立体音響

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立体音響(りったいおんきょう)とは、音を録音再生する際に3次元的な音の方向や距離、拡がりなどを再生する方式のことである。3次元音響3Dオーディオなどともいう。 また、3次元の空間上の音場を制御するという意味も含め、三次元音場制御システムのことを指す場合もある。

技術

立体音響の意味する所は、ホールやライブ会場といったある特定の場所での音環境を立体的に再現することにある。 実際の場所で聴く音環境では、音源から発せられる音波が、球面上に広がり他のさまざまな音と重なり合いながら聴取者に届いている状態である。つまり、聴取者に届いている音波というのは立体的な曲面を持つ粗密波である。 しかし、それをマイクなどで収録した場合、そのマイクで取得できる音波というのは、実際であれば空間上に広がっている音波の記録位置の点でしか記録が出来ないため、単純にその記録をスピーカで鳴らしても音場の再現は出来ない。 そこで、複数のマイクで録音した物を複数のスピーカで鳴らし、限定された空間や場所において、擬似的に音場を再現する方法などにより、立体音響のシステムが作られている。

立体音響は、しばしば以下のような要素によって再現される。こうした要素はマイクの配置によって物理的に収録・再現される時もあれば、デジタル信号処理によって人工的に再現される時もある。

音量差
距離による音量の減衰や両耳間強度差により音源の音像定位を再現するもの。
時間差
音波が到達する時間差により音源の音像定位を再現するもの。両耳間時間差ハース効果(先行音効果)など。
周波数特性の変化
音波の伝達や遮蔽による周波数特性の変化により音源の音像定位を再現するもの。頭部伝達関数など。
位相の変化
音波の伝達や遮蔽による位相の変化により音源の音像定位を再現するもの。
残響の変化
残響特性により周辺環境の音場を再現するもの。残響特性はしばしばインパルス応答として計測される。

方式

立体音響の方式として現在ではさまざまな方法がある。

ステレオ方式

立体音響の簡便かつもっとも古い方法としてステレオ方式がある。ステレオ方式においてはすくなくとも 2個のマイクロフォン、2チャンネルの録音再生システム、2個のスピーカーを使用して再生する。 ドルビーデジタルによって代表されるサラウンド方式においては 3個以上のスピーカーを使用する。

また、3D位置オーディオ(3-D positional audio)と呼ばれる方式においては、モノラル録音した音を使用してデジタル信号処理によって方向感などを与える。通常のステレオ方式においては再生に使用する2個のスピーカーの間だけから音が聞こえるが、3D位置オーディオ技術を組み合わせることによってスピーカーの外側から音が聞こえるようにすることができる。

バイノーラル方式

バイノーラル方式は、ステレオ方式での聴取者の前方にスピーカーを置くのに対して、ヘッドフォンを使用して再生する。バイノーラル方式における録音は、通常、ダミーヘッドと呼ばれる模擬人頭の耳の部分にマイクロフォンを埋め込んで録音する。

擬似的な立体音響

クロスフィード
ステレオ音声をもとに、擬似的に立体感を付け加える方法の1つ。左右各チャンネルの信号を、左右反対側のチャンネルにわずかに遅延させて逆相でミックスする。左右反対側に逆相でミックスすることで定位の強調を行うほか、時間差により立体感を加える。ヘッドフォン聴取での頭内定位を緩和するためにも使われる。

関連項目

外部リンク