形而上学 (アリストテレス)

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形而上学』(けいじじょうがく、古希: Μεταφυσικά: Metaphysica: Metaphysics)とは古代ギリシアの哲学者アリストテレスによる形而上学の古典的な研究である。

原題は『自然学的なるものの後に来るもの』、『自然学諸書の後に来る書』の意であった。

内容

アリストテレスはマケドニア宮廷の侍医の家庭に生まれ、アテナイに移ってプラトンアカデメイアで学んだ。本書『形而上学』はもともと未刊行の論文や手稿がアリストテレスの死後に編纂されたものであり、その構成は統一的なものではない。14巻から成り立っており、第一哲学が一貫した主題となっている。自然学や政治学、数学ではそれぞれ個別の領域における存在に限定して探求するが、第一哲学では一切の存在を抽象的に検討する。そのことによってあらゆる存在を含めた世界の原理を明らかにすることが可能となる。このような問題意識の下でアリストテレスは存在についての研究を試みる。

四つの原因

純粋に物事の真理を知ろうとする学問の一般的な課題とは、物事の原因の認識であり、第一哲学においても課題は第一原因の究明であると考える。そこで原因は質量因、形相因、目的因、始動因の四種類に区分される。この四つの原因から物事の存在や変化が説明できないのでは、それは最高の知恵しているとは言えないとアリストテレスは主張する。またアリストテレスは最高の知恵が純粋に高潔であり、神聖であるという特徴を述べている。アリストテレスの見解によれば、タレスデモクリトスピタゴラスヘラクレイトス、プラトンなどの哲学者がみな四種類の原因について包括的な説明を試みており、かつ四種類の原因以外の原因があげられなかったことから、アリストテレスは自説の立証を試みる。

哲学の課題

アリストテレスは哲学の問題集を作成しており、形而上学の性質に関する問題と形而上学の対象に関する問題がどのようなものであるかを述べている。第一の問題とは存在を存在として研究することにより、その原理を探求することが形而上学によって可能であるのかという問題である。これはアリストテレスが述べる第一哲学が数学の公理や論理学の矛盾などの他の学問における根本的な前提の規則を扱うことが可能であるかどうかという問題である。第二の問題とは第一哲学で想定する存在を、個別的な実体とするのか、もしくは普遍的な実体とするのかという問題である。ここで定められた問題についてアリストテレスは後に考察を加えている。加えて本書では原理、要素、実在、必然、実体、差異、対立、状態などの形而上学において重要とされる諸概念について個別に検討がなされている。ここは執筆段階では本書の他の記事とは別に作成された形而上学における専門用語の辞典的な内容が記されている。

文献

  • 出隆訳 『アリストテレス 形而上学』 岩波文庫全2巻、岩波書店「全集12巻」、 ISBN 4003360435

外部リンク