カンテヨジャヤー
『カンテヨジャヤー[1]』(Cantéyodjayâ)は、オリヴィエ・メシアンが1949年[注 1]に作曲したピアノ曲。演奏時間は約12分。
題名はサンスクリット風の響きをもつメシアンによる造語である[2]。日本語タイトルは「カンテヨジャーヤ」「カンテヨジャーヤー」「カンテヨージャーヤー」などさまざまに記される[注 2]。
概要
[編集]アメリカ合衆国のタングルウッドを訪問した1949年7-8月に作曲された[3]。
メシアンが実験的な作風を取っていた時期(1949-1952年)のはじまりをなす。ほぼ同時期に書かれた『4つのリズム・エチュード』の第2曲「音価と強弱のモード」(ヒル & シメオネ 2020, p. 226は1949年初秋に完成と推測)と同様に音価・強弱・アタックを組織化しており、その響きもよく似ている[3]。
『ハラウィ』、『トゥランガリーラ交響曲』、『5つのルシャン』の素材を使用しているが、その一方で音価のモードも使用している[4][5]。初期メシアンの中心的音楽原理であった「移調の限られた旋法」は最後の2小節以外ほとんど出てこない[6]。
メシアン本人は『カンテヨジャヤー』をあまり評価せず、自分で演奏したことはなかったし、出版は1953年になってからだった。1954年2月23日にパリのマリニー小劇場 (Théâtre Marigny) で行われたドメーヌ・ミュジカルの演奏会において、イヴォンヌ・ロリオによってようやく初演された[7]。
構造
[編集]曲は3つの部分から構成され、第1と第2の部分はくり返されるルフランとその間に挿入されるクープレから構成される[8]。しかし、とくに第2の部分は伝統的なロンド形式とは異なっている[9]。
第1の部分は「カンテヨジャヤー」と名付けられた特徴的な音型が6回くり返され、その間に5種類の異なるクープレが挿入される比較的単純な構造を持つ。5番目のクープレは「音価・音高・強弱のモード」と名付けられている。最後に「アルバ」(alba)[注 3]と呼ばれる4番目のクープレが短く再現する。
第2の部分はより複雑な構造をもち、3つのルフラン(楽譜上はそれぞれdoubléafloréalîla, mousikâ, trianguillonouarkîと呼ばれている)とカデンツァのような複雑長大な3つのクープレから構成される。まず3つのルフランが全部演奏される。第1のクープレはインドのリズムにもとづく部分と、音価の半音階(右手はだんだん遅くなり、左手は速くなる)からなる。ついで第1のルフランが再現する。第2のクープレもやはりインドのリズムとその逆行、音価の半音階からなる。第2のルフランがごく短く再現した後に第3のクープレになるが、この部分では4つの音(音価・音高の組み合わせ)の置換や逆行不能リズム(中央部分が徐々に拡大する)が使われている[8]。第3のクープレが大いに盛りあがったところで第1のルフランがフォルテッシモで再現する。第1の部分の第3クープレが現れた後、第3のルフランが再現する。
第3の部分は短いコーダで、第1の部分からカンテヨジャヤーとアルバが再現して終わる。
脚注
[編集]注釈
[編集]出典
[編集]- ^ ヒル & シメオネ 2020, p. 224.
- ^ Healey 2007, p. 59.
- ^ a b c ヒル & シメオネ 2020, p. 226.
- ^ ヒル & シメオネ 2020, pp. 237–238.
- ^ Healey 2007, pp. 60–63.
- ^ Healey 2007, p. 65.
- ^ ヒル & シメオネ 2020, p. 238.
- ^ a b 永井 1981, p. 337.
- ^ Healey 2007, p. 70.
参考文献
[編集]- ピーター・ヒル、ナイジェル・シメオネ 著、藤田茂 訳『伝記 オリヴィエ・メシアン(上)音楽に生きた信仰者』音楽之友社、2020年。ISBN 9784276226012。
- 永井雪子「カンテヨジャーヤー」『最新名曲解説全集』 17巻、音楽之友社、1981年、335-337頁。ISBN 4276010179。
- Healey, Gareth (2007). “Messiaen's "Cantéyodjayâ": A 'Missing' Link”. The Musical Times 148 (1898): 59-72. JSTOR 25434442.
外部リンク
[編集]- 『メシアン :カンテヨジャヤー』ピティナ ピアノ曲事典 。