湿式洗浄塔

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湿式洗浄塔火炉からの煙道ガスなどから汚染物質を除去する装置である。湿式洗浄塔では、汚染されたガスを洗浄液の噴霧、洗浄液に吹き込んだりして接触することより汚染物質を除去する。

設計[編集]

ベンチュリー塔英語版。ベンチュリー塔ではサイクロン分離器と呼ばれるミストエリミネーターを用いることが多い。
ミストエリミネーターを上部に設置した充てん塔。様々な塔がある。

湿式洗浄塔すなわち大気汚染防止装置の設計は、産業用プロセスの条件や性質、汚染物質を含有する空気により異なる。入口ガス性状やばいじん粒子の特性(ばいじん粒子が存在する場合)が最も重要である。洗浄塔は、ばいじん粒子やガス状の汚染物質を集めるよう設計する。いろいろな湿式洗浄塔があり自由に配置ができる。洗浄液と汚染されたガスの接液が良くなるよう設計されている。

湿式洗浄塔は、ばいじん粒子を液滴に捕集することにより除去する。液滴はその後集められ、ガス状の汚染物質を溶解吸収する。洗浄塔内のガス中の液滴は、ミストエリミネーター飛まつ英語版分離器と呼ばれる装置により出口ガスから分離される(これらの言葉は互いにもちいることができる)。また、洗浄後の排液は、排水処理したのち排水したりプラントで再利用される。

湿式洗浄塔の細かな粒子を集める能力は、洗浄塔への電力投入量に直接比例することが多い。スプレー塔英語版のような低エネルギー装置は、5マイクロメートルより大きな粒子を集めるために用いられる。1マイクロメートル以下の粒子の除去には、高い効率を得るために、通常ベンチュリー塔のようなエネルギー消費量の多い装置や、凝縮洗浄塔のように粒子を大きくする装置が必要となる。加えて正しい設計、飛まつ分離器やミストエリミネーターが、高い除去効率を得るために重要である。ミストエリミネーターで捕集できない液滴の量がふえると、汚染物質の排出レベルを高めることになる。

ガス状の汚染物質を除去する湿式洗浄塔は吸収塔と呼ばれる。高い液ガス比、すなわちガスと液の接触が十分に行われることは、吸収塔で高い除去効率を得る上で重要である。さまざまな形状の湿式洗浄塔がガス状の汚染物質を除去するために用いられる。充填塔英語版棚段塔が最も一般的である。

粒子とガスを含むガスの場合、湿式洗浄塔は両汚染物質を除去することのできる唯一の空気汚染防止装置である。湿式洗浄塔はばいじん粒子とガス両方に対して高除去効率を達成ことができ、場合によっては両汚染物質を高効率で除去する。しかし多くの場合、ばいじん粒子除去に適した運転条件は、汚染ガスの除去には適していない。

一般に、高いガス / ばいじん粒子の同時除去効率を達成するためには、容易に吸収・除塵できる物質である必要がある(すなわち、ガスが吸収液に溶解しやすく粒子がおおきく容易に回収できる、もしくは石灰水酸化ナトリウムのような洗浄液を用いるなど)

利点と欠点[編集]

湿式洗浄塔(湿式集じん器とも呼ばれる)のばいじん粒子除去性能を、バグフィルター電気集じん器英語版 (EP)に対して比較評価する。これらの装置に対する湿式洗浄塔の利点は次のとおり

  • 湿式洗浄塔は、高い温度湿分環境下で使用できる。
  • 湿式洗浄塔で煙道ガスが冷却され、その結果装置全体が小さくなる。
  • 湿式洗浄塔は、ガスとばいじん粒子を除去可能である。
  • 湿式洗浄塔は、腐食性のガスを中和する能力を持つ。

湿式洗浄塔は腐食が欠点であり、同伴飛まつの分離やミストの除去が、高効率の性能を得たり、使用液の排水処理、再利用に必要である。

湿式洗浄塔は酸プラント英語版肥料プラント、製鉄アスファルトプラントや大きな発電所のようなさまざまな工業で用いられている。

湿式洗浄塔の利点と欠点 他の装置との比較
利点 欠点
  • 小設置面積。洗浄塔は温度を下げたり飽和とすることによりガスの容量を減らす。そのため、装置の大きさは、下流のファンや煙道を含めて、他の装置と比べて小さくなる。小設置面積のため建設費を下げたり、洗浄塔のより自由な設置が可能となる。
  • 2次ばいじん粒子源とならない。一度ばいじん粒子が集められると、ホッパーや輸送の間に漏れない。
  • 高温高湿度のガスを取り扱うことができる。温度制限はなく、凝縮の問題も起らない。バグフィルターや電気集じん器では問題となる。
  • 火災や爆発の危険が少ない。乾燥したばいじん粒子は可燃性の場合がある。水をもちいると爆発の可能性がなくなる。
  • ガスとばいじん粒子両方を吸収・集じんすることができる。
  • 腐食。水や溶解した汚染物質は、腐食性の高い酸溶液を形成する可能性がある。適切な材質選定が極めて重要である。また、湿-乾界面は腐食をおこす可能性が高い。
  • 高い消費電力。高い集じん効率を得るために、高い圧力損失をかける必要がある。結果として高い運転コストとなる。
  • 水の排出。排水規制に合致するよう、沈殿池や スラッジろ過器、排水処理が必要である。
  • 生成物の回収が困難。洗浄塔スラッジの脱水や乾燥によるばいじん粒子の回収、再利用は費用がかさみ難しい。

構成[編集]

湿式洗浄塔のシステムは通常下記のような構成である。

  • 煙道とファン系統
  • 増湿塔(必要な場合)
  • 洗浄塔
  • 同伴飛まつ分離器やミストエリミネーター
  • 吸収液供給系統(と循環系統)
  • 排水処理と再利用系統
  • 煙突

典型的な湿式洗浄プロセスは次のとおりである:

  • 火炉からの熱い煙道ガスは、増湿塔(洗浄塔での詰まりを防止する必要がある場合)に入る。ここでガスは冷却、増湿される。増湿塔において煙道ガスに存在するばいじん粒子が部分的に除去される。
  • ガスはベンチュリー塔に導入される。ここでおよそ半分のガスが除去される。ベンチュリー塔は95%以上のばいじん粒子の除去効率をもつ。
  • ガスは充填塔を流れる。ここで残りのガス(やばいじん粒子)が吸収される。
  • 同伴飛まつ分離器やミストエリミネーターにより煙道ガスに同伴する液滴を除去する。
  • 循環ポンプは使用済みの洗浄液の一部をベンチュリー塔へ戻す。循環使用し、残りは排水処理へ送られる。
  • 処理した洗浄液を増湿塔や充填塔で再利用する。
  • ファンや煙道をとおり煙道ガス煙突から排出される。

分類[編集]

湿式洗浄塔は運転の方法が多様なことから、をきれいに分類するのは難しい。集じんを目的とした洗浄塔は、通常ガス系統の圧力損失で分類される。ガス側圧力損失とはガスが洗浄塔をとおる際に起こる圧力の差違、すなわち圧力損失を示す(吸収液を塔内へスプレーする圧力ではない)。

洗浄塔は圧力損失で次のとおり分類分けされる:

  • 低程度のエネルギーを消費する洗浄塔の圧力損失は12.7 cm (5 in)水柱以下である。
  • 中程度のエネルギーを消費する洗浄塔の圧力損失は12.7 から 38.1 cm (5 から15 in)水柱である。
  • 高程度のエネルギーを消費する洗浄塔の圧力損失は38.1 cm (15 in)水柱以上である。

しかし、多くの洗浄塔は広い圧力損失範囲で運転される。これはおのおのの使用目的によるため、この種の分類分けは難しい。

湿式洗浄塔を分類わけする方法は他に、主にばいじん粒子を集めるのかガス状の汚染物質なのか、洗浄塔の利用方法によるものがある。しかし、この分類分けは洗浄塔が両汚染物質を除去するために用いられることが多いため、必ずしも明確でない。

湿式洗浄塔はまた、ガス相で気液接触する(液分散型)のか、液相なのか(ガス分散型)により分類することができる。洗浄塔は汚染物質を含むガスが液と接触するよう送風や送液に電力やエネルギーを用いるように設計されている。これらの種別を下記に示す。[1]

接触エネルギー源で分類した湿式集じん器
湿式集じん器 気液接触に用いられるエネルギー源
  • 液分散型
  • ガス分散型
  • 液膜
  • 組み合わせ
    • 液相やガス相
    • 機械的支援型
  • ガス流れ
  • 液流れ
  • 液とガス流れ
  • エネルギー源:
    • 液とガスの流れ
    • 機械駆動回転翼

材料と設計[編集]

腐食は化学工業で用いられる洗浄システムにおいて最も大きな問題である。繊維強化プラスチックや2重コーティングがよく使用する材料として選定されている。

引用文献[編集]

  • Bethea, R. M. 1978. Air Pollution Control Technology. New York: Van Nostrand Reinhold.
  • Perry, J. H. (Ed.). 1973. Chemical Engineers’ Handbook. 5th ed. New York: McGraw-Hill.
  • Richards, J. R. 1995. Control of Particulate Emissions (APTI Course 413). U.S. Environmental Protection Agency.
  • Richards, J. R. 1995. Control of Gaseous Emissions. (APTI Course 415). U.S. Environmental Protection Agency.
  • Semrau, K. T. 1977. Practical process design of particulate scrubbers. Chemical Engineering. 84:87-91.

関連項目[編集]

参考文献[編集]

  1. ^ US EPA Air Pollution Training Institute developed in collaboration with North Carolina State University, College of Engineering (NCSU)

外部リンク[編集]