コンテンツにスキップ

リードジェネレーション (創薬)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
リード最適化から転送)

リードジェネレーション(lead generation、Hit to lead (H2L)としても知られる)は、創薬の初期段階であり、ハイスループットスクリーニング (HTS) からの低分子ヒット化合物が評価され、限定された最適化を経て有望なリード化合物を同定する[1][2]。これらのリード化合物は、リード最適化 (LO) と呼ばれる創薬の後続ステップでより広範な最適化を受ける[3][4]。一般的に、創薬プロセスは、ヒットからリードまでの段階を含む次のパスに従う。

リードジェネレーション段階は、ハイスループットスクリーニング (HTS) のヒット確認と評価から始まり、続いてアナログの合成 (ヒットエクスパンジョン) が行われる。通常、最初のスクリーニングヒットはマイクロモル (10-6モル濃度) の範囲の生物学的ターゲットに対する結合親和性を示す。リードジェネレーションの限定的な最適化により、ヒットの親和性はナノモル (10-9M) の範囲まで数桁改善されることがよくある。また、ヒット化合物は、代謝半減期を改善するために限定的な最適化を受け、その結果、化合物を疾患の動物モデル (英語版で試験できるようにし、望ましくない副作用をもたらす可能性のある他の生物学的ターゲットに対する結合選択性 (英語版も改善する。

平均して、創薬から前臨床開発の段階に入る 5,000 化合物につき 1つの割合で承認された薬剤になる[5]

ヒット確認

[編集]

ハイスループットスクリーンからヒット化合物が同定された後、以下の方法でヒット化合物を確認し、評価する。

  • 確認試験(Confirmatory testing): 選択したターゲットに対して活性が認められた化合物は、活性が再現可能であることを確認するために、HTSで使用したのと同じアッセイ条件を使用して再試験する。
  • 用量反応曲線(Dose response curve): 化合物をある濃度範囲で試験し、最大の結合または活性を半分になる濃度を決定する。(それぞれIC50またはEC50値)
  • 直交試験(Orthogonal testing): 確認されたヒット化合物は、通常はターゲットの生理学的条件に近いアッセイ法を使用して、または異なる技術を使用したアッセイ法を使用して評価される。
  • 二次スクリーニング: 確認されたヒット化合物は、機能的細胞アッセイ(functional cellular assay)で試験され、固有活性 (英語版が判定される。
  • 合成作業性(Synthetic tractability): 創薬化学者は、合成の実現可能性や、アップスケーリング、商品コストなどの他のパラメータに従って化合物を評価する。
  • 生物物理学的試験: 核磁気共鳴 (NMR)、等温滴定カロリメトリー (ITC)、動的光散乱英語版 (DLS)、表面プラズモン共鳴 (SPR)、二重偏光干渉 (DPI)、マイクロスケール熱泳動英語版 (MST) は一般に、化合物がターゲットに効果的に結合するかどうか、結合の速度論、熱力学化学量論、関連するコンホメーション変化を評価し、プロミスキャス結合を除外するために使用される。
  • ヒットランキングとクラスタリング: 確認されたヒット化合物は、様々なヒット確認実験に基づいてランク付けされる。
  • 特許権侵害評価: ヒットした化合物の構造を、専門のデータベースでチェックし、特許性があるかどうかを判断する[6]

ヒットエクスパンジョン

[編集]

ヒット確認に続いて、事前に定義されたテストの特性に従って、いくつかの化合物クラスターが選択される。理想的な化合物クラスターは、以下を有するメンバーを含む。

プロジェクトチームは通常、さらに精査をするため、3~6種類の化合物シリーズを選択する。次のステップでは、類似化合物を試験して定量的構造活性相関 (QSAR) を決定できる。アナログは、内部ライブラリから迅速に選択するか、または市販のソースから購入できる (「カタログSAR」または「購入SAR」)。創薬化学者はまた、コンビナトリアルケミストリー、ハイスループットケミストリー、またはより古典的な有機化学合成などのさまざまな方法を用いて、関連化合物の合成を開始する。

リード最適化

[編集]

この創薬段階の目的は、リード化合物の合成、効力が向上しオフターゲット効果を低減した新規アナログ、および合理的な in vivo 薬物動態を示唆する生理化学的/代謝特性を合成することである。この最適化は、ヒットした構造の化学修飾によって達成され、構造活性相関 (SAR)  (英語版の知識と、ターゲットに関する構造情報が利用可能な場合は構造ベースの設計を利用して修飾を選択する。

リード最適化は、動物有効性モデルや ADMET (in vitroin situ) ツールに基づいた化合物の実験的試験と確認に関係しており、その後、ターゲット同定やターゲットバリデーション (TV) が行われる。

脚注

[編集]
  1. ^ Fruber, Mark; Narjes, Frank; Steele, John (2013). “Lead Generation”. Handbook of Medicinal Chemistry: Principles and Practice. RSC Books. pp. 505–528. ISBN 978-1849736251. https://books.google.com/books?id=QRLLBQAAQBAJ&lpg=PA505&dq=John%20Steele%20active%20to%20hit%20drug&pg=PA505#v=onepage&q=John%20Steele%20active%20to%20hit%20drug&f=false 
  2. ^ Deprez-Poulain R, Deprez B (2004). “Facts, figures and trends in lead generation”. Current Topics in Medicinal Chemistry 4 (6): 569–80. doi:10.2174/1568026043451168. PMID 14965294. 
  3. ^ Keseru GM, Makara GM (Aug 2006). “Hit discovery and hit-to-lead approaches”. Drug Discovery Today 11 (15-16): 741–8. doi:10.1016/j.drudis.2006.06.016. PMID 16846802. 
  4. ^ Bleicher KH, Böhm HJ, Müller K, Alanine AI (May 2003). “Hit and lead generation: beyond high-throughput screening”. Nature Reviews. Drug Discovery 2 (5): 369–78. doi:10.1038/nrd1086. PMID 12750740. 
  5. ^ Ezekiel J. Emanuel. “The Solution to Drug Prices”. New York Times. https://www.nytimes.com/2015/09/09/opinion/the-solution-to-drug-prices.html?_r=0. "On average, only one in every 5,000 compounds that drug companies discover and put through preclinical testing becomes an approved drug. Of the drugs started in clinical trials on humans, only 10 percent secure F.D.A. approval. ..." 
  6. ^ Cockbain J (2007). “Intellectual property rights and patents”. In Triggle JB, Taylor DJ. Comprehensive Medicinal Chemistry. 1 (2nd ed.). Amsterdam: Elsevier. pp. 779–815. doi:10.1016/B0-08-045044-X/00031-6. ISBN 978-0-08-045044-5 

関連項目

[編集]