クリーンアップ (アニメーション)

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クリーンアップ(英:Clean-up)とは、手描きアニメーションの制作における工程の一部で、原画のラフな線をきれいな線で清書することである。クリンナップともいう[1][2]が、神村幸子『アニメーションの基礎知識大百科』では「クリーンアップ」の名称で立項しているので、本稿ではそれに従う。

概要[編集]

伝統的なアニメ制作の手法では、最初に描かれる画は「原画」と呼ばれる。原画チェックの工程を経て、作画監督によってOKが出た場合は「動画」という工程に回されるが、この工程ではまず原画をクリーンアップする必要がある。日本の一般的なスタジオでは、この仕事は「動画マン」の中でも新人の「見習い」が担当する。日本ではクリーンアップで経験を積んだ後、「中割」「原画」など別の工程に移行する人も多いが、海外では完全な分業制のスタジオも多く、その場合はクリーンアップ専門の「職人」が担当する。日本では新人の仕事とはいえ、クリーンアップを行うアニメーターは、「キャラ」や「物」の決定稿となる完成原画の責任を負う。

クリーンアップとは、完成したフィルムの中で視聴者が見ることができる最終的な描線を作成するプロセスである。「クリーンアップ」と言っても、それは必ずしも「きれいに」線を整えることを意味するわけではない。アニメーターは、通常は一人ではなく「アニメーター集団」であるが、原画と絵コンテを参照して、あたかも1人のアーティストがフィルム全体を作成したかのように見せる。クリーンアップを担当するアーティストは、作画監督の意図に従い(通常「作画注意事項」「動画注意事項」として原画と一緒に上がってくる)、その演技と動作に忠実にトレースする。

通常、クリーンアップは原画の上に新しい紙を敷いて行われる。クリーンアップと同じ紙に、青鉛筆を使って「塗分け線(色トレス線)」を描く場合もある。青鉛筆の色は、コピー機(トレスマシン)には映らないが、スキャナーでは読み取れるので、デジタルのフィルター処理で抜き出すことができる。完成した動画は、セルにトレスされるか、コンピューターに転送されて次の工程(「仕上」)へと続く。

クリーンアップをするには正確な描線が必要で、動画検査の指示に応じて描き直したりもするため、通常、原画の2倍の時間がかかる。

2010年代以降、クリーンアップの工程をグラフィックタブレットとソフトウェアを使ってデジタルで行うのも一般的になった。デジタルでクリーンアップをしてもらえると、「仕上」の工程でゴミを取ったり線修正がいらなくなるので、仕上マンは助かる[3]

出典[編集]

  1. ^ アニメーターに必須のスキル! クリンナップとは?”. 東京アニメーター学院専門学校 (2018年4月18日). 2023年3月1日閲覧。
  2. ^ クリンナップ”. OCA大阪デザイン&IT専門学校. 2023年3月1日閲覧。
  3. ^ 神村幸子『増補改訂版 アニメーションの基礎知識大百科』グラフィック社、2020年、p.72 ISBN 978-4-76-613331-8

関連項目[編集]