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免疫寛容

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免疫寛容(めんえきかんよう、immune tolerance)とは、特定抗原に対する特異的免疫反応の欠如あるいは抑制状態のことを示し、自己体組織成分に対する免疫無反応性(自己寛容)はこれに由来する。

免疫を担当する細胞であるT細胞は、あらゆる病原体に対応できるよう、抗原に結合する部位(T細胞受容体;TCR)に無数のバリエーションを持った物がランダムに作り出される。ただし、このようにランダムに作られた物の中には自分自身の細胞を異物と見なして攻撃してしまう物が含まれるので、胸腺においてT細胞が成熟する過程で、そのように自己抗原に強く反応するT細胞は死滅させられる。しかし、この選別過程では胸腺で発現している自己抗原を攻撃するT細胞が除外されるのだが、同一個体の細胞であってもある特定の臓器でのみ発現する抗原を持った細胞が存在しており、その抗原は胸腺では発現していないため、胸腺の選別メカニズムではこの特殊な抗原を持った細胞を異物と認識して攻撃するT細胞を排除できない。このような本来は自己なのだがT細胞から見て非自己に見える細胞を攻撃しないようにする仕組みが免疫寛容である。ある特定の条件の元にT細胞がその特殊な自己抗原に結合した場合に免疫寛容が成立する。

牛ウイルス性下痢ウイルスボーダー病ウイルス豚コレラウイルスリンパ球性脈絡髄膜炎ウイルスなどでは胎子期における垂直感染により、病原体に対する免疫寛容が成立することがある。牛ウイルス性下痢ウイルスに対して免疫寛容が成立した動物は重要な感染源となる。

抗原を経口摂取することによりその抗原への免疫寛容を成立させ、アレルギー疾患や自己免疫疾患を抑制させる治療法を経口トレランス、または経口寛容という。飲食物を異物とみなさないのも免疫寛容によるが、免疫システムに異常をきたし、本来は異物とは認識されない飲食物を異物として攻撃するために起こるのが食物アレルギーである。

関連項目

参考文献

  • 大里外誉郎 『医科ウイルス学 改訂第2版』 南江堂 2000年 ISBN 4524214488
  • 山本一彦『アレルギー病学』朝倉書店、2002年、ISBN 4254321975