聖書協会
聖書協会(Bible Society)は(たいていは超教派的な)非営利組織であり、聖書の翻訳・出版して手ごろな値段で配布するために設立されている。聖書協会の聖書は伝統的に本文以外には注釈も解説もつかなかったが、最近はこの原則が緩められており特定教派に偏らない訳注と異訳と元テキストの異同などが付いている。
聖書協会の歴史
多くのプロテスタントは「聖書のみ」という原則を共有し、聖書の無料あるいは安価な配布は福音主義の重要な点であると信じており、それが聖書協会の活動を支えてきた。
聖書協会の歴史は1804年に設立された英国外国聖書協会(British & Foreign Bible Society)に遡る。それはウェールズのウェールズ語話者のキリスト教徒に提供する安価な聖書の不足問題と取り組むグループであった。
プロテスタント系とはされているが、英国外国聖書協会は初期の頃からエキュメニズムを指向しており、カトリックやユニテリアンのようなグループも抱え込んで1813年からは外典も含めるようになっていた。この寛容なエキュメニズムへの反動として、トリニテリアンの教義とプロテスタントの正典に厳格に従おうとする人々のためにトリニテリアン聖書協会( en:Trinitarian Bible Society)が1831年に設立されている。しかしカトリック教会は1960年代の第2バチカン公会議までは滅多に公式な翻訳作業には加わろうとはしなかった。
英国外国聖書協会はその後、活動をイングランドやインド、そしてヨーロッパとその周辺へ広げていく。支社が世界中に設立されてそれらは後に独自の聖書協会となっていくのである。今日では聖書協会連合(United Bible Societies)がそれらの個別の聖書協会を束ねており、それぞれの聖書協会はその土地の全ての教会の要請に従ってその土地の聖書を翻訳して印刷して安価に提供する超教派のネットワークとして活動している。現在、聖書協会はプロテスタント、カトリック、正教会の正典、エキュメニズム訳、あるいは共同訳に従って聖書を印刷し、他のキリスト教系出版社と共同して出版している。聖書翻訳も今ではエキュメニズムが基本である。
アメリカ合衆国において、聖書協会は19世紀前半に隆盛をきわめる。米国聖書協会に加えて各州や地域で多くの聖書協会が南北戦争に先立って設立され、今日まで生き延びて、聖書やその他の印刷物を刑務所や病院や避難所に配布している。それらの地方協会のほとんどはNational Association of State and Regional Bible Societiesに加盟している。アメリカ合衆国で最も古い聖書協会はペンシルベニア聖書協会であり1808年に設立されている。こうした活動は西へと広がり、シカゴ市が設立した僅か3年後の1840年にはシカゴ聖書協会が出来ている。
カトリックと聖書協会
カトリック教会の伝統的な教えに依ることなく聖書を正しく解釈することは出来ないとカトリック教会は信じてきた。
「神のことばを権威をもって正しく解釈する任務は、教会の教導権、すなわち、教皇と教皇に結ばれた司教にのみゆだねられています。」(『カトリック教会のカテキズム』カトリック中央協議会、2002年、第1部第2章第3項#100)
聖書共同訳を正式に認めた第2バチカン公会議以前は、カトリック教会はカトリックの正しい注釈の付かない、カトリックによって編集されていない現地語訳には懐疑的だったのである。歴史的に見ると、カトリック司教による聖書翻訳反対が強かったのはラテンアメリカとケベック州だった。 1824年のUbi Primum にみられるように、ローマ教皇レオ12世は聖書協会の事業を非難している。
「聖書協会は教父たちの伝統を否定し、聖書を普通の言葉へ翻訳もしくは誤翻訳させている。」「聖書を普通の言葉に翻訳することを認めれば、人間の軽率さを鑑みて益より害をなすであろうと恐れるに足りる十分な根拠はある。」
ローマ教皇ピウス9世は1846年の Qui Pluribusでこの前任者の理論を繰り返し、拡張した。カトリック版の聖書協会としてはen:Societa di San Geronimo という組織があり、福音書をカトリック流にイタリア語翻訳して配布した。
共同訳が進展するようになってからはカトリックとプロテスタントと正教会の共同作業の中で聖書協会に対する敬意は払われるようになっている。現在、多くの聖書協会は何種類かの聖書を出版しているが、その中にはカトリック公認の(カトリック正典すべてを含んだ)翻訳も含まれている。
現在の聖書協会
聖書協会連合(en:United Bible Societies, UBS)は各国聖書協会の国際的な連合体であるが、2006年の1月現在で141団体がメンバーになっており、200を越える国と地域で活動を行っている。また、福音派系の英訳聖書を配布している国際聖書協会(International Bible Society: IBS)とは競合関係にある。
各国の聖書協会としては以下のものが含まれている。
- 英国外国聖書協会 (1804)
- ペンシルベニア聖書協会 (1808)
- アメリカ聖書協会 (1816)
- ニュージーランド聖書協会 (1846)
- オーストラリア聖書協会 (1817)
- NSW聖書協会 (1817)
- コロンビア聖書協会 (1825) [1]
USB非加盟の聖書協会としては以下のものがある。
- en:International Bible Society (1809)
- en:Trinitarian Bible Society (1831) [2]
- Pioneers Bible Translators (1970) [3]
- Sociedad Bíblica Chilena (1972)
- The Watch Tower Bible and Tract Society of Pennsylvania (1884)
- 国際ギデオン協会 (1899、翻訳は行わずホテルやモーテルに配布している。)
外部リンク
- スコットランド聖書協会
- BFBS Machine Assisted Translation
- 聖書協会連合
- 英国とウェールズの聖書協会 in England and Wales
- ペンシルベニア聖書協会
- 米国聖書協会
- 国際聖書協会
- [4]
- [5]
- [6]
- シカゴ聖書協会
- ニュージーランド聖書協会
- オーストラリア聖書協会
- 日本聖書協会