クランベリー型形態素
形態論におけるクランベリー形態素(くらんべりーけいたいそ、英語: cranberry morpheme。fossilized termとも)とは、独立した意味や文法的機能を持たず、単語の区別のみに使われる拘束形態素の一種である[1]。
語源
[編集]クランベリー形態素の典型的な例は、クランベリー(cranberry)のcranである。このcranは、ニシンの重さを意味する同音異義語とは関係なく、鶴が基となっている。似たケースに、桑を意味するmulberryのmulがある。これはラテン語でクワの木を意味するmorusから来ているが、他の語には含まれない形態素である。
音声学的には、ラズベリー(raspberry)の接頭辞raspもクランベリー形態素の1つである。比べて、ブラックベリー(blackberry)や、個人の名前を由来とするローガンベリー(loganberry)やボイセンベリー(boysenberry)は、明確に2つの自由形態素から成っている。
例
[編集]英語
[編集]英語におけるクランベリー形態素には以下のようなものがある。
日本語
[編集]日本語については、宮島達夫が1973年に「無意味形態素」の名でこの種の要素を論じ、ドイツ語学で「唯一形態素」(unikales Morphem)と呼ばれるものとほぼ重なるとした[2]。「ビー玉」「あわてふためく」「昆虫」では、「玉」「あわて(る)」「虫」が独立の単語や他の合成語の要素として現れるのに対し、「ビー」「ふためく」「昆」は他に現れず、現代語としての意味を持たない。語源的には「ビー」は「ビードロ」の略、「ふためく」は「ふたふた(ばたばた)」と騒ぎ立てる意味の動詞、「昆」はそれだけで昆虫を表す漢語だが、宮島はこれを語源の問題であって現代語の意味ではないとする[2]。
無意味形態素は名詞の構成要素に最も多く、特に後要素が上位概念を表し、無意味な前要素がそれを限定する型が多い。「カーキ色」「ひぐま」では「色」「くま」が所属を示し、「カーキ」「ひ」は「白くま」でも「月の輪ぐま」でもないことを示すにすぎない。同じ型に「おがくず」「けん玉」「コッペパン」「津波」「ちゃぶ台」「まな板」などがあり、後要素の意味が不明なものには「くちびる」「耳たぶ」「湯たんぽ」「夜なべ」などがある[2]。動詞では「しがみつく」「こびりつく」「へばりつく」のように前要素の意味が不明なもの(「しがむ」という動詞はない)や、「あわてふためく」「見せびらかす」のように後要素が動詞的であることは分かってもその意味が分からないものがある[2]。接辞的なものとしては、「さぎり」「さなか」「さまよう」の「さ」のように伝統的に「発語」と呼ばれてきた接頭的要素や、「はだえ」「おす」「えさ」「原っぱ」「すみっこ」のように、切り捨ててもほぼ同じ意味の語(はだ・お・え・原・すみ)が残る接尾的要素がある。宮島は、意味の明らかな要素とこれらの間に厳密な線は引けないとし、「無意味形態素」と「唯一形態素」も多くの場合に一致するが常にではないとしている[2]。
発現
[編集]クランベリー形態素が発生する理由はいくつかある。
出典
[編集]- ↑ "Cranberry morpheme" from the Lexicon of Linguistics
- 1 2 3 4 5 宮島達夫「無意味形態素」『ことばの研究』第4巻、国立国語研究所、1973年、15–30頁、doi:10.15084/00001759。