少女海賊ユーリ

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少女海賊ユーリ』(しょうじょかいぞくユーリ)はみおちづる作、永盛綾子作画の小学生4年生-5年生向きの長編小説。

童心社フォア文庫から全10巻出版された。シリーズ累計は25万部[1]

時光石

時間を支配する光の粒子・時光を結晶に閉じ込め、固めることによって作られる青、緑、赤の石。未来世界でユーリと彼女の父が作った。それらは全て合わされば、どんなものにも使え、永久に無くならないエネルギーが得られるはずだった。

青の時光石(ブルー・ストーン)
ユーリが所有。対象の時を止めたり、戻したりできるマイナスの時光波を放つ。
緑の時光石(グリーン・ストーン)
ボルドが所有。対象の時を早めるプラスの時光波を放ち、その光の中に入ると空間を自在に移動(ワープ)して別の場所へ行く事ができる。
赤の時光石(レッド・ストーン)
二つの時光石の力をコントロールし、その力を増幅させる力を持つ。エネルギーを求めた人間達によって起きた未来世界の争いの中で大爆発し、世界の半分を吹き飛ばした。
ザリア石
空から降ってきた隕石で、時光石の原石。光を当てると、青、赤、緑の時光波を出し、時光石はそれを結晶に閉じ込めて作られる。
加工されたザリア石は、月の光に透かすとすこし先の未来や、違う場所の様子を映し出す。第2巻では万年嵐の影響で、月も出ていないのに未来が見えかけた。

舞台

リーデニア海
物語の舞台となる大海。ライデンバードという鳥が語り継がれており、ユーラスティア号の海賊旗にも描かれている。

リーデニア海の王国・島

オーデニア国
リーデニア海一の軍事力を持つ王国。国王であるローデンは、領土を広げる為に数々の島を焼き払い、国民には重税を課していた。
ラドニア島
大船団を誇る、小さいながらも豊かだった島。オーデニア国によって征服された。
オラキス島
かつてユーラスティア号が悪者から助け、それ以来訪れる度に花火を上げるほど歓迎してくれる、「レッドクリスタル」という珍しい宝石の原産地。レッドクリスタルは、ザリア石と良く似た物質らしい。
ハート諸島
豊かな小さい島が幾つも連なってネックレスのようになっていることから「海の宝石」と言われている、ガラス職人の諸国。その中でもベルゼ島は随一のガラス職人が育っている。
海賊波止場
オウム諸島にある、海賊専用の波止場。オーデニアの力も及ばぬほどの温かい人間が暮らしている。
ここでの掟は「けんかをするな」の一つだけで、仲の悪い海賊の船長同士が席を並べて食事をするのはここだけである。
氷の王国
リーデニア海の北方に位置する、「万年氷」の上にできた王国。

キャラクター

各巻に必ず登場しているキャラクター

ユーリ
主人公。見た目は15、6歳程の青い目の美少女だが、「弱きを助け、強きを挫く」伝説の海賊船・ユーラスティア号の船長。小麦色の長い髪をサイドテールの三つ編みにし、赤を基調とした服に青いマントを合わせて着ている風貌が特徴。リーデニア海では直接会ったことや見たことがなくても、その名を知らない者はいない。の名手で、その腕前と航海術はリーデニア海一と言われている。
その正体は、未来世界に暮らしていた天才科学者。13歳で大学を卒業した後、天才と言われた科学者の父親と、幼馴染のカイルと共に時光石の研究を始めた。だが、大爆発によって世界の半分が吹き飛び、その時に生じた時空の亀裂に吸い込まれて千年過去のリーデニア海に落ちてきた。父は時光石の大爆発に巻き込まれて命を落とし、母はユーリを生んですぐに他界しているため記憶にない。「どんなときもあきらめてはいけない」という父の口癖を信条にしている。
リーデニア海に落ちてきたばかりの頃は時光石を生み出したことに自分を責め続けて途方に暮れていたが、助けられた海賊船の船長・ドランの励ましで後悔するよりもこれからの事を考え、二度と醜い争いが起きないよう時光石を壊す方法を探し求めて二百年以上も自分の時を止めて旅をしていた(第1巻のプロローグより、二百二年と五ヶ月と十日)。
時空の亀裂に吸い込まれた際に背中に傷を負い、握り締めていた青の時光石(ブルー・ストーン)の力を使う度に傷口は開いていき、最後にはユーリ自身の身体を八つ裂きにしてしまうという。
終盤に仲間たちに心配をかけないようにゴアと二人だけでさらわれたノエルを助ける為に宿敵である黒マントの男・ボルドと戦おうとしたが、洗脳されたゴアによって連れ去られ、最終巻では記憶喪失になっていた。憎んでいたボルドの心の痛みを思い知り、正気に戻った時にはこれまでの事を許し合い共に生きたいと思った。全てが終わった後、皆に見送られてカイル、ゴアと共に未来世界へ帰る。
ゴア
ユーリの頭脳を悪用しようとする者からユーリを護る為に、ユーリの父が作らせた護衛ロボットの大男。ユーリと共にリーデニア海に落ちてきた。
10トン力のパワーと、指の先に小型ロケット弾、腕にはミサイルが仕込まれており、目と耳はロボットであるだけに超倍率。ほかに赤外線探査装置、Ⅹ線透視装置、超高周波レーダーといった機能も搭載されており、金属製の皮膚はレーザー光線をも跳ね返す。人工頭脳は常にユーリを護るようにインプットされている。また、ユーラスティア号の船長室にある、ユーリの秘密の研究室のコンピューターの反応盤に手を置いて瞬きすると、何万桁もの計算を一瞬でこなしてデータを出す事ができる。
前述の洗脳が最終巻でユーリによって解かれ、暴走した時空間調節器(フィールドコントロール)を止める為に自らを犠牲にした。機能停止の間際、「心」を知り、ユーリを護りきれて幸せだったと言い残した。
ノエル(本名:ノエリア)
ラドニア島の姫君。12歳。ショートヘアに青い目。マリンルック風の服を着ている。オーデニア国との戦いの時、家臣グリフィスの裏切りによって、故郷と、城主である「海の勇者」と呼ばれた父と母を失う。ラドニアの家宝であるザリア石の指輪を母から託されている。弟のヨハンとは離ればなれだったが、氷の大陸で再会。
ラドニア島の近くのクレタス島をうろついていたところを奴隷商人に捕まり、ピップスに売られそうなところをユーリに救われた。最初は魔女ばばの家に預けられるはずだったが、海賊波止場でオーデニア軍を率いるボルドとの騒動にあい、ユーリと時光石の秘密を知った。その後、そこに留まっていればまたオーデニアが狙ってくると考えた魔女ばばに促されたことと、指輪の裏切りの凶兆を信じず、最後まで人を信じた父と同じように、過去や未来のことよりも現在のユーリ自身のことを信じ、ユーラスティア号の海賊見習いになる。
平和だった頃にグリフィスから教えられた剣が得意。男勝りで負けん気が強いが、心優しい性格。
物語の終盤で「まことの幸せ」という言葉を書き残したユーリの先祖であることが判明する。
エピローグで美しい女性に成長。即位したレニーと結ばれる。授かった女の子にユーリと名づけ、ユーラスティア号の新しい船長となり、新たなる伝説を、未来へ帰ったユーリに指輪と一緒に伝えることを誓う。
レニー(本名:ロレニオ)
5歳からユーラスティア号に乗っている海賊見習いの少年。12歳。サラサラで色の薄い金髪に、緑色の目。顔はソバカスだらけで頭にバンダナを巻いている。食いしん坊で好奇心旺盛。マスト登りは仲間の誰にも負けず、勉強よりも工作や遊ぶことが大好きで普段は自由奔放だが、いざとなると芯の強さを見せる。片付けは苦手で、自室の机は散らかり放題。
虹の短剣を自分を五歳まで育てた乳母に持たされたが、その意味も由縁も知らなかった。ローデンの死後にオーデニア国の先代の王・ラムデンの遺児だと知る。
エピローグでは王様に即位してもユーラスティア号に乗るとすぐに昔に戻ってしまい、マスト登りでビノと張り合って同着だった。
ザーナン(本名:ラディ)
イッカククジラという動物の角で作られた、ケルンという縦笛の名手である海賊見習いの少年。黒髪に黒ダイヤのような目で、中性的な顔立ち。耳が良く、泳ぎも得意。
実は、リーウィー族の長・ラドの息子だったが、幼い頃に、ローデン王が差し向けたオーデニア軍に襲撃され、ラドは一族を護る為に胸に槍を突き立てられて命を落とし、その時のショックで言葉を失った。母親・ティラにより海草に包まれ、ラドのケルンと共に海に流された。飢えと渇きで苦しんでいる中、ユーリに拾われてそのまま仲間に加わった。
後に母と再会。その後、終盤近くになってから少しずつ言葉を話せるようになっていく。
エピローグでは、ユーラスティア号を降り、リーウィー族として海竜と遊びに来ていた。また、宝島のサラに告白する描写があるが、実際はどうなったかは不明。

海賊船ユーラスティア号の仲間

以下のメンバーの他にも、たくさんの乗組員がいることが挿絵からうかがえる。

カラザン
ユーラスティア号の一番奥の船室に引き篭っている、百一歳を過ぎた老海賊。「予言者カラザン」と呼ばれている。
自室はきついにおいの香が焚き込められており、足は萎えていて車椅子に乗り、両目は白く濁っていてものを見ることはできないが、どこか違う場所を見ているような予言は外れた事が無い。しかし、その予言の大抵は不吉なものばかり。頼み事がある時は鈴を鳴らして人を呼ぶ。
頭の中にある、ユーラスティア号の100年以上の航海の記録を書き留めることが仕事。目が見えないので、硬いペンで力強く文字を書き、それを紙の裏から指でなぞって読む。
ガラナン
片目にアイパッチをしている、銃の名手。その腕前は、飛んでいるハエでさえ撃ち落とす程に一流。
デミル 
頭の禿げ上がった発明家。だが、その発明品は成功よりも失敗のほうが遥かに多いといわれている。非番の時は船内の実験室で発明をしているが、他のメンバーから迷惑がられている。掛けている眼鏡は様々な工具が仕込んであり、二つのレンズを合わせて太陽の光をあつめ、火を起こす事もできるらしい。
ロメス
ユーラスティア号の優秀な操舵手であり、剣術の達人でもある。髪が長く、顔面に傷跡がある。
ドミノス
大きなシルクハットをかぶった手品師
風が無くて退屈にしていたときに、ユーリが気合を入れようとハンカチに包まれた金貨を、同じハンカチで中身を入れ替えた偽物にすり替えたり、さまよえる宝島の光のトリックを見破ったりと、手品師として優秀な技術を持つ。
ビノ
八の字型の口髭を生やしている、の名人。
マルロー
鼻の赤い船医。腕はいいがかなりの大酒飲みで、いつも治療の前に味がひどく悪いが消毒薬や気付け薬に愛用しているウイスキーを一口飲む。
ポッポ
元は王宮の料理人だった、ユーラスティア号のコック。愛用している包丁セットは、ロメスの剣よりも切れ味がいいのではないかと言われている。
ガーグ
心の優しい怪力の大男。白ヤギのメイヤを妹のように大事にしている。ユーラスティア号の海賊が十人がかりでもなかなか動かないのロープを一人で引いたり、オーデニアの襲撃で荒らされたベルゼ島の復興に、二十人分働いた。
アッカ
ザーナンの母・ティラの白いイルカ。海竜の子供を育てられる海を探す為、海に不慣れなザーナンをユーラスティア号に預けたティラが、アザラシの毛皮と一緒に自分の代わりに置いて行った。ザーナンとは心と心の絆で結ばれている。
ヨハン
ノエルの弟。金髪のかわいい男の子。ラドニア島が征服された後、ある人物と共にオーデニアの目を盗んで逃げ回っていたが、悪者に北端の氷の大陸へ連れて行かれ、そこでノエルと再会。ユーラスティア号の仲間になった。無邪気で純粋な性格で誰にでも笑顔で話しかける。特にレニーとは兄弟並みに仲がよく、他のメンバーからも可愛がられている。

作中のデミル発明品

のびる手
木とばねで出来ているマジックハンド。
ガラナンが打ち落とした矢を掴んだ時、伸びきって細くなり、矢と金貨の重さに耐え切れず折れてしまった。
へんてこなたいこ
万年嵐が治まった島で行われたガイとクリナの結婚式でザーナンのケルンと演奏して二人を祝福した。
10連発パチンコ
海竜の海にやって来たオーデニア海軍と戦う為に使用。
重いものらくらく持ち上げ機
クレーンの様な形で、最初、ユーラスティア号の帆を持ち上げようとしたが、使い方を間違えて帆を破いてしまった。オーデニア国に荒らされたハート諸島のベルゼ島の復興の為に大活躍した。
あっというまに帆の修理機
「重いものらくらく持ち上げ機」で破いてしまった帆を直そうとしたが、これ以上余計な仕事が増えるのが嫌だったガラナンによって使用を止められた。
海中めがね
長いパイプを覗いて海の中を見る道具。船から落ちたノエルとレニーを捜すため使用。
霧もくもく機
もとは霧を晴らす為に作った「霧はらし機」の失敗作で、逆に人工の霧を発生させる大きな箱。子供を北の大陸に売りつけていると噂のあるピップスを罠に嵌める為に使用。
なんでもすべーる
木材を切り出して、特殊なワックスで磨いたの足の部分。氷の王国に上陸した後、ボートの底に取り付けて使用。
いつでもひかーる
口のところが曲がりくねった形のビンに入ったエッセンスを良く振って栓を抜くと、口から火が灯り、明るく照らす。氷の王国で、洞窟を進む為に使用。

各巻のあらすじ、並びに登場している主要キャラクター

8巻以降には新しいキャラクターは登場しないので、あらすじのみを記載する。

第1巻:なぞの時光石

追い詰められたノエルの前に現れた伝説の海賊船ユーラスティア号。ノエルが出会ったその船長には不思議な力が……。ユーリが旅を続ける訳とは?

ボルド
未来世界でユーリたちと共に時光石の研究をしていた科学者。
大学のあらゆる分野を全て一番の成績で通過した秀才で、時光石の研究論文はボルドが書いたもの。ユーリたちに作らせ、政府に知らせて争いを誘発させた張本人。爆発に巻き込まれて全身に大火傷を負いながらも、緑の時光石(グリーン・ストーン)を手にしてリーデニア海に落ちて来た。
黒いマントに身を包み、リーデニア海中で様々な卑怯な方法を使って赤の時光石(レッド・ストーン)を作り、ユーリの青の時光石(ブルー・ストーン)を奪い、全ての時間・時空を支配しようとしていた。物語の終盤、ユーリが雲つき山で作った赤の時光石(レッド・ストーン)を奪い、ローデン王を死に追いやった。
彼が卑怯な手段を取り続けていたのは、過去に受けてきた仕打ちからだと終盤に判明する。友達だと思っていた相手に盗みの濡れ衣を着せられ、両親にも見放され、いじめられて育った少年のボルドは悔しさから知識のみを信じるようになり図書館の本を丸暗記するほど読み尽くした。そして一番になった時、周りには誰もいなくなり、心を閉ざしてしまった。そんな時、大学卒業後に訪れた研究所でユーリと出会い、自分と屈託無く接する彼女となら共に生きて行けると思い変わろうとしたが、あるときユーリが自分にも見せたことの無い笑顔でカイルと話しているところを目撃し、その嫉妬と憎しみから再び心を閉ざした。
最終巻で、憎み合っていたユーリが記憶喪失になったために偽の記憶を植えつけてパートナーにしようと考えて気遣うようになり、記憶が戻った後、世界を統べる力を前にして自分が一番求めていたのはそんな力を得ることではなく、誰かに認めて欲しかっただけでその差し伸べる手を払いのけていたのは自分だったということに気付き、ユーリと和解して共に手を取り合って生きて行きたいと思ったが、副官の裏切りで暴走した時空間調節器(フィールドコントロール)を止める為に燃え盛るコクピットに乗り込み、炎の中で開いた時空の亀裂に消えた。三つの時光石はその際に砕け散った。
ローデン
オーデニア国・第19代目の国王。野心が強く、国民に重い税金をかけたり、永遠に王である為に不老不死を得ようと人魚狩りをしたり、海竜の心臓を獲って来るように言った。また、不老不死の噂があるユーリを捕まえて、その秘密を聞き出そうと考えていた。
後に将軍になっていたボルドにより国を追われて「ロード」と名乗り、オーデニア国で物資調達していたユーラスティア号に乗り込んで国を離れる。その後雲つき山の山頂にあった、クリスタル・コンバートマシーンの光を浴びてクリスタルとなり、クリスタル化した山の崩壊に巻き込まれた。クリスタルになる直前、今までに犯した自分の罪深さを思い知り、虹の短剣を持っていたレニーを兄王ラムデンの遺児と悟ってオーデニア国を譲り渡した。その際、彼は誰にも見せたことのない笑顔であった。
ラムデン
描写は第8巻のオーデニア王家継承図。
オーデニア国・第18代目の国王。故人。武芸に長け、王様ぶらない慈悲深く優しい性格で両親や周りの人から絶大な支持を得ていたが、そのことをいつも比べられて妬んでいたローデンにより、妻を亡くしたすぐ後にワインに毒を盛られて暗殺された。
レノーラ
描写は第8巻のオーデニア王家継承図。
ラムデンの妻。故人。大臣の娘で、ラムデンと愛し合って結婚したが、世継ぎの王子の難産で死亡。
タットン
オーデニア海軍を無敵艦隊に育て上げた、歴戦の勇士。
亡き先代の国王、ラムデンに心からの忠誠を誓っていた。ローデンの行いが良い事と思っていないが、立場上逆らえずにいた。
ユーリと初めて出会った時、ラムデンと同じ理想に心を動かされ、海竜が沈んだ後、国に帰ってローデンに進言したが、反逆と見なされて投獄されてしまった。
中盤にレノーラの乳母、クロエから死産と思っていた王子が生きていると聞き脱走。「ダルトン」と名前を変えて船を探し回り、ユーラスティア号のレニーが王子だと悟る。
ローデンの死後、レニーにその場で自分が指揮する他の兵士たちと共に永遠の忠誠を誓った。
ピップス
ローデンの代にのし上がったオーデニア国の大商人。でっぷりと太った、金の為ならばどんな汚い商売にも手を染めるあくどい男。
かつて奴隷売買をユーリに制裁され、二度としないと誓って命は助けられていたが、再び行い、もう一度誓ってその証に口髭を剣でそぎ落とされた。
他に、海竜の心臓の懸賞金のうちの一部の金を自分のものにしようとした企みがタットンにばれたり、氷の大陸の宝石・氷真珠と、幼い金髪の男の子を交換したりした。
魔女ばば
本名は不明。海賊波止場に暮らす呪い師の老婆。リーデニア海でユーリの秘密を知る人物の一人。
始めてユーリと出会ったのは10歳の時で、以来七十年の長い付き合いがあり、ユーリが連れてきた身寄りのない子供を引き取って大事に育てている。
ユーリの背中の傷を完全に治すことはできないが、進行を弱める塗り薬を作れる。当時は魔女ばばの師匠が薬を作っていた。
最終巻では、連れ去られたユーリの背中の傷を治す目的で、ボルドにさらわれた。
ルダ
魔女ばばの家で暮らす幼い巻き毛の男の子。無邪気で、いつもユーリのひざの上を占領してしまう。
レナ
魔女ばばの家で暮らす女の子。人形やルダの服を作った。
セディ
幼い頃に戦争で故郷と家族を失い、焼け野原で一人泣いているところをユーリに救われた少年。その後、海賊波止場の魔女ばばのもとで大きくなり、初めての魔女ばばの家での暮らしに不安を抱いていた時にユーリからもらったガラス球の星のような光の美しさに見入り、元気付けられたことから自分も人を幸せにできるような作品を作りたいと思うようになり、ハート諸島・ベルゼ島のガラス職人に弟子入りした。初めて作ったガラス細工を、魔女ばばと、彼女のもとで一緒に育った家族、そしてユーリに送る。
将軍となったボルドの命令でハート諸島に襲撃してきたオーデニア軍を相手に、ユーリ、ノエルと共に戦った。

第2巻:時のとまった島

愛する人のため、何度難破しても西の海へとむかう老人。ユーリたちは老人とともに恐ろしい嵐の中へ。その先で待っていた偽のユーラスティア号の正体は!?

ガイ
自分の結婚式の服を買う為に島の外へ出て、その後に生じた万年嵐の為に故郷に50年も帰れずにいた船乗り。他人から変人呼ばわりされてもなお、故郷とそこに残してきた婚約者の事を一途に思い続けていた。
ユーラスティア号に助けられて嵐を抜け、島でレッドクリスタルを使って赤の時光石(レッド・ストーン)の開発をしていたボルドの緑の時光石(グリーン・ストーン)の光をまともに浴びて死にかけたが、ユーリの青の時光石(ブルー・ストーン)の力でかつての青年の姿に戻って一命を取り留め、クリナと結婚した。
クリナ
ユーリとよく似た容姿の女性。違いは緑色の目と泣きぼくろ。ガイの婚約者。
万年嵐で時が止まった島を元に戻す為、ボルドに言われて偽のユーラスティア号で島の外へ行き、オラキス島のレッドクリスタルを奪った。最後にはボルドの行いに我慢ができなくなり、抵抗しようとした。
カイル
初登場時は声のみ。
未来世界でユーリとユーリの父と共に時光石の研究をしていた科学者の青年。切れ長のエメラルド色の目が特徴。
氷の大陸でユーリの青の時光石(ブルー・ストーン)とノエルのザリア石の指輪が合わさって力を増した時に起きた時空のトンネルからトリップし、爆発の後ユーリの父が握り締めていた赤の時光石(レッド・ストーン)の欠片を渡し、その後に爆発から3年と経っていない未来世界から、白いマントに身を包んでリーデニア海にやって来て、ボルドに攫われてラドニア島に監禁されたノエルの援護をする。最終巻でユーリやゴアと共に未来世界へ帰った。

第3巻:海竜のなみだ

ザーナンがまっすぐに見つめるのは、怪物が棲み、人魚が船を難破させるという恐ろしい海竜の海。そこで、ユーリたちはザーナンの過去を知ることに……。

オーガム
百人の手下を抱える、「あばれドクロ号」の船長である「あばれ海賊」。
海賊波止場でノエルと言い合いになっていたところ、ユーリにズボンのベルトを剣で切られ、凛としたユーリの立ち振る舞いと可憐さから一目惚れした。海竜の心臓を取ろうとして刺激し、船を沈められてしまう。その後、海竜を護っていたティラから命の大事さを教えられ、反省する。
後に母親とともに登場。小さなボートの「あばれドクロ二世号」で宝島を探しに行く。
ティラ
海の一族・リーウィー族の現在の族長。海草の服をまとった美女。
オーデニアの人魚狩りで首筋を槍で突かれるが海深く潜って生き延び、夫であるラドの死後、リーウィー族の長を継ぎ、海竜の心臓を狙って「魔の海域」にやって来た船から海竜を護る為にケルンの音色と美しい歌声で船を誘い、岩にぶつけて沈めていた。ユーラスティア号が魔の海域にやって来た時に息子のザーナンと再会した(その時は本名の「ラディ」と呼んでいた)。オーデニア海軍との戦いの後、海に不慣れなザーナンをユーラスティア号に預け、海竜の子供を育てられる海を探しに旅に出た。
最終巻では成長した海竜と、リーウィー族と共にイルカを使ってボルドに連れ去られたユーリの行方を探し、その時は「ザーナン」と呼んだ。
シスル・パンナ
海に落ちた巨大なザリア石の隕石の時光波を浴びながら推定1万年の時を生きた太古の恐竜・ディノプロノスリュウの生き残り。リーデニア海では伝説の海竜と言われている。
名前の意味は「偉大な姉妹」。リーウィー族と共に暮らし、護られながら卵を温めていたが、心臓を狙って来たオーデニア海軍により砲撃され、生まれた海竜の子供に口付けをして海に沈んだ。

第4巻:天使のいのり

「《光の魔術師》は連れ去られる!」カラザンの予言に導かれて、ユーリたちはハート諸島へ。そこには、かつてユーリが助けた少年セディがいるはずだったが……。

ゲルト
ハート諸島・ベルゼ島随一の「光の魔術師」と言われているガラス職人。セディの師匠。
彼が作るガラス細工のガラスカットは一流で、セディがユーリを模って作ったガラス像をまるで光で出来ているかのように美しく仕上げたり、オーデニアが荒らした島の惨状を見て故郷を思い出し、動転したノエルを元気付けようとセディがあげたガラスの白鳥は、光を当てると、その中に光の白鳥が現れる。そのガラスカットの腕前から、時光を結晶の中に閉じ込めることを企んでいたボルドに捕まり、巨大なレッドクリスタルの球にカットを施し、その中に一生に一つの傑作である「光の天使」を生み出した。
ボルドとの戦いの後、剣を持って戦ったセディに、かつて自分が同じように剣を持って戦い、大切な家族を亡くした経験を話し、二度と剣を使わないでほしいと言い諌める。腕にはその時に負った火傷の痕がある。

第5巻:黒いゆうれい船

200年以上も前の古い航海日誌。そこには、ユーリがゴアといっしょに未来世界から落ちてきたときのことが書かれていた。驚くノエルの前にゆうれい船が……!?

ドラン
ユーリとゴアがリーデニア海に落ちてきた時に助けた、二十五、六歳ぐらいの、海賊船「エレノア号」の船長。当時、剣の腕と海の知識はリーデニア海一といわれていた。
無実の殺人罪で投獄され、しばり首になるはずだったが脱走し、潜り込んだ海賊船の船長の信頼を買って海賊の一員になり、船長の死後、その後を受け継いだ。
その後、恋人のエレノアが人買いに売られたという噂を聞いて各地を探し回ったが、ある時エレノアが最後に乗せられた奴隷船ごと嵐の海に沈んだと知った。その日から、元々陽気だった感情を悲しみで封じ込め、船を真っ黒に塗りたくり、リーデニア海中をまるで幽霊船のように彷徨ってはエレノアを苦しめた者を皆殺しにしていた。
未来世界から落ちたばかりの頃のユーリに自分を重ねて励まし、立ち直らせたことで自分自身を立ち直らせ、ユーリをエレノア号の仲間にして剣と航海術を教える。
ユーリの時光石の影響で百三十年以上の長い時を生き、その人生の中で病に倒れ、最後の一年を海賊見習いの少年だったカラザンに看病された。ユーリのユーラスティア号はドランからの贈り物。自分の死後、役目を終えるエレノア号と共に海に沈めてほしいと日誌に書き残した。
ヌーボ
ドランの幼馴染で、エレノア号の海賊の一人。
背中が曲がっているためにいじめられていたが、ドランに助けられているため、彼に絶対の信頼を持っている。酒を盗んだ罪でドランと同じ監獄に捕まったが、共に脱走し、その後も海賊として付き合っていた。
ゴレス
エレノア号の船長代理。
力に物を言わせてすき放題に海賊たちをこき使い、ドランから船長の座を奪おうとしていたが、ノエルとレニーを助けにやって来た、マントで体を覆ったユーリを悪霊と思って怖じ気付き、海に飛び込む。その後、オウム諸島の港でエレノア号から降ろされた。

第6巻:さまよえる宝島

すべてが黄金でできているという伝説の宝島。はたしてその島はほんとうにあるのか?ユーリは時光石を壊す方法をもとめて、オーガムたちとともに出発するが……。

アマンダ
オーガムの母親。豪快で気が強く、オーガムも頭が上がらない。実家では農家を営む。野菜作りにはとても熱心で、栄養豊富な宝島の土をたくさん持って帰った。
ディー
「氷のディー」と言われている、海賊船「海の毒ヘビ号」の冷酷非道な船長。その非情さは身内さえも奴隷に売り飛ばしたほど。
海賊波止場でノエルと言い合っているところをオーガムに抑えられた。さまよえる宝島の財宝を我が物にしようと企んでいたが、島を探している最中、強引に突破しようと突っ込んだ渦潮に飲み込まれて船は粉々になった。しかし、しぶとく生き残り宝島まで流れ着くが、財宝がルナ・リリーだと知って逆上し、花を散らしたためにサルに首筋を噛み切られて死にかけたが、サラが傷口に注いだルナ・リリーのしずくで一命を取り留め、サラの言葉で改心する。
サラ
さまよえる宝島に動物たちと共に暮らす、心優しく物静かな少女。ハープの名手。
昔、重い持病を治す為に父と共に宝島に来たとき、病気が悪化してルナ・リリーのしずくを父に飲まされ、病気が治って元気になり一命を取り留めるが、胸を病んでいた父は亡くなった。その後、ルナ・リリーのしずくの力の為に常人より成長が遅れ、エレノアを探して宝島に来たドランとも出会っていた。

第7巻:指輪のちかい

金髪の子どもがあつめられているという氷の島の噂を聞き、ノエルは行方不明の弟、ヨハンを思う。その島でユーリたちが出会ったのは、なぞの老人、グリンだった。

キリナ
北の果ての氷の王国を治める女王。
夫を早くに亡くし、その後すぐに自分の命より大切な一人息子のヤルシュを幼いうちに事故で失い、立て続けの悲しみと絶望から現実を受け入れられずに乱心。全国でヤルシュに似た金髪で四、五歳ぐらいの男の子を島の宝である氷真珠と交換していた。終盤で自分の罪とヤルシュの死を受け入れ、氷真珠の取りすぎでやせてしまった島の復興に力を尽くす。
ギール
なめくじが這うような声で話す年老いた呪い師。
ヤルシュが生きていて行方不明になっていると乱心しているキリナに付け入り、裏では南方の商人から子供を買った代金を横流ししていた。城の崩壊時、一番に逃げ出したが、氷の割れ目に落ちかけているところを兵士に発見され、罪滅ぼしにヒカリシンジュガイを育て、氷真珠をつくる仕事をさせられることになった。
ロッシュ
氷の王国の護衛隊長。
誰よりも近くでヤルシュの死を目撃し、ギールの話術に惑わされているキリナに何度も進言したが受け入れられなかった。
グリン
氷の王国の護衛隊の兵士。見た目は八十歳くらいの老人だが、犬橇の扱いと剣の腕に長けている。ロッシュに進言して自らユーリたちを王宮へ連れて行った。
正体は、かつてノエルたち一家を裏切り、ラドニアの滅亡を招いた家臣グリフィス。彼は当時、事故で最愛の妻と息子を亡くし、その悲しみが癒える前に現れたボルドに「ラドニアの大船団を全て沈めれば、妻と子供を生き返らせてやる」と言われ、何日も苦しみ悩んだ末に、言われた通りにラドニアが誇る大船団全てに火薬を仕掛けて一隻残らず沈めた。なす術が無くなって陸に上がったノエルの父に降伏を呼びかけると、ノエルの父は裏切ったグリフィスを許し、城に残った妻、ノエル、ヨハンのことを託して最後まで戦うことを選んだ。城に戻るとノエルの姿は無く、オーデニア兵に深手を負わされて胸を血で赤く染めた、妃がいた。そのときのグリフィスにできることは、ヨハンをつれて逃げることだけだった。戦いの後、ボルドに自分の妻子とノエルたちの両親を生き返らせるよう詰め寄ったが、ボルドは緑の時光石(グリーン・ストーン)でグリフィスを老人にして消えた。その時に初めて自分は利用されただけだったと気付き、取り返しがつかない過ちを犯してしまったことを悔んだ。その後、ヨハンを連れてオーデニアから逃げ廻り、悪者にヨハンと共にさらわれて氷の王国に連れて行かれ、ロッシュの子供をシロクマから助けたことが縁で兵士となった。剣は自前の物を使っている。城の崩壊時、崩れ落ちた瓦礫からヨハンを身を挺して助け、息を引取った。今際の際に、ノエルに今までの経緯を全て話す。遺体は毛皮に包まれて海に葬られた。

第8巻:剣にかがやく星

黒マントの男、ボルドがついに城から王を追い出し、動き出した。一方、ユーリたちの前にはあやしい男が。はたしてユーリはボルドより先に赤の時光石(レッド・ストーン)を作れるのか?

第9巻:流星の歌

赤と緑の時光石を手に入れたボルドは、ユーリをおびきよせるためにノエルを狙う。そこに現れた白いマントの男の正体は?ユーリは青の時光石(ブルー・ストーン)を守れるのか?

第10巻:未来へのつばさ

つれさられたユーリのため、リーデニア海中のなかまたちがあつまった!そのとき、世界を支配しようとするボルドは…。時空をこえたたびの最後にユーリがみたものは?

用語

主に物語の核心に迫る用語を記載。

万年嵐
ある島の火山が大噴火した時、衝撃で時空の亀裂が生じ、50年以上も吹き荒れていた時空嵐。その中には魔物が巣食っていて、嵐を越えようとする船を沈めてしまうとか、中に入った者に幻惑を見せてもとの海に返してしまうと噂がたっていた。
終盤でユーリの活躍によって打ち消された。
リーウィー族
元は陸に暮らしていたが、大地震で島が割れ、海で暮らすようになった民族。老若男女問わず一人ひとりがイルカを所有し、海を母、海の生物は兄弟と見ている。
かつて人魚と間違われて「心臓を食えば不老不死が得られる」という噂の為に人魚狩りにあい、それ以来アザラシの毛皮をかぶって移動するようになった。
虹の短剣
オーデニア国の王位継承の証。虹色の光を放つその刃は柔らかいものが切れず、硬いものしか切れないという不思議なつくりになっている。ゆえに、生き物を傷つけることはできない。
さまよえる宝島
西の海にあると言われる、伝説の島。その島は木も草も何もかもが黄金で出来ていて、若返りの水が流れていると伝えられ、近づくと島が逃げてしまうことから「さまよえる宝島」と呼ばれている。
その島の正体は蜃気楼と同じ光の屈折で見え隠れする土の島で、高ミネラルな地下水が湧き、外の世界には生息していない宝石のような生き物が暮らす島だった。
ルナ・リリー
さまよえる宝島」に月食の後、月が再び現れた夜にしか咲かない花。そのしずくにはどんな怪我・病気も治す強い癒しの力があり、また、老いのスピードを弱める力がある。
ヒカリシンジュガイ
氷の王国のみに生息する生き物。「万年氷」の中に生きる二枚貝
夜になると身体から光を発し、氷を溶かして中の太古のプランクトンの死骸を食べ、氷真珠を作る。
氷真珠
ヒカリシンジュガイが作りだした、氷の王国の宝。
クリスタル・コンバートマシーン
ユーリがリーデニア海に落ちてきた時、「雲つき山」という高い山の山頂に一緒に落ちてきていた、ダチョウの卵のような形をした、どんな物でもクリスタルに変えてしまう装置。未来世界で、時光を閉じ込めた結晶を固めるために使われていた。
オーデニア国では、「なんでもクリスタルに変えてしまう卵」と銘打たれて現代まで伝わり、秘宝とされた。そして、そこへ辿り着くための封印は虹の短剣がなければ開かない。
雲つき山でユーリは赤の時光石(レッド・ストーン)を作るために使った。
時空間調整機(フィールドコントロール)
三つの時光石の力を安定させ、ブラックホールのような空間を作り出し、そこから永久エネルギーを取り出す装置。

単行本

全10巻出版されており、図書館版も発売された。

通常版
  1. なぞの時光石(2001年9月) ISBN 4-494-02760-X 
  2. 時のとまった島(2002年6月) ISBN 4-494-02763-4
  3. 海竜のなみだ(2003年3月) ISBN 4-494-02770-7
  4. 天使のいのり(2004年1月) ISBN 4-494-02773-1
  5. 黒いゆうれい船(2004年6月) ISBN 4-494-02776-6
  6. さまよえる宝島(2004年11月) ISBN 4-494-02789-8
  7. 指輪のちかい(2005年6月) ISBN 4-494-02792-8
  8. 剣にかがやく星(2005年11月) ISBN 4-494-02795-2
  9. 流星の歌(2006年6月) ISBN 4-494-02799-5
  10. 未来へのつばさ(2007年3月) ISBN 978-4-494-02806-1
図書館版
  1. なぞの時光石 ISBN 978-4-494-01352-4
  2. 時のとまった島 ISBN 978-4-494-01353-1
  3. 海竜のなみだ ISBN 978-4-494-01354-8
  4. 天使のいのり ISBN 978-4-494-01355-5
  5. 黒いゆうれい船 ISBN 978-4-494-01356-2
  6. さまよえる宝島 ISBN 978-4-494-01357-9
  7. 指輪のちかい ISBN 978-4-494-01358-6
  8. 剣にかがやく星 ISBN 978-4-494-01359-3
  9. 流星の歌 ISBN 978-4-494-01360-9
  10. 未来へのつばさ ISBN 978-4-494-01361-6

脚注

  1. ^ 人気キャラクター&名作ロングセラー”. 2016年3月4日時点のオリジナルよりアーカイブ。2016年3月6日閲覧。

外部リンク