パグパグ
パグパグ(タガログ語、pagpag)とは、フィリピンにおいて貧困者が残飯を食糧として生活している問題のことである。パグパグが発生する背景に経済的不平等の問題があることはもちろんのこと、その行為の性質上から保健衛生上の問題も孕む。
歴史
[編集]パグパグの起源は極度の貧困にあり、フェルディナンド・マルコス大統領による21年間の独裁体制下の1960年代に始まった。この時期、フィリピンは債務危機と深刻な不完全雇用(アンダーエンプロイメント)に直面し、それによって極度の貧困がさらに悪化した。[1][2] セブやネグロス島を含む国内の様々な地域が経済的な打撃を受け、ネグロス飢饉の際には6歳未満の子供の5分の1が深刻な栄養失調に陥った。[3][4]
これらの社会問題により、多くの人々が仕事を求めてマニラをはじめとする都市部への移住を余儀なくされた。中部ビサヤ地方からの移住者の多くはトンドのスラム街でインフォーマル・セトラー(非公式居住者)となり、「ハピラン(Hapilan)」などのコミュニティを形成した。この「ハピラン」という言葉は、もともとセブアノ語で「ゴミ捨て場」を意味していたが、住民たちがポジティブな意味合いを持たせるために「ハッピーランド(Happy Land)」と言い換えたものである。これらのコミュニティでは、様々な場所から集められた廃棄タンパク質(肉の残りかすなど)が利用されるようになり、これが後に「パグパグ」へと発展していった。[5][6]
COVID-19パンデミックの際には、ドゥテルテ政権による危機対応の失敗により、多くの貧困地域が生命を維持するためにパグパグに頼ることを余儀なくされた。[7]
背景
[編集]フィリピンでは貧富の格差が激しく、富裕層がいる一方で国民の半数近くが貧困層である[8]。スラム街住民やストリートチルドレンの多くは、金銭的な理由からまともな食材を購入できないことがままある。そのため、貧困者はファストフード店のゴミ箱を漁り、残飯として捨てられた生ごみを再調理し(時にはそのまま)食べることを余儀なくされている。
パグパグという名称は、残飯から汚れを払う日常からタガログ語の「パグパグ (pagpag) = 振り落とす」という言葉に由来する[9]。また、健康上のリスクとして食品を媒介した病気や毒素の摂取があるとされ、フィリピン政府から警告もなされているが、貧困層はこれを食べる以外に選択肢が無いというのが現状である。
調理方法
[編集]まず、ゴミ袋の中から生ごみ(残飯)とそれ以外のゴミ(ストローや紙コップ、紙ナプキンなど)を分ける。次に食べられそうな残飯から汚れを払い落とし、水で洗って少量の調味料を加えた後、鍋で煮るか焼くのが一般的とされる[10]。また、調理済みの残飯は小分けにされ、貧困者向けに販売されることもある。
脚注
[編集]- ↑ Punongbayan, JC (March 5, 2016). “Marcos Years Marked 'Golden Age' of PH Economy? Look at the Data”. IMHO. Rappler (英語). 2018年5月14日閲覧.
- ↑ De Dios, Emmanuel S. (November 16, 2015). “The Truth About the Economy Under the Marcos Regime”. Opinion. Business World (英語). 2018年5月14日閲覧.
- ↑ “Masagana 99, Nutribun, and Imelda's 'Edifice Complex' of Hospitals”. GMA News Online (英語). September 20, 2012. 2018年5月14日閲覧.
- ↑ Scott, Michael F. (February 15, 1987). “On Negros, Sugar and Famine, Prawns and Hope”. Los Angeles Times (英語). 2018年5月14日閲覧.
- ↑ “Happy Land – Hapilan”. Philippine Daily Mirror (英語). June 22, 2024. 2025年7月15日閲覧.
- ↑ Cruz, Gen (June 22, 2015). “Pagpag: A thriving business”. CNN Philippines (英語). 2018年3月4日時点のオリジナルよりアーカイブ. 2016年6月13日閲覧.
- ↑ “The Hunger Pandemic”. GMA News (英語). June 14, 2021. 2025年7月16日閲覧.
- ↑ 志賀和民 (2014年1月21日). “フィリピンを愛しているからこそ、悪いところを探してみた!”. ダイヤモンドZai. ダイヤモンド社. 2021年2月17日閲覧.
- ↑ “釘を集める子、マニラのスラム街”. ナショナルジオグラフィック日本版. ナショナルジオグラフィック協会. 2012年1月26日. 2021年2月17日閲覧.
- ↑ Fritzie Rodriguez (2014年3月15日). “Meal of the day: 'Pagpag'”. 2014年9月4日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年2月17日閲覧。