1993年10月6日 1994年1月11日 ニューヨーク近代美術館 ニューヨーク [19]
1995年2月11日 1995年4月17日 デュッセルドルフ市立美術館 デュッセルドルフ
1995年5月12日 1995年7月16日 クンストハレ・ウィーン英語版[要リンク修正] ウィーン
1995年7月28日 1995年10月22日 ヴェローナ近代現代美術館 ヴェローナ
1996年2月26日 1996年5月5日 バルセロナ現代文化センター英語版 バルセロナ
1997年7月7日 1997年11月11日 Miró, ceci est la couleur de mes rêves ピエール・ジアナダ財団 マルティニー [20]
1998年5月15日 1998年8月30日 Joan Miró. Creator of new worlds ストックホルム近代美術館 ストックホルム [21]
1998年9月18日 1999年1月10日 Joan Miró. Creator of new worlds ルイジアナ近代美術館 フレデンスバーグ英語版 [22]
2000年7月4日 2000年11月5日 マーグ財団美術館 サン・ポール・ド・ヴァンス
2001年10月23日 2002年1月27日 Rèquiem per les escales バルセロナ現代文化センター バルセロナ [23]
2002年3月6日 2002 年6月24日 La Révolution surréaliste ポンピドゥー・センター パリ [24]
2002年7月20日 2002年11月24日 ノルトライン=ヴェストファーレン美術館英語版 デュッセルドルフ
2004年11月25日 2005年2月6日 Joan Miró. Arquitectura d'un llibre ミロ美術館 バルセロナ [25]
2007年10月25日 2008年1月27日 Joan Miró. 1956–1983 Sentiment, emoció i gest ミロ美術館 バルセロナ [26]
2011年4月14日 2011年9月11日 Miró. テート・ギャラリー ロンドン [27]
2011年10月15日 2011年3月18日 Miró i l'escala de l'evasió. テート・ギャラリー、ミロ美術館 ロンドン、バルセロナ [28]
2012年5月6日 2012年8月12日 ナショナル・ギャラリー ワシントン [28]

2011年10月に開催された展覧会『ジョアン・ミロ:脱出の梯子英語版』では、鑑賞者がQRペディアを用いてカタルーニャ語、英語、その他いくつかの言語版のウィキペディアにアクセスできる仕組みが用意された[29]

脚注[編集]

  1. ^ Naked woman going upstairs”. 2011年11月6日閲覧。 - ミロ美術館による絵の写真と解説
  2. ^ Works by Joan Miró. Joan Miró Foundation. 1988. Ediciones Polígrafa.
  3. ^ The Tate Modern discovers the most political Miró” (スペイン語). Diario de Mallorca. 2011年11月5日閲覧。
  4. ^ a b A New Approach To Joan Miró, Joan Miró Foundation, p. 41, http://www.fundaciomiro-bcn.org/imgdin/spdossier/0010.pdf 2011年11月5日閲覧。 
  5. ^ Clavero 2010, p.72-73
  6. ^ (カタルーニャ語) Surrealisme a Catalunya, 1924–1936: de l'amic de les arts allogicofobisme, Polígrafa, (1988-08-01), pp. p.17, ISBN 978-84-343-0539-7, http://books.google.com/books?id=KqZDAAAACAAJ 2011年11月5日閲覧。 
  7. ^ Rosa Maria Malet; Joan Miró (1993), Joan Miró, Edicions 62, pp. p.19, ISBN 978-84-297-3568-0, http://books.google.com/books?id=o7e_jwEACAAJ 2011年11月5日閲覧。 
  8. ^ Tomkins, Calvin (1996), Duchamp: A Biography, U.S.: Henry Holt and Company, Inc, ISBN 0-8050-5789-7 
  9. ^ Judovitz et al, Dalia (2010), Drawing on art: Duchamp and company, Minnesota Press, pp. 147, http://books.google.co.uk/books?id=rt-BCXnPokUC&dq=stairs+duchamp+dali&source=gbs_navlinks_s 2011年11月5日閲覧。 
  10. ^ Jacques Dupin; Joan Mirâo; Ariane Lelong-Mainaud (2002), Joan Miró: catalogue raisonné : paintings, Daniel Lelong, http://books.google.com/books?id=VVk9bwAACAAJ 2011年9月24日閲覧。  cat num 151
  11. ^ Jacques Dupin; Joan Mirâo; Ariane Lelong-Mainaud (2002), Joan Miró: catalogue raisonné : paintings, Daniel Lelong, http://books.google.com/books?id=VVk9bwAACAAJ 2011年9月24日閲覧。  cat num 151
  12. ^ cat. núm. 145, repr. p. 70
  13. ^ cat. nº 108 repr
  14. ^ cat. nº 108 repr
  15. ^ cat. nº 56 repr. p.88
  16. ^ cat. repr.
  17. ^ cat. nº 102, repr. p. 343
  18. ^ cat. nº 147 repr. p.343
  19. ^ cat. repr. p.226
  20. ^ cat. nº 40 repr. p.95
  21. ^ cat. nº 102 repr. p.113
  22. ^ cat. nº 84 repr. p.66
  23. ^ Agustí, Fancelli (2001年10月25日). “Óscar Tusquets entona un réquiem emocionado por la escalera”. El País. 2011年8月20日閲覧。
  24. ^ La Révolution surréaliste. Fitxa de l'exposició (PDF)” (2002年). 2011年8月20日閲覧。
  25. ^ Joan Miró. Arquitectura d'un llibre”. Fundació Joan Miró (2004年). 2011年9月29日閲覧。
  26. ^ Joan Miró. 1956–1983 Sentiment, emoció i gest”. Fundació Joan Miró (2007年). 2011年9月29日閲覧。
  27. ^ Miró i l'escala de l'evasió. Fitxa de l'exposició” (2011年). 2011年8月20日閲覧。
  28. ^ a b Miró i l'escala de l'evasió. Fitxa de l'exposició”. Fundació Joan Miró (2011年). 2011年8月20日閲覧。
  29. ^ Miró-L'escala de l'evasió. Entrada a l'exposició- QRpedia codes.jpg” (2011年10月15日). 2011年10月24日閲覧。 - 展覧会初日、QRコードに端末をかざす鑑賞者

関連文献[編集]