双頭の悪魔
『双頭の悪魔』(そうとうのあくま)は有栖川有栖が1992年に発表した推理小説。「学生アリスシリーズ」の長編3作目にして作者の代表作である[1]。
解説
本作は東京創元社の「黄金の13[2]」の1作として刊行された。本作を含む「学生アリスシリーズ」はクローズド・サークル物の事件が定番であり、本作では架橋の崩落と土砂崩れにより互いに陸の孤島と化した2つの村が舞台となる。また、同シリーズではエラリー・クイーンの影響を受け、全長編作品にクイーンの「国名シリーズ」に倣(なら)って「読者への挑戦」が挿入されているが、とくに本作においては「読者への挑戦」が3度も挿入されるという、かつてない試みがなされている。
「週刊文春ミステリーベスト10」1992年4位、「このミステリーがすごい! 」1993年6位、「20世紀傑作ミステリーベスト10」19位、「このミステリーがすごい! ベスト・オブ・ベスト」8位、「東西ミステリーベスト100」2012年版国内編22位[3]。
あらすじ
前作『孤島パズル』の事件での傷心により家出して高知県の山奥にある木更村に滞在している有馬麻里亜(マリア)を連れ帰って欲しいと、父親から依頼された英都大学推理小説研究会(EMC[4])のメンバーたち(江神二郎・望月周平・織田光次郎・有栖川有栖(アリス))は木更村に向かう。しかし、村の住人との間で誤解が生じマリアとの面会を拒絶されたため、嵐と闇夜に乗じて村への潜入を決行する。アリスたちは潜入に失敗し隣の夏森村に追い返されるが、運良く潜入に成功した江神はマリアとの再会を果たし、木更村の住人たちとの間の誤解も解け和解する。
ところが翌朝、江神からの電話を受けたアリスたちが木更村に向かったところ、鉄砲水により木更村と夏森村をつなぐ橋が落ち、互いの村が分断されてしまう。さらに夏森村も土砂崩れにより外界との交通が遮断されてしまう。しかも、電話もつながらず互いの状況を把握できない中、木更村と夏森村でそれぞれ殺人事件が発生する。こうして木更村では江神とマリアが、夏森村ではアリスと望月、織田が、それぞれ事件の真相を解明しようと推理を試みる……。
登場人物
- 木更菊乃 -木更村の現当主
- 小野博樹 - 画家
- 鈴木冴子 - 画家
- 八木沢満 - 音楽家
- 小菱静也 - 舞踏家
- 志度晶 - 詩人
- 香西琴絵 - 調香家
- 千原由衣 - 元アイドル歌手
- 前田哲夫 - 造形作家
- 前田哲子 - 造形作家
- 西井悟 - 小説家
- 樋口未智男 - 銅版画家
- 江神二郎 - 英都大学文学部4回生
- 望月周平 - 英都大学経済学部3回生
- 織田光次郎 - 英都大学経済学部3回生
- 有栖川有栖(アリス) - 英都大学法学部2回生
- 有馬麻里亜(マリア) - 英都大学法学部2回生
- 相原直樹 - カメラマン
- 保坂明美 - 看護婦、マリアの友人
- 羽島公彦 - 小学校教諭
- 中尾君平 - 医師
- 室木典生 - 郵便局員
- 沼井- 高知県警警部
- 藤城 - 杉森署警部補