ロープワーク
ロープワーク(英: ropework)とは、ロープの取扱いおよび用途に応じた結びの技法並びにその体系。ロープワークには、ロープの基本的知識(素材、強度、構造)、ロープの選定法、ロープの管理法、ロープの結び方などが含まれる。もともと英語の"ropework"にある意味は、「縄をなったり、それを補修すること」であり、その上で結び方(ノット)などのロープの取り扱いを含めるものであった。
索端止め
ロープの末端(索端)はほつれが生まれやすく、ロープ損傷の原因となる。これを防ぐためにロープの端を固めることは必須であり、基本のロープワーク。これを索端止め、先端処理、ほつれ止めなどという。
簡単に先端を固める場合はビニールテープなどで巻くことで済ませる事もあるが、接着剤で固める方法や、(合成繊維の場合は)火であぶって融かし固める方法もある。本格的には、糸で縛ったり縄を編み込んだりして処理する。
ビニールテープを使用して行う場合は、切ってからビニールテープを巻くと、奇麗に巻けないか、巻けてもすぐに剥がれ、ほつれを生みだしやすいので、あらかじめロープを必要な長さに切断する際に切断点を中心にしてビニールテープをきつく巻いてから、ビニールテープを巻いた部分の中間を切断することで処理する方法をとると良い。
ノットと基本要素
ノット、すなわち「結び」の発祥は石器時代より以前とされており、その歴史は古い[1]。
すべての結びは掛け(バイト)、巻き(ターン)、しばりの三要素からなる[2]。
多数の結びを集めたノットボードという「実物の見本」があり、これは教育用として用いられるだけでなく、工芸品もしくは屋内装飾品などの観賞用にもなっている。
具体的な結びの種類は「結び目」を参照。
ノットと種類
結びは結節、結合、結着などに分類できる[3]。分類上は同種であっても、船舶や登山などの専門分野では、それぞれ特殊な環境に適した結びが考案されている。基本は、物の固定用途が主なものといえようが、古代インカのキープに代表される結縄による文字や数字の記録および沖縄地方に伝わる藁算に代表される計算などもある。また、ネクタイやリボンのように装飾を目的とする種類もある。
各結びの名称が種類を直接表している場合もあるが、そうでない物もあるので注意が必要(例: Fisherman's bend は名称にbend と入っているが、種類としてはhitch である)。
また、ロープの素材も、各用途にとっての重要な要素となり得る。ロープの素材による分類も参照。
結節
1本の紐の片端、もしくは中間にこぶを作ることを結節(stopper knot)と呼ぶ。紐の脱落防止や、紐を引く際の助けとするための結びである。
結輪
紐で環を作ることを結輪という。紐を杭などにかけたり、ものを吊ったりする際に用いる際に行われる結びである。簡単に作れること、力をかけても環が広がったり狭まったりしないことなどが要求される。
- もやい結び(ボーライン・ノット bowline knot)
- 二重8の字結び(ダブル・フィギュア・エイト・ノット double figure eight knot)
- テグス結び(フィッシャーマンズ・ノット fisherman's knot)
- よろい結び(ハーネス・ループ harness loop)
- 引き解け結び(スリップ・ノット slip knot)
結合
簡易的に紐の継ぎ足しをする際の結びを結合という。また、ものを縛る際にも使われる。
- テグス結び(フィッシャーマンズ・ノット fisherman's knot)
- 蝶結び(ボウ・ノット bow knot)
- 本結び(リーフ・ノット reef knot)
- 中間者結び(バタフライ・ループ Butterfly loop)
結着
物に結び付ける際の結びを結着(hitch)という。
結縮
ロープを短くするときに用いられる結びを結縮という。
結飾
もっぱら装飾に用いられる結び。
縛材
物が動かないように縛りつける際の結びである。力をかければ環を縮めやすいこと、環を縮めたら元に戻りにくいこと、場合によっては簡単にほどけることなどが要求される。
収納
紐の携帯・保存に用いられる結び。
結びの組合せ
- 自動車を牽引する
- 故障した自動車を他の自動車で牽引するための結びとしては、牽引時の強度とともに使用後に容易に解けることも要求される。フックにロープを通し、50cm程の間隔を置いてハーフ・ヒッチ、更に50cm程の間隔を置いてハーフ・ヒッチ、更に50cm程の間隔を置いて変形もやい結びを設ける方法がある。二つのハーフ・ヒッチを設けることによって、変形もやい結びが堅く締まり過ぎず、使用後に解くことを容易にする効果がある。
- 荷台の荷物を固定する
- 荷台の荷物を固定し、移動中などの荷崩れを防ぐための結びとしては、固定する際に締める機能や運搬時の強度とともに荷下ろしの際に容易に解けることも要求される。結び始めには、ラウンド・ターンとトゥー・ハーフ・ヒッチの組み合わせ、クローブ・ヒッチとハーフ・ヒッチの組み合わせ、もやい結びなどを用いる。結び終わりには、ワゴナーズ・ヒッチまたはトラッカーズ・ヒッチ(trucker's hitch)を用いる。
脚注
参考文献
- 額田巌 『結び』 法政大学出版局〈ものと人間の文化史〉、1972年
- 額田巌 『結び目の謎』 中央公論新社〈中公新書〉、1980年
- 小暮幹雄 『アウトドアのロープワーク』 ナツメ社、1988年
- 『結び方の絵事典』(監修:小暮 幹雄 PHP研究所・2008年)
- 小暮幹雄『図と写真でよくわかる ひもとロープの結び方』新星出版社、2015年8月25日。ISBN 978-4-405-07145-2。