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'''社会統計学'''(しゃかいとうけいがく、social statistics、[[ドイツ語|独]] Sozialstatistik)とは、[[統計学]]を、[[社会学]]などの[[社会科学]]に応用したもので、応用統計学の一種と考えられる。[[社会調査]]において用いる統計学といってもよい。[[社会調査]]では、国勢調査などの例外を除き社会の中の全ての人々を調査することはできない。そのため[[サンプリング]](標本抽出)による[[標本調査]]によりデータを得て分析を行う。そのデータから社会全体(目標母集団)の状態や特徴を推定したり、仮説を検証するために社会統計学を用いる。
'''社会統計学'''(しゃかいとうけいがく、social statistics、[[ドイツ語|独]] Sozialstatistik)とは、[[統計学]]を、[[社会学]]などの[[社会科学]]に応用したもので、応用統計学の一種と考えられる。[[社会調査]]において用いる統計学といってもよい。[[社会調査]]では、[[国勢調査]]などの例外を除き社会の中の全ての人々を調査することはできない。そのため[[サンプリング]](標本抽出)による[[標本調査]]によりデータを得て分析を行う。そのデータから社会全体(目標[[母集団]])の状態や特徴を推定したり、仮説を検証するために社会統計学を用いる。


とくに[[母集団]]と[[標本]]の関係について重視することが特徴である。その意味で[[推計統計学]]の一種である。また、多くの分析手法は、分析対象のデータが[[正規分布]]しているという前提に基づいているが、実際のデータは正規分布とは限らないので注意が必要である。例えば社会調査における質問項目([[変数]])では、場合によっては回答の偏りが大きく、ほぼ全員が「はい」と答えるものもある。そのような変数の分布を分析することはできない。ただし、標本数が数百以上など大きい時は、正規分布と見なしてもほとんど問題ない。[[データ分析]]の基本は、データの分布(散らばり具合、[[分散]]、[[標準偏差]])を解明することである。
とくに[[母集団]]と[[標本]]の関係について重視することが特徴である。その意味で[[推計統計学]]の一種である。また、多くの分析手法は、分析対象のデータが[[正規分布]]しているという前提に基づいているが、実際のデータは正規分布とは限らないので注意が必要である。例えば社会調査における質問項目([[変数]])では、場合によっては回答の偏りが大きく、ほぼ全員が「はい」と答えるものもある。そのような変数の分布を分析することはできない。ただし、標本数が数百以上など大きい時は、正規分布と見なしてもほとんど問題ない。[[データ分析]]の基本は、データの分布(散らばり具合、[[分散]]、[[標準偏差]])を解明することである。


[[心理学]]における[[実験]]は通常、標本数が少ないため、[[小標本理論]]に基づき[[統計的検定]]を行う。変数間(要因間)の関連の大きさを検討することは少ない。むしろ統計的検定により、関連があるかないかを解明することを目的としている。このようなデータは、暗黙の内に行為者はすべて人間として均質であるという前提があり、無作為抽出を行うことはなく、現実には実験参加者のほとんどが学生である。そのため年齢や学歴などの効果を検討することはできず、もともとのデータに何らかの偏りがある場合は注意が必要である。
[[心理学]]における[[実験]]は通常、標本数が少ないため、[[小標本理論]]に基づき[[統計的検定]]を行う。変数間(要因間)の関連の大きさを検討することは少ない。むしろ統計的[[検定]]により、関連があるかないかを解明することを目的としている。このようなデータは、暗黙の内に[[行為者]]はすべて[[人間]]として均質であるという前提があり、無作為抽出を行うことはなく、現実には実験参加者のほとんどが学生である。そのため年齢や学歴などの効果を検討することはできず、もともとのデータに何らかの偏りがある場合は注意が必要である。


社会調査データを用いる場合は、[[大標本理論]]に基づき何らかの[[多変量解析]]法を用い、変数間の関連の大きさを解明することを目的とする。究極的な目的は、分析により説明変数(独立変数)と被説明変数(従属変数、目的変数)の関連を検討することにより、社会現象が起こる[[因果関係]]を解明することである。[[社会学]]では[[実験計画]]が困難な場合が多いので、様々な変数をコントロールするための分析が発達している。多変量解析の手法としては、基本的な[[重回帰分析]]や[[分散分析]]の他、[[対数線形モデル]]や[[多水準分析]]が特徴的である。分析は[[SAS]], [[SPSS]], [[STATA]], [[R言語]], [[S言語]], [[LEM]]などの分析用ソフトウェアが用いられる。
社会調査データを用いる場合は、[[大標本理論]]に基づき何らかの[[多変量解析]]法を用い、変数間の関連の大きさを解明することを目的とする。究極的な目的は、分析により説明変数(独立変数)と被説明変数(従属変数、目的変数)の関連を検討することにより、[[社会現象]]が起こる[[因果関係]]を解明することである。[[社会学]]では[[実験計画]]が困難な場合が多いので、様々な変数をコントロールするための分析が発達している。多変量解析の手法としては、基本的な[[重回帰分析]]や[[分散分析]]の他、[[対数線形モデル]]や[[多水準分析]]が特徴的である。説明変数と被説明変数を区別しない分析法として[[因子分析]]や[[対応分析]]([[数量化理論|数量化Ⅲ類]])、[[多次元尺度構成法]](MDS)等がある。[[SAS]], [[SPSS]], [[Stata]], [[R言語]], [[S言語]], [[LEM]]などの分析用ソフトウェアが用いられる。


== 関連項目 ==
== 関連項目 ==
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== 外部リンク ==
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*[http://web.kyoto-inet.or.jp/people/mabuchir/ 社会調査の道具箱]
*[http://web.kyoto-inet.or.jp/people/mabuchir/ 社会調査の道具箱]


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*[http://www.ir.rikkyo.ac.jp/~murase/0704ozis.pdf 立教大学応用調査実習]
*[http://www.ir.rikkyo.ac.jp/~murase/0704ozis.pdf 立教大学応用調査実習]


*[http://www.spss.co.jp/support/sample.html SPSS社サンプルデータ]
*[http://www.f.waseda.jp/aueda/ 上田貴子各種分析ソフトについて]

*[http://www.kh-web.org/links/method_st.htm#stata Stata等解説 KH's web site]

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*[http://shakaichousa.net/mua/ 社会調査サンプルデータ集]
*[http://shakaichousa.net/mua/ 社会調査サンプルデータ集]

*[http://www.spss.co.jp/support/sample.html SPSS社サンプルデータ]


*[http://www.sas.com/offices/asiapacific/japan/service/index.html SAS社]
*[http://www.sas.com/offices/asiapacific/japan/service/index.html SAS社]


*[http://rcisss.ier.hit-u.ac.jp/page09.htm 統計情報へのリンク 一橋大学経済研究所]
*[http://www.f.waseda.jp/aueda/ 上田貴子各種分析ソフトについて]

*[http://www.kantei.go.jp/jp/toukei.html 首相官邸 統計情報]

*[http://www.stat.go.jp/ 総務省統計局]

*[http://www.stat.go.jp/data/nenkan/index.htm 日本統計年鑑エクセルファイル]

*[http://www.stat.go.jp/data/kokusei/2005/index.htm 国勢調査]

*[http://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/index.html 厚生労働統計一覧]


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==参考文献==
==参考文献==
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ザイゼル著. 佐藤郁哉・海野道郎訳. 2005. 『数字で語る ―社会統計学入門』新曜社. ISBN 4788509326
ザイゼル著. 佐藤郁哉・海野道郎訳. 2005. 『数字で語る ―社会統計学入門』新曜社. ISBN 4788509326


ボーンシュテット&ノーキ著. 海野道郎・中村隆監訳. 1990.『社会統計学―社会調査のためのデータ分析入門』ハーベスト社. ISBN 4938551128
ボーンシュテット&ノーキ著. 海野道郎・中村隆監訳. 1999.『社会統計学―社会調査のためのデータ分析入門』ハーベスト社. ISBN 4938551128


足立浩平. 2006. 『多変量データ解析法―心理・教育・社会系のための入門』ナカニシヤ出版. ISBN 4779500575
足立浩平. 2006. 『多変量データ解析法―心理・教育・社会系のための入門』ナカニシヤ出版. ISBN 4779500575


原純輔・海野道郎. 2004. 『社会調査演習 第2版』東京大学出版会. ISBN 4130520199
原純輔・海野道郎. 2004. 『社会調査演習 第2版』東京大学出版会. ISBN 4130520199

岸学.2005.『SPSSによるやさしい統計学』オーム社. ISBN 4274066207


村瀬洋一他編. 2007. 『SPSSによる多変量解析』オーム社. ISBN 4274066266
村瀬洋一他編. 2007. 『SPSSによる多変量解析』オーム社. ISBN 4274066266


与謝野有紀編. 2006.『社会の見方、測り方―計量社会学への招待』勁草書房. ISBN 4326601868
与謝野有紀編. 2006.『社会の見方、測り方 ―計量社会学への招待』勁草書房. ISBN 4326601868


小塩真司. 2005. 『研究事例で学ぶSPSSとAmosによる心理・調査データ解析』東京図書. ISBN 4489007108
小塩真司. 2005. 『研究事例で学ぶSPSSとAmosによる心理・調査データ解析』東京図書. ISBN 4489007108
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野宮大志郎編. 2004. 『SASプログラミングの基礎 ―A gentle introduction』ハーベスト社. ISBN 4938551691
野宮大志郎編. 2004. 『SASプログラミングの基礎 ―A gentle introduction』ハーベスト社. ISBN 4938551691


Miller,Jane E. =長塚隆訳. 2006 『数を表現する技術 ―伝わるレポート・論文・プレゼンテーションー』オーム社.ISBN 4274066533





2008年1月24日 (木) 07:14時点における版

社会統計学(しゃかいとうけいがく、social statistics、 Sozialstatistik)とは、統計学を、社会学などの社会科学に応用したもので、応用統計学の一種と考えられる。社会調査において用いる統計学といってもよい。社会調査では、国勢調査などの例外を除き、社会の中の全ての人々を調査することはできない。そのためサンプリング(標本抽出)による標本調査によりデータを得て分析を行う。そのデータから社会全体(目標母集団)の状態や特徴を推定したり、仮説を検証するために社会統計学を用いる。

とくに母集団標本の関係について重視することが特徴である。その意味で推計統計学の一種である。また、多くの分析手法は、分析対象のデータが正規分布しているという前提に基づいているが、実際のデータは正規分布とは限らないので注意が必要である。例えば社会調査における質問項目(変数)では、場合によっては回答の偏りが大きく、ほぼ全員が「はい」と答えるものもある。そのような変数の分布を分析することはできない。ただし、標本数が数百以上など大きい時は、正規分布と見なしてもほとんど問題ない。データ分析の基本は、データの分布(散らばり具合、分散標準偏差)を解明することである。

心理学における実験は通常、標本数が少ないため、小標本理論に基づき統計的検定を行う。変数間(要因間)の関連の大きさを検討することは少ない。むしろ統計的検定により、関連があるかないかを解明することを目的としている。このようなデータは、暗黙の内に行為者はすべて人間として均質であるという前提があり、無作為抽出を行うことはなく、現実には実験参加者のほとんどが学生である。そのため年齢や学歴などの効果を検討することはできず、もともとのデータに何らかの偏りがある場合は注意が必要である。

社会調査データを用いる場合は、大標本理論に基づき何らかの多変量解析法を用い、変数間の関連の大きさを解明することを目的とする。究極的な目的は、分析により説明変数(独立変数)と被説明変数(従属変数、目的変数)の関連を検討することにより、社会現象が起こる因果関係を解明することである。社会学では実験計画が困難な場合が多いので、様々な変数をコントロールするための分析が発達している。多変量解析の手法としては、基本的な重回帰分析分散分析の他、対数線形モデル多水準分析が特徴的である。説明変数と被説明変数を区別しない分析法としては因子分析対応分析数量化Ⅲ類)、多次元尺度構成法(MDS)等がある。SAS, SPSS, Stata, R言語, S言語, LEMなどの分析用ソフトウェアが用いられる。

関連項目

外部リンク

参考文献

片瀬一男他. 2007. 『社会統計学』放送大学教育振興会. ISBN 4595307411

ザイゼル著. 佐藤郁哉・海野道郎訳. 2005. 『数字で語る ―社会統計学入門』新曜社. ISBN 4788509326

ボーンシュテット&ノーキ著. 海野道郎・中村隆監訳. 1999.『社会統計学―社会調査のためのデータ分析入門』ハーベスト社. ISBN 4938551128

足立浩平. 2006. 『多変量データ解析法―心理・教育・社会系のための入門』ナカニシヤ出版. ISBN 4779500575

原純輔・海野道郎. 2004. 『社会調査演習 第2版』東京大学出版会. ISBN 4130520199

岸学.2005.『SPSSによるやさしい統計学』オーム社. ISBN 4274066207

村瀬洋一他編. 2007. 『SPSSによる多変量解析』オーム社. ISBN 4274066266

与謝野有紀編. 2006.『社会の見方、測り方 ―計量社会学への招待』勁草書房. ISBN 4326601868

小塩真司. 2005. 『研究事例で学ぶSPSSとAmosによる心理・調査データ解析』東京図書. ISBN 4489007108

野宮大志郎編. 2004. 『SASプログラミングの基礎 ―A gentle introduction』ハーベスト社. ISBN 4938551691

Miller,Jane E. =長塚隆訳. 2006 『数を表現する技術 ―伝わるレポート・論文・プレゼンテーションー』オーム社.ISBN 4274066533