地獄でメスがひかる

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地獄でメスがひかる』(じごくでメスがひかる)は、高階良子による日本漫画作品。

なかよし』(講談社)にて1972年7月号から1972年10月号まで連載された。 1999年、講談社漫画文庫が刊行。2015年、なかよし60周年記念で復刻された[1]

あらすじ[編集]

父の愛人の子という理由、そして容姿の醜さから継母と異母兄姉達から虐げられていた弥生ひろみ。あまりの仕打ちに耐えかねて置き手紙を遺し、家から持ち出した睡眠剤を服用の上で海に投身し自殺を図るが、医学界から追放された身の天才医師、巌俊明に助けられる。アルコール依存症のおじの代わりに実質的に病院を運営していた俊明は、おじの制止を振り切り良心の呵責をマリファナで制御して、ひろみに全身を整形する手術の話を持ちかける。俊明の普通の言動すら「優しさ」「幸せ」と感じてしまう程、心に傷を負っていたひろみは生まれ変わるとして手術を承諾。そしてまるで別人のように美しくなった。

しかし、俊明に片想いをするナースの由紀はひろみに嫉妬。「あなたはモルモット」として真実を教えてしまう。俊明が行ったのは美容整形などではなく、死体を接ぎ合わせて美しく作り上げた人造人間に彼女の脳を移植したのであり、そして、元の醜い肉体は保存されており、それを利用して自分を追放した医学界に一矢報いるつもりだということを。

消毒薬の匂いに嫌気がさしたひろみは、宮崎の幇助で外へ出る。そこでカメラマンの青木に声を掛けられ、写真を撮影されるが、その直後に倒れて巌医院へ戻される。しばらく経ったころ、青木が巌医院を訪れ、ひろみの写真がコンクールで入選した事を伝え、モデルデビューを勧める。俊明は「ある計画」を立てており、その話を承諾する。写真集はベストセラーになり、ひろみは「朝露のビーナス」として有名になる。 出版社による記念パーティが開かれるが、その後に由紀は俊明が青木に写真集の発行を認め、ひろみをデビューさせたのはひろみの姿をアフターとビフォーで比較させる為だとも伝える。

元の肉体を嫌って俊明に処分を依頼したひろみだが、聞き入れて貰えないと知ると自らの手で、メスで切り刻んで焼いてしまった。それを知った俊明は激怒したが資料と記憶があればどうにかなると豪語。しかし次第に心のバランスがとれなくなり、薬物に溺れていく。 一方のひろみも、元の体を処分した事、過去に受けた心の傷に蝕まれてゆき「皆が親切なのは今の姿に対してだ」「今の姿は本当の私ではない」として精神が壊れてしまう。

そしてパーティ会場に姿を現した事と、ひろみの存在が目立ちすぎた事が元で俊明は無免許での医療行為、そして実験の疑念が広がり、警察が動き出す。同時に俊明が所有していたマリファナも残り少なくなり二人に破滅が訪れる……。

登場人物[編集]

弥生ひろみ
本作のヒロイン。父の愛人だった実の母は自分を父に押しつける様に失踪。父の家に引き取られる。本来は純朴で心優しい性格だが自出と容姿(顔への皮膚病 くる病 顔立ち等)を理由に家族から虐待を受けて育つ。兄の心ない仕打ち、父と継母のやりとりに傷ついて家出。自殺を図るが、俊明に救出される。そこで親切にされた事に感動し美容整形として手術を受けるが、由紀から真実を聞かされショックを受ける。そして病院を抜け出して公園で眠りこけていた時にカメラマンの青木に声を掛けられる。その後、「朝露のビーナス」としてモデルデビューをするが、自分自身の中身は変わってないのに容姿で態度を変化させる周囲に違和感を抱く。のちに自身の元の体を処分した事などから次第に心を病み、「この姿は私のものではない」「褒められても嬉しくない」「私は誰にも愛されない」と悩んで彷徨い断崖で絶命。消毒薬の匂いが苦手。
巌俊明
有能な勤務医だったが、他人の医療ミスを押しつけられて大学病院を解雇され医師免許を剥奪される。その後は、おじの依頼もあり個人医院の若医師として診察を引き受け、同時に地下室での研究を続けている(地下室の存在はおじ、由紀、宮崎、ひろみ以外には知らされてない)ひろみを研究材料にした事で精神を病み薬物が手放せない状態になる。ラストで無免許で医療行為をおこなっている事を警察に知られ、逮捕されそうになるが振り切って逃げ、ひろみの遺体を抱えて刑事達の目前で投身自殺。最終的にひろみの心を愛していたと気づいている。
俊明のおじ
小さな医院を経営する医師。高齢の為、無免許の俊明に実質的な経営を任せている。アルコール依存症だが、常識は持ち合わせており自然の摂理を無視した俊明の言動を苦々しく思い、止めさせようと忠告をするが聞き入れられない。俊明とひろみの死を知ると、自らも由紀と宮崎の目の前で燃え尽きる様に病死。同時に病院も廃業となった様子。俊明の他に肉親は描かれていない。
宮崎栄
医大生だったが、俊明に憧れて助手として巌医院へ採用される。俊明の計画に恐れと同時に興味も抱く。手術後のひろみに親切に振る舞い、ドレスをプレゼントしたり俊明の命令を破って外出させたりもした。
由紀
巌医院で働くナース。性格はあまり良い方ではなく、最初にひろみを見かけた時に「こんな容姿だったら私なら自殺している」などと発言し冷たい目を向けたり、俊明への片想いから、ひろみに意地悪をしてしまう。ラストで宮崎と共に「まるで夢を見ていた様だった」と呟く。
ひろみの父
外資系出版社の日本支社長をしている。妻と子供たちを裏切り愛人を作った事もあるが逃げられ、引き取らされたひろみを疎んでいる為、妻子達のいじめを黙認。「せめて容姿が人並だったら」と言ったことも。世間体を気にする面があるが行方不明になったひろみを気に掛ける様子もなかった。のちに自社で出版したひろみの写真集がベストセラーになり、記念パーティに妻子を連れて出席。自分の娘と気づく事もなく挨拶をしている。
ひろみの継母
もとから夫の裏切りの証、継子という事で良く思ってなかったひろみに対して容姿を口実に嫌がらせを展開した上で、夫にひろみを追い出して欲しいと言った。のちにパーティでひろみに会い、本人と気づかずに褒め言葉を掛ける。眼鏡を掛けている。
ひろみの異母姉 みさ子
高校生。中学の同級生達が家に来ていた時にお茶を持って来たひろみを皆の前で侮辱し、態度を注意されると「あの子は妹ではなく捨て子だった」と言い放つ。そして夜、姿を見せた事を理由に家族の前でひろみを折檻する。のちに「ビーナス」の写真集を見てパーティに行きたいと父に懇願。髪型は黒いショートボブ。
ひろみの異母姉 なお子
ひろみを「人間ではなくバケモノ」と罵倒。そしてテレビに映った小野寺に憧れるひろみを侮辱した事がある。パーティに出席。髪型は編み込み風。
ひろみの異母兄 勇一
勉強中に食事を差し入れたひろみを「お前が作った物は汚い」と罵倒し、物を投げつける。そしてみんなの前から消えて欲しいと言い放ち、彼女が自殺を図る原因となる。パーティに出席。
青木
手術後、外出先の公演で眠りこけていたひろみの美しさに圧倒され撮影。コンクールに出展し入賞。俊明の本心を見抜けずにモデルを依頼し、写真集を売り上げる。ティアドロップ型のサングラスを掛けている。
小野寺優
人気俳優。以前からひろみに憧れられていた。青木の紹介で知り合ったひろみの美しさに魅了されて交際を申し込む。しかしその言動が彼女が過去に姉達から吐かれた暴言を思い起こさせ、心を蝕ませる原因となってしまう。

書誌情報[編集]

出典・参考[編集]

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