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電機子チョッパ制御

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

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電機子チョッパ制御(でんきし-せいぎょ)とは、鉄道車両において、直流電動機の制御を行う方式のひとつで、チョッパ回路を主回路(電機子)に対してを接続して電圧制御を行うものである。チョッパ制御というと、通常この方式をいう場合が多い。まれに、主回路チョッパ制御などと表記されることもある。チョッパ制御の構造についてはチョッパ制御の項を参照のこと。なお、主回路電流と界磁電流を独立して制御する方式の場合を、「4象限チョッパ制御」と区別する場合もある。

特徴

本方式は従来から用いられていた抵抗制御に比べて以下のような特徴がある。

  • 回生ブレーキの実現
高速域から低速域までのあらゆる領域で安定した回生ブレーキが可能であり、エネルギー消費量を減少できるほか、ブレーキ抵抗器を搭載しないですむため車体の軽量化が可能となる。(ちなみに、抵抗制御でも抑速ブレーキのように高速でなおかつ速度変化が安定している場合は、回生ブレーキは使用できる。)
  • 粘着性能の向上
ステップのない無段階制御が可能であるため、粘着性能を向上させることが可能である。よって、同一加速性能であれば、動力車比率(MT比)を低下させることが可能である。
  • 保守作業の低減
半導体素子を使った制御方式であるので、抵抗制御に用いられる制御機のような機械的な接点なく、保守作業を低減することが可能である。
  • 力行時のエネルギー損失の低減
抵抗制御の場合特に起動時に大きな電力損失を発生させるが、本方式ではそれを低減することが可能である。
  • 装置が高価
これは本方式における最大の欠点である。本方式が多用された1970年代前半から80年代後半の段階では、鉄道車両のような大きな電力を制御するための半導体機器が未発達な状態であり、価格も高価であった。

歴史

本方式を世界で最初に実用化したのは営団地下鉄(現在の東京メトロ)の6000系電車で1968年のことである。導入の主目的は、相次ぐ増発と地下水量の低下によって上昇していたトンネル内温度を下げるためで、この後営団は本方式を標準とし改良を加えながら長期間にわたって採用し続けた。一方、国鉄は本方式が持つ「省エネ」に着目し201系電車を大量生産したが、経営悪化に伴い安価な界磁添加励磁制御に方向転換した。また、一部の大手私鉄でも国鉄と同じく省エネを狙って試作車を製造したが、いずれも本格導入には至らず安価で回生ブレーキが使用できる界磁チョッパ制御や、VVVFインバータ制御を採用する場合が多かった。その後1990年代に入って交流電動機を使用するVVVFインバータ制御が価格、性能的に安定すると構造が複雑で故障の多い直流電動機を使用する本方式をあえて導入する意味がなくなりVVVFインバータ制御に取って代わられることとなり、最も熱心に本方式を導入していた営団でさえも9000系電車以降はVVVFインバータ制御に転向し、現在では既存のチョッパ制御車両の改造にも熱心である。よって、2005年現在、日本で新規に製造される鉄道車両で本方式を採用している車両は皆無である。 おそらく、日本で一番最後に導入されたチョッパ制御方式の電車は東京都交通局10-000形電車第27,28編成だと思われる。

関連項目