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湯川相互作用(ゆかわそうごさよう、英語:Yukawa interaction)とは、湯川秀樹により導入された、素粒子物理学におけるスカラー場φとディラック場Ψの間の以下の形の相互作用のことである。
- (スカラー) or (擬スカラー).
湯川相互作用は、核子(フェルミ粒子)の間に働くパイ中間子(擬スカラー)により媒介される核力の記述に用いることが出来る。また、標準模型においてクォークや電子(これらは質量ゼロの粒子として導入する)とヒッグス場の間の相互作用の記述にも用いられる。自発的対称性の破れでヒッグス場が真空期待値を持つことにより、クォークや電子は真空期待値に比例した質量を獲得する。
作用
ディラック場ψと相互作用するスカラー場φの作用は、
である(積分は d 次元、通常は4次元)。スカラー場のラグランジアンは以下のように与えられる。
- .
ここで はスカラー場の自己相互作用である。質量μを持った自由なスカラー場の場合、 となる。(くりこみ可能な)自己相互作用を持つ場合は となる(λは相互作用の強さ)。
自由なディラック場のラグランジアンは以下のように与えられる(m はフェルミオンの質量で正の実数)。
湯川相互作用項は、スカラー場の場合は、
で与えられ(g は結合定数)、擬スカラー場の場合は
で与えられる。これらを全てまとめると以下のようになる。
古典的ポテンシャル
2つのフェルミオンが、質量μのスカラー場を通じて相互作用すると、2つのフェルミオンの間には、以下のような湯川ポテンシャル
が生じる。これはクーロン力と符号、指数関数部分の他は似た形となっている。マイナスの符号により、全ての粒子の間に湯川相互作用は引力となる。これは、スカラー場がスピン 0 であること、偶数スピンの粒子によって媒介される力は常に引力となることで説明される。また、指数関数部分の存在により、相互作用の到達距離が有限となり、遠く離れた粒子同士はほとんど相互作用しなくなる。
自発的対称性の破れ
スカラー場のポテンシャル が で最小値 を持つとする。例えば、 というポテンシャルで、, のとき、このようなことが起こる。このとき、ラグランジアンの対称性は自発的に破れる。このときのゼロでない値 を の真空期待値と呼ぶ。標準模型では、この真空期待値がフェルミオンの質量に反映される。質量項を示すために、作用を を用いて書き換える。すると、湯川相互作用項には、
という項が含まれる。 g と は定数であるため、この項は質量項と見なすことができ、フェルミオンは質量 を持つ。これが標準模型において、自発的対称性の破れを通じてフェルミオンが質量を獲得する機構である。 はヒッグス場として知られる。
関連項目
参考文献
- Claude Itzykson and Jean-Bernard Zuber, Quantum Field Theory, (1980) McGraw-Hill Book Co. New York ISBN 0-07-032071-3
- James D. Bjorken and Sidney D. Drell, Relativistic Quantum Mechanics (1964) McGraw-Hill Book Co. New York ISBN 0-07-232002-8
- Michael E. Peskin and Daniel V. Schroeder, An Introduction to Quantum Field Theory (1995), Addison-Wesley Publishing Company, ISBN 0-201-50397-2