不可逆性問題

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不可逆性問題とは、分子や原子の運動における微視的可逆性から、巨視的現象(マクロ現象)における不可逆性がどのように説明できるかという熱力学上ないし統計力学上の問題である[1][2]ボルツマンH定理に対する、ヨハン・ロシュミットによる1876年提出の逆行可能論(reversibility paradox)と、エルンスト・ツェルメロによる1896年提出の再帰性パラドックス(recurrence paradox)がある[3]。後者はポアンカレの回帰定理を根拠としたものである。


巨視的不可逆性[編集]

例えば、コーヒーとミルクを混ぜることは簡単でもその逆に混ざったものを分離することは難しい。このように「ある方向へ進むことはあっても、その逆方向に進むことは無い」という現象のことを「不可逆な」現象という。

このような不可逆性は、物理学においては、主に熱力学第二法則という法則で説明される。これは「閉鎖系において、エントロピーという物理量は増えることはあっても、減ることはない」という法則である。例えばコーヒーとミルクが混ざることはあっても分離することはないのは、「分離した状態よりも混ざった状態の方がエントロピーが高いからである」と説明される。

微視的可逆性[編集]

分子や原子のふるまいは量子力学や電磁気学の法則によって記述できるが、これらの法則は基本的に可逆的なものである。つまり、「ある方向に進むのならば、その逆方向に進んでもおかしくは無い」のである。

不可逆性問題[編集]

分子や原子のふるまいが可逆的な法則によって支配されているのならば、単純に考えて分子や原子の集合体である巨視的な物質(たとえばコーヒーやミルク)のふるまいも可逆的であるはずである。にも拘らず、熱力学第二法則によれば、巨視的な物質のふるまいは不可逆なものである。このパラドックスが、不可逆性問題である。

ボルツマンの解答とそれへの批判[編集]

ボルツマンは、分子的なふるまいから、エントロピーが増大することを示している(詳しくはH定理参照)。 ただし、H定理は「分子的混沌の仮定」を置いており、一般に証明されたものではない。

参考文献[編集]

  1. ^ ピーター・コヴニー;ロジャー・ハイフィールド「時間の矢、生命の矢」草思社(1995/03)
  2. ^ 田崎秀一「カオスから見た時間の矢―時間を逆にたどる自然現象はなぜ見られないか」(ブルーバックス)講談社(2000/04)
  3. ^ 藤原邦男;兵頭俊夫「熱学入門―マクロからミクロへ」東京大学出版会 (1995/06) 11章 ISBN 4-13-062601-9

関連項目[編集]