ディオゲネス・ラエルティオス
ディオゲネス・ラエルティオス(希: Διογένης Λαέρτιος、羅: Diogenes Laërtius)は、3世紀前半頃に活躍した哲学史家。『ギリシア哲学者列伝』の著者として知られる。
人物
その名前は古来からいろいろな表記がされていて確かなことが分からない。「ラエルティオス」というのは字(Signum)であるという説もあれば、キリキアのラエルテという地名であるという説もある。
その著書『ギリシア哲学者列伝』(希: Βίοι καὶ γνῶμαι τῶν ἐν φιλοσοφίᾳ εὐδοκιμησάντων)10巻は多くの逸話と哲学者たちの諸説をあわせて記述した古代ギリシア・ローマ哲学についての貴重な資料である。史料の抜き書きを行い学説よりも面白おかしい逸話や奇矯な言行への好みがあらわれた「列伝」の性格から著者の面影を察することができる。
「ラエルティオスは自殺には好意的に、暴飲に非常な憎悪を抱き、無神論者を非難し霊魂不滅を信じている」と言ったのはニーチェであった。古典学者パトリッティは「ディオゲネス・ラエルティオスがいかなる人物で、いかなる時代に、またいかなる境遇のもとに生きたかは誰にも知られていないが、彼はこれによって哲学者たちの偉大さを明らかにしたのでもなく、後世に彼らの学説を伝えたのでもなく、むしろその書物を美しく飾ろうとして、その伝記の中に自作のエピグラムや碑銘文を挿入したのである」という。
伝記を多く書いた英文学研究者の中野好夫はラエルティオスの選んだ逸話の無類さをほめている[1]。
参考文献
- ディオゲネス・ラエルティオス/ 加来彰俊訳 『ギリシア哲学者列伝 (上)』 岩波文庫、初版1984年10月。ISBN 400336631X
- ラエルティオス/ 加来彰俊訳 『ギリシア哲学者列伝 (中)』 初版1989年9月。ISBN 4003366328
- ラエルティオス/ 加来彰俊訳 『ギリシア哲学者列伝 (下)』 初版1994年7月。ISBN 4003366336
- フリードリヒ・ニーチェ 「ラエルティオス・ディオゲネスの史料」、『ニーチェ全集1.古典ギリシアの精神』
戸塚七郎ほか訳、ちくま学芸文庫、1994年5月。ISBN 4480080716
脚注・出典
- ^ 講演録「伝記文学の面白さ」より、岩波同時代ライブラリーで刊
関連項目
外部リンク
- On-line version of Lives and Opinions of Eminent Philosophers
- Diogenes Laertius: the Manuscripts of "The Lives and Opinions of Eminent Philosphers" (notes on the publication history of Diogenes Laertius, from R.D. Hicks' edition of the "Lives", 1925)
- Diogenes Laertius (英語) - インターネット哲学百科事典「ディオゲネス・ラエルティオス」の項目。