干物箱

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干物箱(ひものばこ)は古典落語の演目の一つ。原話は、延享4年(1747年)に出版された笑話本・「軽口花咲顔」の一遍である『物まねと入れ替わり』。

別題は「吹替息子」。主な演者として、8代目桂文楽3代目古今亭志ん朝10代目金原亭馬生4代目桂三木助などがいる。

あらすじ[編集]

「遊びに行きたし、金は有り。されとて親父が恐ろしい…やれやれ」

伊勢屋の若旦那・幸太郎は三ドラ煩悩を極めた《達人》。その日も「銭湯に行く」と言って出てきたものの、やはり足が勝手に吉原へと向いてしまう。

「困ったな。遊びに行きたいけど…親父が怒るだろぅなぁ。アーア、僕が二人いればいいのに。そうだ!」

幸太郎の友達に、貸本屋渡世を営んでいる、声色の得意な善公と言う奴がいるのだ。あいつに代役をやらせれば…。
奴さんの住む長屋へ駆け込むと、善公は笑顔で迎えてくれた。

「若旦那の声色? 十八番ですよ! あれでしょ、若旦那と同じ格好をして吉原に乗り込み、花魁をびっくりさせて遊ぶの」
「違うよ。ウチの二階にいて、親父が話しかけたら僕の声色で相手をしてほしいんだ」
「えー…!」

お小遣いと羽織一枚で買収し、善公と一緒に伊勢屋へと戻ってきた若旦那。善公に表から声をかけさせ、親父が騙されたのを確認してから遊びに出かけた。

「代役でお金儲け…か。えらい事を引き受けちまったな」
「おーい、幸太郎!」
「早速、来やがったよ。『何ですか?』
「今朝、分家から干物が届いただろ。あれを何処にしまった?」
「聞いてないよ、ソンナノ…。えー『箱です、ハコ!』
「何の箱だ?」
『下駄箱』…じゃない。『違います、干物箱です』

(通常版) 親父は首をかしげながらも、ネズミがいてうるさくて気になるから干物を持って来いという。 そんな事出来るわけないと善公はお腹を抑えて


『イタタ…急にお腹が痛くなりました!』
「大丈夫か?いま薬を持ってくるぞ!」
『治りました!』
「治ったら干物を持って来い!」
『あぁっ!また痛い!』

下にいた親父が呆れて薬を持って二階に上がってきて見ると、頭から布団を被ってお尻が見えている。 しかもお尻が随分汚い、何はともあれ薬を飲めと布団を取ろうとするが、取られちゃならないと善公が布団を抑えている。 ならばと親父が力一杯引っ張り、ガバッと布団が取れたと思うと…見つかった。

「さてはウチの馬鹿息子に頼まれたな?」
「実は、お宅様の『馬鹿息子』に…」
「お前まで『馬鹿息子』って言うな!この野郎!!」


(初代三遊亭圓遊版) 親父は呆れて黙り込んでしまった。一安心した善公、若旦那の豪奢な部屋でくつろぎ始めたが、花魁から届いた若旦那宛の手紙を見つけて…。

「ウフフフフ、無用心だなぁ…読んじゃお。【一筆示しあげ参らせ候】…決まり文句だなぁ。【先日、若旦那が起こしの折、私こと病により臥せっておりましたが、若旦那がお見えと聴き、ひとえに全快】…良くやるわ。【さて、橘さんのお客さん】…俺の事?」

つい、気を入れて読み始めてしまった。

【あの善公は、もとより嫌な客なれど】…ひどい事書くなぁ。【若旦那様のお供ゆえ、致し方なくお相手をしておりました】…そうなの」

手紙には、善公が橘と言う女郎の布団の下に、越中褌を忘れたことが書いてあった。

【若い衆が布団を上げたとたん、その臭気甚だしく、八町四方にまで広がって、石灰を撒くやら大騒ぎ。アーアー嫌なあの男。南瓜野郎のアホジンタ】

「チキショー!! 俺のコト馬鹿にしやがって!! 褌忘れても俺ァ客だ!!」

あんまり大声を出したので、下にいた親父が不審に思い、二階に上がってきて…見つかった。

「察すると、ウチの馬鹿ヤロウに頼まれたな?」
「へぇ、お宅様の『馬鹿ヤロウ』に…」
「お前が言うな!」

(ここからは通常版も圓遊版も同じです)

善公が説教されていると、若旦那が戻ってきて、表から小声で…。

「おーい、紙入れを忘れたんだ。用ダンスの引き出し、放ってくれ」
「アンニャロウ…忘れ物して戻ってきやがった。幸太郎、何処をノコノコほっつき歩いてるんだ!!」

「へーぇ、善公は器用だ。親父そっくり…」

概略[編集]

『代役を立て、監視者の目を逃れる』というアイディアは古くからあったようで、狂言の『花子』やそれを歌舞伎化した『身替座禅』などにも登場している。

自分の悪口が羅列された手紙を発見し、大声を出した事でばれてしまうカタストロフィー初代三遊亭圓遊の工夫。