ベイズの定理

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ベイズの定理(ベイズのていり, Bayes' theorem )とは、条件付き確率に関し、トーマス・ベイズによって示された定理である。

ベイズ統計学においては基礎として利用され、いくつかの未観測要素を含む推論等に応用される。例えば、迷惑メールの発見・分類といった作業のコンピュータを用いた自動化(フィルタリング)等の情報工学上の情報ふるい分けにも利用されている。


ベイズの定理

一般に、確率および条件付き確率に関して、下記の恒等式が成り立つ。

この定理はイギリスの牧師トーマス・ベイズ1702年(?) - 1761年)によって1763年に発見され、後にピエール=シモン・ラプラスによってその存在が広く認識されるようになった。

ベイズ統計学におけるベイズの定理

概要

事象Bのベイズ確率について、

  • P(B) = 事象Aが起きる前の、事象Bの確率(事前確率, prior probability)
  • P(B|A) = 事象Aが起きた後での、事象Bの確率(事後確率条件付き確率, posterior probability,conditional probability)

とする。 ベイズの定理を使えば、事後確率 P(B|A) は下記に従って計算される。

すなわち、事象Aに関するある結果(データ)が得られたとすると、それを反映し、尤度P(A|B) の乗算によって、事象Bの確率は事前確率から事後確率へと更新される。なお事象Bの確率の観点からは、P(A) は規格化乗数としての意味しかない。

ベイズ統計学(およびベイズ決定理論)は上記の手続きにその基礎をおき、名前の由来ともなっている。

批判

ベイズの定理は事前確率及び尤度を仮定した下で事後確率を与える、というあくまで相対的なメカニズムを表した定理にすぎない。したがって事後確率の計算結果の信憑性や有用性は、事前分布と尤度の設定にかかっており、慎重を期すことが必要である。これはベイズの定理を含むベイズ統計学が、不確実性を含む問題を人によって異なる確率を用いて定式化することを許容する主観確率 (subjective probability) という立場をとっていることによる。この立場はまだ解析対象となっていない新たな問題へのアプローチを可能にするという利点がある一方で、確率の決め方について客観性に欠けるという批判もある(客観確率)。

関連項目