無煙火薬

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無煙火薬(フィンランドVIHTAVUORI社製)

無煙火薬(むえんかやく)とは、従来の黒色火薬が着火時に大量の煙を放出する(有煙火薬)ことに対し、発煙防止のために発明された火薬をいう。

ニトログリセリンニトロセルロースニトログアニジンの3つが基剤となる。ニトロセルロースは古くは脱脂綿などの繊維を濃硝酸と濃硫酸の混酸によりニトロ化することで製造されていた。ニトロセルロースだけを原料に用いたもの、ニトロセルロースとニトログリセリンを用いたもの、3つの物質を用いたものの3種類に大別できる。それぞれ、シングルベース火薬、ダブルベース火薬、トリプルベース火薬と称される。

主に銃器弾薬の推進剤(薬莢内の火薬)として使われる。

歴史

軍の指揮官は、銃を発射すると出る霧のような白煙でおおわれた戦場で視界や命令伝達に関する問題について、ナポレオン戦争以来不満を持っていた

ニトロセルロースが1846年にクリスチアン・シェーンバインによって発明されたが、問題が多くすぐには実用されなかった。

1884年に、ポール・ヴィエイユは、B火薬と呼ばれる無色火薬を発明した。これはエーテルアルコールを混合しゼラチン化させた綿火薬から作られ、ローラーに通して薄いシート状に形成したのち、破片状に切断して使用された。安定性が高く、湿気にも強い近代的なライフル銃の弾薬として広く使われるようになった。フランス軍はB火薬のために専用の弾薬とルベルM1886ライフルという銃を開発した。

1887年にイギリスでアルフレッド・ノーベルは、バリスタイト英語版と呼ばれている無煙火薬を開発した。しかし、これはコルダイトとそっくりであったため、特許侵害について長い法廷闘争が起こった。

1890年に米国で無煙火薬の特許がハドソン・マクシムによって取得された。

2007年になるとヘキサニトロヘキサアザイソウルチタンベースの無煙火薬が登場した。これは同じ体積で従来のニトロセルロースベースの物よりも30%近くも威力が高く、発砲煙や閃光も小さくなり、大幅に性能が向上している。これにより従来よりも薬莢部分の小さい弾薬が開発されている。

無煙火薬の種類