ドメイン投票方式

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ドメイン投票方式(ドメインとうひょうほうしき、Demeny voting)とは、選挙権年齢未満で選挙権のない子供の親権者に対し、その子供の数だけの投票権を追加して付与する投票方式である[1]。すなわち、子供に投票権を与えて親がその投票権を代行することになり、間接的に選挙権年齢未満の者にも投票権を与えることになる。子供が選挙権年齢に達すれば、その子供の分の親権者の投票権は失われる。

「ドメイン」はこの方式を提案したアメリカ合衆国人口統計学者のポール・ドメイン(Paul Demeny)に由来する。Demeny には「ドメイン」のほか「デーメニ」というカタカナ表記もあるため、デーメニ投票方式とも呼ばれる[1]

歴史

ポール・ドメインによって1986年に考案された投票方式である。この背景には、彼の「政治システムはもっと若い世代の関心に敏感でなければならない」という考え方があり[2]、近年の先進諸国での低出生率を上昇させる効果があるとしても期待されている。

ドイツでは2003年にドメイン投票方式を導入について議会で議論されたが、実現には至らなかった。そして2008年に再び議論されている。なお、ドイツでは ドメイン投票方式は子供投票権(Kinderwahlrecht)の名で知られている。

日本では、少子高齢化社会に対応した政治制度として、一橋大学経済研究所青木玲子教授やオークランド大学のリーナ・ヴァイティアナサン(Rheme Vaithianathan)教授を中心にドメイン投票法が議論されている[3]

なお、2021年現在、この投票方式を実際に導入した国はない[1]

賛成意見

  • 未成年者の選挙への参加を促すことで、若年世代の政治への関心を高める効果がある[4]
  • 子供の数だけ付与された投票権を通じて子育て世代に発言力を与えることで、将来世代への投資、少子化対策が重視されることが期待できる[5]
  • 投票率の低下や人口動態により、特定世代の影響力が顕著に弱まる現行選挙のあり方を聖域なく議論し、子どもに投票権を与えて親がその投票権を代行する。

反対意見

  • 未成年者にも投票権を与えるという本来の趣旨から逸脱しており、単に子供を多く持つ投票権者に多くの投票権を与えるに過ぎないのではないか[6]
  • 親が必ずしも自分の子供の意見を反映して投票するとは考えられず、単に選挙権を得る年齢を引き下げるだけで良いのではないか[7][8]*。
  • 親が投票に行かないと子の分の投票用紙が無駄となる。

脚注

  1. ^ a b c ドメイン投票法 - コトバンク(出典:デジタル大辞泉(小学館))
  2. ^ Demeny, P. 1986 "Pronatalist Policies in Low-Fertility Countries: Patterns, Performance and Prospects," Population and Development Review, vol. 12 (supplement): 335-358.
  3. ^ [1]
  4. ^ [2] (PDF)
  5. ^ [3] (PDF)
  6. ^ [4]
  7. ^ [5]
  8. ^ [6]