ハンドルネーム

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ハンドルネームとは、インターネットをはじめとしたネットワーク上で活動するときに用いられる別名のことである。HNと略されることがある。英語に由来する和製英語。原語の handle は、この一語のみで、人(または場所)の名・ニックネームを指し[1]、「ネーム」は不要である[2]。どのようにしてハンドルという語のこのような用法が伝わったのか、ハンドルネームという語は独立に発生したものか、そういった点は明らかでない。

語誌

OED によれば、この用法は、まず肩書き・称号を指して使われていた。文献の初出は 1833年で、"Mister Coxswain! thanky, Sir, for giving me a handle to my name."(コクスウェインさま! 有難うございます、私の名に肩書きを与えてくださいまして) とある [3]

ここからさらに、名前を指して使われるようになった。初出は 1870年で、"I would rather be called ‘Big-Foot Wallace’ than ‘Lying Wallace’.‥ Such handles to my name would not be agreeable."(「ほら吹きウォレス」よりは「ビッグフット・ウォレス英語版」と呼ばれたい。……そんなあだ名は、私の名には好ましくない)とある[4]

英語圏では

そもそも英語圏ではネット上で名乗る名前に "handle" という言葉を使うこと自体が珍しく、大抵、代わりに "nickname" や "screen name" といった単語を使う。あるいは、単に「君のこと、どう呼んだらいい?」と訊くだけということもある。また、日本よりもSNSが発達している欧米では、本名を名乗ることも珍しくない(日本と比べれば)。語源とされている "handle" ですら半ばスラングとして扱われている節があり、"handle name" と表現した方が、"name" という単語が含まれている分通じる場合も多い。いずれにせよ、英語で「ハンドルネーム」を表現したい場合は、上記2つの単語を使うのがベターと言えるだろう。

プログラミングのハンドル

パソコン通信においては、参加者中に、プログラマなどコンピュータ技術者などの割合が多かったこともあり、コンピュータ用語からの転用が見られた。たとえば、書き込みをしない人のことをRead Only MemoryになぞらえてRead Only Member、略してROMとする、などである。

プログラミング技術用語に、なにかを間接的に指し示すもの、を指すハンドルがある(ハンドルを参照)。

使用目的

一般に、ネットワーク上において実名で発言することは特に禁じられてはいないし、また実際に実名のみで活動しハンドルネームを持たない者も少なくない。しかし、遊び心から・また「実名を秘匿することで、現実世界においての人身攻撃を防ぐ」といった実利的な面から、ネットワーク上に参加する者がなんらかのハンドルネームを持つことは、昨今では広く普及している。

一般的なハンドルネームは、本人自身が案出し、他者に対して名乗ることで認知される。この点において、ハンドルネームはいわゆる芸名・筆名などと同質であり、他者から贈られる愛称とは命名主体が異なる。

一つのハンドルネームを複数のネットワークやコミュニティ(Webサイト・ブログ・チャット・掲示板・メーリングリストなど)にわたって広範に用いた場合、それは個人の同一性のアピールとみなされる(このようなハンドルネームは特に「固定ハンドル(略してコテハン)」と呼び、後述の「捨てハン」と対義語となる)。その人のプライバシーや実社会での地位などの秘匿は可能だが、個人の同定が不可能ではなくなり、活動履歴や他者からの評価が蓄積されるという意味では芸能人の芸名や作家のペンネームに近い。

互いをハンドルネームで認識することが多いネットワーカーにとっては、ハンドルネームが実名と同等のアイデンティティ確認手段に発展する可能性もある。例えば、ネットワーク伝いに知り合った者同士は、電子メールでやりとりするときにハンドルネームで呼び合い、またネット外で現実に会う際(オフ会)でも実名を明かさず(仮になんらかの機会によって相手の実名を知ったとしても)、ハンドルネームで呼び合うことが多い。

価値・有効性

ハンドルネームは個人を識別する目安となるが、有効な期間・場などにより実際の意義は大きく異なる。あるコミュニティでは永久的・公的な意味を持ち、また別のコミュニティではほとんど重視されない、といった差異が生じる。

通常、ひとりの人間がいろいろな場面に応じて複数のハンドルネーム(名義や人格)を使いわけることは、それほど珍しい事とは言えない。しかし、ある場において複数のハンドルネームを使い分け、複数の人間が活動しているかのように見せかける行為は、それが偏った目的のため(特定の個人やネットワーカーへの中傷や攻撃、特定の商品や人物などへの賞賛・いわゆる『やらせ』行為など)である事が判明した場合は自作自演と呼ばれ、他のネットワーカーらからは激しく非難されるのが通例である。また、ある人物が故意に他者と同じハンドルネームを名乗る行為や、複数人物がひとつのハンドルネームを名乗る行為も、マナーを逸脱した振る舞いであるとして非難の対象になることがある。

また、たまたま訪れた掲示板で一度かぎりの書き込みをする際など、一時的に使い捨てられる(継続して使用する事を前提としない)ハンドルネームは、捨てハンドルネーム捨てハン,ステハン)と呼ばれる。日本においては、捨てハンドルネームであることを明示している表記として、代表的なものに「名無し」「通りすがり」「匿名希望」がある。場に捨てハンドルネームだと明示せず複数のハンドルネームを名乗った場合、それは自作自演と同様の行為として非難される。また、匿名掲示板では、匿名で書き込んだのちに同一人物であるとを示す必要が出たとき、発言番号などの投稿情報が暗黙的な捨てハンドルネームとして認知されることもあり(23番の書き込みを行った者が「23さん」と呼ばれる、19時30分の発言者が「19:30さん」と呼ばれる、など)、稀なケースではあるがこの捨てハンドルネームがそのまま本格的なハンドルネームとして定着してしまう事例もある(例として、Winny開発者の金子勇とされる「47氏」などが挙げられる)。

脚注

  1. ^ Oxford Dictionary of English (3rd edition, 2010) 他、各種の英和・英英。
  2. ^ 米田治雄『ハムのための英会話』(改訂新版)CQ出版社、東京都〈(『CQ ham radio』2008年4月号別冊付録、1969年の書籍の改訂新版)〉、2008年。ISBN 978-4-7898-1173-6 、p. 18 に「それから、handle nameというのはありませんから、ご注意ください。handleかnameのいずれか一つを使ってください。」とある
  3. ^ Marryat P. Simple iv (OED)
  4. ^ J. C. Duval Adv. Big-Foot Wallace xxxviii. 236 (OED)

関連項目

外部リンク