ピタゴラ装置

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ピタゴラ装置(ピタゴラそうち)とは、NHK Eテレの番組「ピタゴラスイッチ」に登場するからくり装置。ピタゴラ的装置(ピタゴラてきそうち)とも言う。世界的にはルーブ・ゴールドバーグ・マシン、あるいはヒス・ロビンソン・ディバイス(en:W. Heath Robinson)とも呼ばれている。

概要

装置の構成は主として身の回りにあるもの(定規クリップなど)で作られており、そこをビー玉や小さな車が転がってゆく、という形のものが多い。最初にきっかけを与えた以降は連鎖的な運動のみで進行し、あるいは転がっていった先で次のものにぶつかって運動が引き継がれる、あるいはそれが留め金になっているものを外すことで次のものの運動が始まる、といったふうに運動が引き継がれる。その様子はドミノ倒しを思わせるものがある。最後は「ピタゴラスイッチ」という題名を示す、あるいはそれを印象づける動きで終了する。作品には通し番号が振られている。

番組中ではオープニングとエンディングがピタゴラ装置の運動の映像で、番組中のコーナーの切り替えにも使われる。なお、No.41はピタゴラ装置の中で最も長く、「ピタゴラ装置41番の歌」というもついている。

具体例

一番よく目にする装置は、オープニングに使われているNo.10、通称「フライパン」であろう。この装置では、一番高い位置に据えられたキッチンタイマーのダイヤルにつけられた小さな木槌がスタートを起こさせる。これに叩かれた小さなボールは傾斜したレールをくだり、行き当たるとそこに据えられたジューサーの蓋のレバーを押し、それによって蓋に乗せられたボールの乗ったレールが傾いてボールが転がり、というように続いて途中運動する主体はおもちゃの車>ビー玉>歯車と引き継がれ、最後に空中に張られた紐にぶら下がった小さなロゴが滑り降り、それが行き着いた先においたフライパンの底に当たって小さな音を立てる。それをクローズアップすると看板には「ピタゴラスイッチ」の文字が見える。

このような一連の運動は大部分が物体が高いところから転がり落ちる運動(位置エネルギー)に基づく。しかしこれでは運動は下向きばかりなので、変化をつけるためか上に登る運動を与えるところもある。これはたとえば重い玉が下がるときに軽い玉を引っ張り上げるなどの方法がとられている。他にたわめておいたバネを利用したり、巻いておいた紐を重しが引き下ろすことで紐の巻かれた軸を回転させる、等の例もある。いずれにせよ、それらの運動の仕組みが目に見えることが大事で、電気などの動力を用いることは原則的には行わない。一部電力を使った装置も存在するが、スイッチの作動やそれによって起こる効果などは、(風力による車の走行など)装置の中の間接的な仕組みとして起動する。

また、「上から電池を転がし、ゴール地点にある電池ボックスに入った瞬間ランプが点灯してロゴを照らし出す」「メトロノームの力で、紐で棒にくくられたロゴが書かれた板を上げ下げする」などの、複雑な工程のない至極シンプルな仕組みの装置も存在する。

誤差

このような過程においてはそれぞれの仕組みは力学的運動の範疇であり、決定論的である。しかし、実際には誤差は生じるのが当たり前であり、必ず成功するとは限らない。たとえばNo.47通称『バンジー』は最後にゴムひもに結ばれた磁石が飛び落ち、跳ね戻ったところで壁に付けた鉄板に張り付くとその裏側に「ピタゴラスイッチ」の文字が見える。この例の場合、磁石が落下すること、跳ね返って壁に張り付くことは十分に予測可能だが、落下中の姿勢までは予測が難しく、文字列がどのような角度で示されるかまでは制御が難しい。実際、流れる画像では文字が逆さまになっているが、これはその画像の方がかわいらしかったため、こちらを選んだという。

非物理的なもの

上記のような力学的運動ではないものも作成されている。たとえばイヌがトンネルに飛び込むと、出口の布が広がってそこに『ピタゴラスイッチ』の文字が浮かぶというように、動物を使った『装置』もある。

意味づけ

これらの装置は、個々の部分では必然的で自動的な運動であり、それが組み合わせられることで次々に決まった反応を引き出し、その長い連鎖の結果として、最後に「ピタゴラスイッチ」の言葉が表れる。いわばピタゴラスイッチという語を引き出すアルゴリズムの意味合いを持っており、これがこの番組そのものの象徴となっている。

発端

番組の監修は佐藤雅彦と内野真澄。佐藤雅彦が過去に制作した作品や、慶應義塾大学佐藤雅彦研究室(以下、佐藤研)の学生が作った作品などが採用されている。また、視聴者の独自のピタゴラ装置を募集したこともあった。番組の詳細はピタゴラスイッチを参照のこと。

『ピタゴラ装置DVDブック(1)』によると、新たな教育番組として「考え方を伝える番組」を作る、という企画が持ち込まれたとき、いくつかのコーナーが考案されたが、それらがバラバラに過ぎ、まとめるコンセプトが必要なこと、子供が見飽きない工夫が必要なことが問題となった。そういった中、ある日佐藤は(以下上掲書より引用)「意味もなく、ボールが勢いよくレールや板の上を転がって」「待ちかまえる難関をくぐり抜け」フィニッシュの瞬間に音楽とロゴが出る、という画像を着想、これがそれらの問題の解決になると判断した。試作1号の映像を見てその判断を確認、以降は新たな装置を作るために体制を組み替え、「装置合宿」をくんで撮影を行うようになったという。

関連項目

脚注