ドデカカルボニル三ルテニウム

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ドデカカルボニル三ルテニウム
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識別情報
CAS登録番号 15243-33-1 チェック
特性
化学式 C12O12Ru3
モル質量 639.33 g/mol
外観 オレンジ色固体
密度 2.48 g/cm3
融点

224 °C

沸点

減圧下で昇華

への溶解度 不溶
有機溶媒への溶解度 可溶
構造
分子の形 D3h対称
双極子モーメント 0 D
危険性
主な危険性 Toxic
関連する物質
関連物質 ドデカカルボニル三鉄
ドデカカルボニル三オスミウム
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。

ドデカカルボニル三ルテニウム (: Triruthenium dodecacarbonyl) は化学式 Ru3(CO)12 で表される錯体である[1]。オレンジ色で金属カルボニルクラスターを形成しており、他の有機ルテニウム化合物の前駆体となる。

構造と合成[編集]

3つのルテニウム原子が集合し D3h 対称のクラスターを形成した構造の錯体である[1]。3つのルテニウム原子を正三角形の頂点としたとき、各ルテニウム原子につき正三角形の同一平面上に2つ、垂直方向に2つの CO が配位した構造を取っている[2]Os3(CO)12も同様の構造を有している。一方 Fe3(CO)12 は、これら2つのカルボニル錯体とは異なる構造を取る。

Ru3(CO)12 は、塩化ルテニウム(III)一酸化炭素とを溶液中高圧で反応させることで得られる[3][4]。正確な化学反応式は明らかとなっていないが、以下のようなものと推定されている。

反応[編集]

Ru3(CO)12 の化学的性質は広く研究されており、多くの化合物の前駆体となっている[1]。高圧の一酸化炭素と反応させることで、ルテニウム間の結合を切り Ru(CO)5 を合成することができる。

(室温下)

Ru(CO)5 は不安定であり、同族の錯体である Fe(CO)5 とは対照的である。Ru(CO)5 が Ru3(CO)12 へと戻る際には、CO の脱離により生成する不安定な Ru(CO)4 の生成が律速となっている。この Ru(CO)4 は Ru(CO)5 と反応し、最終的に Ru3(CO)12 へと戻る[5]

水素存在下で加熱すると、四面体構造の Ru4H4(CO)12 が生成する[6]

またルイス塩基の存在下で、以下の反応が進行する。

(n = 1〜3)

(Lは第3級ホスフィン、もしくはイソシアニド

炭化物クラスター[編集]

高温では Ru6C(CO)17 や Ru5C(CO)15 といった、炭素と一酸化炭素を配位子とするクラスターへと変化する。また [Ru5C(CO)14]2- や [Ru10C2(CO)24]2- といったアニオン性のものも知られている[7]

出典[編集]

  1. ^ a b c 干鯛真信「Ru3(CO)12」、『有機合成化学協会誌』第27巻第12号、有機合成化学協会、1969年、 1243-1245頁、 doi:10.5059/yukigoseikyokaishi.27.1243
  2. ^ Slebodnick, C.; Zhao, J.; Angel, R.; Hanson, B. E.; Song, Y.; Liu, Z.; Hemley, R. J., "High Pressure Study of Ru3(CO)12 by X-ray Diffraction, Raman, and Infrared Spectroscopy", Inorg. Chem., 2004, 43, 5245-52. doi:10.1021/ic049617y
  3. ^ Bruce, M. I.; Jensen, C. M.; Jones, N. L. “Dodecacarbonyltriruthenium, Ru3(CO)12Inorganic Syntheses, 1989, volume 26, pages 259-61. DOI:10.1002/9780470132579.ch45, ISBN 0-471-50485-8.
  4. ^ M. Faure, C. Saccavini, G. Lavigne “Dodecacarbonyltriruthenium, Ru3(CO)12Inorganic Syntheses, 2004 Vol 34, p. 110. ISBN 0-471-64750-0.
  5. ^ Hastings, W. R.; Roussel, M. R.; Baird, M. C. “Mechanism of the conversion of [Ru(CO)5] into [Ru3(CO)12]” J. Chem. Soc., Dalton Trans., 1990, pages 203-205. DOI: 10.1039/DT9900000203
  6. ^ Bruce, M. I.; Williams, M. L. “Dodecacarbonyl(tetrahydrido)tetraruthenium, Ru4(μ-H)4(CO)12Inorganic Syntheses, 1989, volume 26, pages 262-63. ISBN 0-471-50485-8.
  7. ^ Nicholls, J. N.; Vargas, M. D. “Carbido-Carbonyl Ruthenium Cluster Complexes” Inorganic Syntheses, 1989, volume 26, pages 280-85. DOI:10.1002/9780470132579.ch49 ISBN 0-471-50485-8.