「無脊椎動物」の版間の差分

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「無脊椎動物」という枠組みは[[単系統群]]である脊椎動物門を除いた[[側系統群]]であり、系統を無視した人為性の強い分類群として[[分類学]]における学問的重要性は低下している。
脊椎動物-無脊椎動物という分け方は、現在「[[生物学]]としては重要性は低い」と言う人{{誰|date=2014年9月}}{{いつ|date=2014年9月}}がいる。「便宜的な{{要出典範囲|人為分類|date=2014年9月}}」とも。<ref group="注">「人為分類???」<br />
分類というのは、どのような分類も全て極めて人為的な行為である。</ref>


もっとも、学問的な分野においても、分類群のまとめを表す単位として伝統的に表示されている。たとえば、[[外肛動物]]の研究者は「無脊椎動物を専門とする」と表記される場合がある。[[図鑑]]等の分冊でも、無脊椎動物でまとめる例が多い。
もっとも、学問的な分野においても、分類群のまとめを表す単位として伝統的に表示されている。たとえば、[[外肛動物]]の研究者は「無脊椎動物を専門とする」と表記される場合がある。[[図鑑]]等の分冊でも、無脊椎動物でまとめる例が多い。


[[初等教育]]における素朴な[[動物]][[分類]]法としても、今も使われている。たとえば、幼児向きの教科書には、獣・鳥・魚・昆虫等の混在した図を提示し、「これらの動物を2種類に分けましょう」という問題が載っていることがある。問題の意図としては脊椎動物・無脊椎動物の分類を期待している。[[理科]]の教育課程では、中学生向けの教材でこの分類法を用いている。その点、植物における「隠花植物」の名がほぼ[[死語]]になったのとは大きく異なっている。
[[初等教育]]における素朴な[[動物]][[分類]]法としても、今も使われている。たとえば、幼児向きの教科書には、獣・鳥・魚・昆虫等の混在した図を提示し、「これらの動物を2種類に分けましょう」という問題が載っていることがある。問題の意図としては脊椎動物・無脊椎動物の分類を期待している。[[理科]]の教育課程では、中学生向けの教材でこの分類法を用いている。その点、植物における「隠花植物」がほぼ[[死語]]になったのとは大きく異なっている。

;その他
人間に近いと認識される動物脊椎動物にまめらるため、無脊椎動物は「異様」な印象や「不思議」な印象を与えるものが多いことになる。若い女性で無脊椎動物が苦手な人は多い<ref>1991年に、ある教員が、富山大学教育学部<u>幼稚園教員</u>養成課程の学生を対象に、動物体験実習を実施した結果、「学生たちは家畜に比して野生動物が、特に無脊椎動物が苦手ないし嫌いであること、鳥類も比較的苦手であることが判明した」と述べた。(出典『東京大学 大学院紀要』第36巻、第1号、p.655)</ref>。


我々人間が脊椎動物であるから、「脊椎動物「そ以外」という分類は結果として「我々に似たもの」と「我々に似ていないもの」という区別になっていて無脊椎動物のほう「我々に似ていないもの」のほうに当たり、結果としていわゆる「異様」な印象や「不思議」な印象を与えるものが多いことになる。若い女性で無脊椎動物が苦手な人は多い<ref>1991年に、ある教員が、富山大学教育学部<u>幼稚園教員</u>養成課程の学生を対象に、動物体験実習を実施した結果、「学生たちは家畜に比して野生動物が、特に無脊椎動物が苦手ないし嫌いであること、鳥類も比較的苦手であることが判明した」と述べた。(出典『東京大学 大学院紀要』第36巻、第1号、p.655)</ref>。


== 他 ==
我々人間が脊椎動物であるから、「脊椎動物」と「それ以外」という分類は、結果として「我々に似たもの」と「我々に似ていないもの」という区別になっていて無脊椎動物のほうは「我々に似ていないもの」のほうに当たり、結果としていわゆる「異様」な印象や「不思議」な印象を与えるものが多いことになる。若い女性で無脊椎動物が苦手な人は多い<ref>1991年に、ある教員が、富山大学教育学部<u>幼稚園教員</u>養成課程の学生を対象に、動物体験実習を実施した結果、「学生たちは家畜に比して野生動物が、特に無脊椎動物が苦手ないし嫌いであること、鳥類も比較的苦手であることが判明した」と述べた。(出典『東京大学 大学院紀要』第36巻、第1号、p.655)</ref>。


== 脚注 ==
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;出典
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2014年12月10日 (水) 06:23時点における版

Invertebrata

無脊椎動物(むせきついどうぶつ)とは、脊椎動物以外の動物のことである。すなわち背骨、あるいは脊椎を持たない動物をまとめて指すもので、ジャン=バティスト・ラマルクが命名したInvertebrataの訳語である(Vertebrataは脊椎動物)。

詳しく言えば無顎類魚類両生類爬虫類鳥類哺乳類以外の動物といってもよい。また、より日常的な言い方をするなら、獣、鳥、両生爬虫類、そして魚を除いた動物で、日本でかつて「蟲」と呼ばれたもののうち両生爬虫類を除いたすべてのものと言ってもよく、ホヤカニ昆虫貝類イカ線虫その他諸々の動物が含まれる。

歴史

脊椎動物には、を備えた頭部を持ち、"赤い血"(ヘモグロビンを含む血液)を持つという、わかりやすい特徴がある。古代~近世では、血がある/血が無い という差のほうに重きを置いて認識されていた。

古代ギリシアのアリストテレスは『動物誌』において、動物の大分類として《有血動物》/《無血動物》を提示し、無血動物として有殻類・昆虫類・甲殻類・軟体類を挙げた。動物はいわゆる「血」(赤い血)を骨(脊椎も含む)において作っており、脊椎が無い動物は一般に「血」(赤い血)は無いという関係になっているので、結局のところ、アリストテレスの提示した分類枠は、(呼称の面では、遥か後の時代にラマルクの造語「Invertebrate 無脊椎動物」によって大きく変化したものの)その内容としては、現在でもおおむねそのまま残っているのである。

近世・近代になってリンネによって、「哺乳綱」「鳥綱」「両生綱」「魚綱」と、「昆虫綱」「蠕虫綱」という分類がおこなわれた。脊椎動物以外の動物を「無脊椎動物」として大別する分類は、上記の通り、ラマルクに依る。

動物の分類においては、脊椎動物に関する知識がそれ以外の動物についての知識に比べてはるかに多かった。そのため、脊椎動物を爬虫類・両生類といった大きな群にわけると、残りはその他の群として一まとめにされ、脊椎動物の各群と同等の地位を与えられた。

しかし、そこに含まれる生物の個々についての知見が深まるにつれ、それらの差異が大きいものであることがわかってきた。そのため、脊椎動物と対置される位置まで持ち上げられたのが無脊椎動物という名称である。

さらに多くが知られるにつれ、無脊椎動物の中の個々の群が脊椎動物に対置されるべきものと考えられるようになり、多くの動物門が作られ、脊椎動物はその中の一つという位置に納まった。このため、無脊椎動物の分類群としての妥当性と、存在意義は疑わしくなった。近年、脊椎動物門が脊索動物門の一亜門と見なされるようになってからは、さらに意味を見いだしにくくなっている。

このような経過は、植物における顕花植物隠花植物の関係によく似ている。歴史的にも平行的である。

現在の扱い

「無脊椎動物」という枠組みは単系統群である脊椎動物門を除いた側系統群であり、系統を無視した人為性の強い分類群として分類学における学問的重要性は低下している。

もっとも、学問的な分野においても、分類群のまとめを表す単位として伝統的に表示されている。たとえば、外肛動物の研究者は「無脊椎動物を専門とする」と表記される場合がある。図鑑等の分冊でも、無脊椎動物でまとめる例が多い。

初等教育における素朴な動物分類法としても、今も使われている。たとえば、幼児向きの教科書には、獣・鳥・魚・昆虫等の混在した図を提示し、「これらの動物を2種類に分けましょう」という問題が載っていることがある。問題の意図としては脊椎動物・無脊椎動物の分類を期待している。理科の教育課程では、中学生向けの教材でこの分類法を用いている。その点、植物における「隠花植物」がほぼ死語になったのとは大きく異なっている。

その他

人間に近いと認識される動物は脊椎動物にまとめられるため、無脊椎動物は「異様」な印象や「不思議」な印象を与えるものが多いことになる。若い女性で無脊椎動物が苦手な人は多い[1]


出典
  1. ^ 1991年に、ある教員が、富山大学教育学部幼稚園教員養成課程の学生を対象に、動物体験実習を実施した結果、「学生たちは家畜に比して野生動物が、特に無脊椎動物が苦手ないし嫌いであること、鳥類も比較的苦手であることが判明した」と述べた。(出典『東京大学 大学院紀要』第36巻、第1号、p.655)

関連項目