王室天文官

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王室天文官(おうしつてんもんかん、英語:Astronomer Royal)は、イギリスの王室直属の上級官の名称である。この上級官は2つの地位があり、1675年6月22日付けで発令された本職と、1834年に発令されたスコットランド王室天文官がある。かつては他にアイルランド王室天文官があったが、1966年に廃止された。

概要[編集]

王立官職としてグリニッジ天文台長の役職であったが、1972年にグリニッジ天文台長に女性天文学者のマーガレット・バービッジが就任した際、王室天文官にはマーチン・ライルが任命された。なお、似たような役職としてはヨーロッパ各国の王室天文官などがある。

初代王室天文官[編集]

イングランド王チャールズ2世によって創設された王立グリニッジ天文台の官職として、1675年にジョン・フラムスティードが任命される。ジョン・フラムスティードはグリニッジ天文台在職中に、恒星の位置を表す大英恒星目録(1725年)の作成、天体の位置を2次元投影した星座絵などからなる天球図譜(1729年)などを作成した。遠洋航海などでグリニッジと船の間の時刻差を測定することができれば、現在の船の経度などを求められる。そこで、子午線の0度線がグリニッジになったのである。

その後、各王室天文官は王室の名の下に発令され、グリニッジ天文台の責任者としての活動を行った。フラムスティードの場合には、王室長官の下にあって年間100ポンドの報酬と王室メンバーとしての地位を得た。そして、王室に対して天文学や関連する科学的な助言を与える仕事を行った。

歴代王室天文官[編集]

在職期間 氏名
1675年-1719年 ジョン・フラムスティード
Sir John Flamsteed FRS
1720年-1742年 エドモンド・ハレー
Edmond Halley FRS
1742年-1762年 ジェームズ・ブラッドリー
James Bradley FRS
1762年-1764年 ナサニエル・ブリス
The Reverend Nathaniel Bliss
1765年-1811年 ネヴィル・マスケリン
The Reverend Dr Nevil Maskelyne FRS
1811年-1835年 ジョン・ポンド
John Pond FRS
1835年-1881年 ジョージ・ビドル・エアリー
Sir George Biddell Airy PRS KCB
1881年-1910年 ウィリアム・クリスティ
Sir William Henry Mahoney Christie FRS
1910年-1933年 フランク・ダイソン
Sir Frank Watson Dyson KBE FRS
1933年-1955年 ハロルド・スペンサー=ジョーンズ
Sir Harold Spencer Jones KBE
1956年-1971年 リチャード・ウーリー
Richard van der Riet Woolley
1972年-1982年 マーティン・ライル
Sir Martin Ryle
1982年-1990年 フランシス・グレアム=スミス
Sir Francis Graham-Smith
1991年-1995年 アーノルド・ウォルフェンデール英語版
Sir Arnold Whittaker Wolfendale FRS
1995年-現在 マーティン・リース
Martin John Rees, Baron Rees of Ludlow, OM, FRS

外部リンク[編集]