黄銅

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五円硬貨。銅60-70%、亜鉛40-30%の黄銅製。

黄銅(おうどう、brass)は、Cu と亜鉛Zn の合金で、特に亜鉛が20%以上のものをいう。真鍮(しんちゅう)と呼ばれることも多い。

特徴

最も一般的な黄銅は、銅65%、亜鉛35%のものである。また、銅と亜鉛の割合によって、次のように呼ばれる。

  • 丹銅(たんどう):亜鉛が5~20%未満、赤みが強い。ゴールドブラスとも言う。
  • 七三黄銅:亜鉛が30%。イエローブラスとも言う。
  • 六四黄銅:亜鉛が40%、黄金色に近い黄色を示す。

亜鉛の割合が多くなるにつれて色が薄くなり、少なくなるにつれて赤みを帯びる。一般に亜鉛の割合が増すごとに硬度を増すが、同時に脆さも増すため、45%以上では実用に耐えない。

その他にも、被削性を高めるためにPb を添加した快削黄銅や、(すず)Sn を添加し耐海水性を高めたネーバル(naval)黄銅(海軍黄銅とも言う)などがある。

適度な強度、展延性を持つ扱いやすい合金として、約350年ほど前から広く利用されるようになった。青銅に比べて歴史が短いのは亜鉛の沸点が約900℃と低く、開放式の還元法では単体が得られなかったからである。 日本で現在発行されている五円硬貨の素材もこの黄銅である。展延性に優れており冷間加工で使用される代表的な金属である。弾薬の薬莢や金属模型などその用途は広い。適度な硬さと過度ではない展延性によって、旋盤フライス盤などによる切削加工が容易で尚且つ価格もほどほどなので微細な切削加工を要求される金属部品の材料として使用頻度の高い合金である(金属の切削加工材としては、金や純銅などの軟らかい金属は展延性がありすぎて粘りが強く、硬い金属は削りにくく割れやすくどちらも微細な切削加工はしにくい)。また、に似た美しい黄色の光沢を放つことから金の代用品にもされpoorman's gold(貧者の金)と呼ばれ、日本の時代劇において小道具として使われる偽の小判も真鍮製のものが多い。日本では仏具、多くの金管楽器などに多用されている(金管楽器の別名であるブラス(brass)は黄銅の英名に由来している)。また、その特性故に昔から精密機械や水洗便器の給水管、理化学器械類や鉄道模型等の素材として使用された。エッチングして艦船模型に使用される場合もある。

材料記号

銅合金として扱われ、JIS規格材料記号は頭文字Cで始まる4桁記号で表される。

  • C2600:七三黄銅(銅が約70%、亜鉛が約30%)
  • C2801:六四黄銅(銅が約60%、亜鉛が約40%)
  • C3604:快削黄銅(銅が57.0-61.0%、鉛が1.8-3.7%、が0.50%以下、鉄+錫が1.0%以下、亜鉛は残部)
  • C3771:鍛造用黄銅(銅が57.0-61.0%、鉛が1.0-2.5%、鉄+錫が1.0%以下、亜鉛は残部)
  • CAC201:黄銅鋳物1種

関連項目

  • 洋白(銅と亜鉛とニッケルの合金)
  • 青銅(銅と錫の合金)
  • 白銅(銅とニッケルの合金)
  • セバ屑(銅含有量が65%、亜鉛含有量が35%位の板の新くず)
  • コーペル屑(銅含有量が60%、亜鉛含有量が40%位の板の新くず)
  • 脱亜鉛腐食