転写開始前複合体

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転写開始前複合体(てんしゃかいしまえふくごうたい、Preinitiation complex)は真核生物(と古細菌)で遺伝子転写に必要な、タンパク質の巨大な複合体である。転写開始前複合体はDNAの立体構造を変え、RNAポリメラーゼIIが転写開始位置にくるのを助ける[1]

真核生物ではTFIIATFIIBTFIIDTFIIETFIIFTFIIHという6つの転写因子から構成されていることが多い。一方、古細菌はTFIIA、TFIIF、TFIIHを欠く。真核生物よりも単純、あるいは先祖型の転写開始機構を持つと考えられる。

2007年、ロジャー・コーンバーグTATAボックスプロモーターと協調する次のような転写開始因子複合体の作用機構を提唱した[2]

  • TATA結合タンパク質プロモーターと結合し、DNAを折り曲げる。これによって、RNAポリメラーゼIIとTFIIBのC末端がDNAを包むような形になる。TATA結合タンパク質はTATAボックスと結合し、TATAボックスを転写開始部位の25から30残基上流に近づける。
  • TFIIBのN末端がDNAをRNAポリメラーゼIIの活性部位に配置する。
  • TFIIEが複合体に結合し、TFIIHの複合体への結合を促す。
  • ATPアーゼ活性とヘリカーゼ活性を持つTFIIHのサブユニットがDNAに巻き戻しの力を加える。
  • DNAの巻き戻しの力によって、DNA鎖が一本鎖になり(DNAの変性という)、転写バブルを作る。TFIIFが1本鎖のコーディング鎖に結合し、転写バブルの広がりを保つ。
  • 1本鎖の非コーディング鎖が折れ曲がり、RNAの活性部位に入る。
  • 転写が6残基以上進むと、TFIIBが離れ、RNAポリメラーゼIIがプロモーター部位から離れる。

出典[編集]

  1. ^ Lee TI, Young RA (2000). “Transcription of eukaryotic protein-coding genes”. Annu. Rev. Genet. 34: 77–137. doi:10.1146/annurev.genet.34.1.77. PMID 11092823. 
  2. ^ Kornberg RD (2007). “The molecular basis of eukaryotic transcription”. Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 104 (32): 12955–61. doi:10.1073/pnas.0704138104. PMID 17670940. 

外部リンク[編集]