カオス
カオス(古典ギリシア語:Χάος, Khaos)とは、ギリシア神話に登場する原初神である。「大口を開けた」「空(から)の空間」の意[1]。
概要
- 原初の神々
- ヘーシオドスの『神統記』に従うと世界の始まりにあって存在した原初の神であるが、最初にカオスが存在したという意味ではない。世界(宇宙)が始まるとき、事物が存在を確保できる場所(コーラー)が必要であり、何もない「場」すなわち空隙として最初にカオスが存在し、そのなかにあって、例えば大地(ガイア)などが存在を現した。また、ヘーシオドスはカオスのことをカズム(裂け目)とも呼んでいる[2]。
- 『神統記』によれば、カオスの生成に続いてガイア(大地)が生まれ、次に暗冥の地下の奥底であるタルタロスが生まれた。また、いとも美しきエロース(原愛)が生まれた。しかし、これらの原初の神々はカオスの子とはされていない[3]。
- カオスの子
- カオスより生まれたものは、エレボス(幽冥)と暗きニュクス(夜)である。更に、ニュクスよりアイテール(高天の気)とヘーメレー(ヘーメラー・昼光)が生まれた[4]。世界はこのようにして始まったと、ヘーシオドスはうたっている。
脚注
- ^ 里中満智子・名古屋経済大学助教授西村賀子解説 『マンガギリシア神話1 オリュンポスの神々』 中公文庫、2003年。以下は同書の参考文献。
- K・ケレーニイ 『ギリシアの神話-神々の時代』 植田兼義訳、中公文庫、1985年。
- K・ケレーニイ 『ギリシアの神話-英雄の時代』 植田兼義訳、中公文庫、1985年。
- 呉茂一 『ギリシア神話 上・下』 新潮文庫、1979年。
- アポロドーロス 『ギリシア神話』 高津春繁訳、岩波文庫、1953年。
- 『四つのギリシャ神話-ホメーロス讃歌より』 逸見喜一郎・片山英男訳、岩波文庫、1985年。
- ヘーシオドス 『神統記』 広川洋一訳、岩波文庫、1984。
- ヘーシオドス 『仕事と日』 松平千秋訳、岩波文庫、1986年。
- ホメーロス 『イーリアス 上・中・下』 呉茂一訳、岩波文庫、1953・56・58年。
- ホメーロス 『オデュッセイア 上・下』 松平千秋訳、岩波文庫、1994年。
- 串田孫一 『ギリシア神話』 筑摩書房、1961年。
- 山室静 『ギリシャ神話 付北欧神話』 現代教養文庫・社会思想社、1963年。
- T・ブルフィンチ 『ギリシア神話と英雄伝脱 上・下』 佐渡谷重信訳、講談社学術文庫、1995年。
- 阿刀田高 『ギリシア神話を知っていますか』 新潮社、1981年。
- D・ベリンガム 『ギリシア神話』 安部素子訳、PARCO出版、1993年。
- F・ギラン 『ギリシア神話』 中島健訳、青土社、1982年。
- 『ギリシア神話物語』 有田潤訳、白水社、1968年。
- 高津春繁 『ギリシア・ローマ神話辞典』 岩波書店、1960年。
- L・マルタン監修 『図説ギリシア・ローマ神話文化事典』 松村一男訳、原書房、1997年。
- 水之江有一編 『ギリシア・ローマ神話図詳辞典』 北星堂書店、1994年。
- 吉村作治編 『NEWTONアーキオVOL.6 ギリシア文明』 ニュートンプレス、1999年。
- A・ピアソン 『ビジュアル博物館37 古代ギリシア』 同朋舎出版、1993年。
- F・ドゥランド 『古代ギリシア 西欧世界の黎明』 西村太良訳、新潮社、1998年。
- 周藤芳幸 『図説ギリシア エーゲ海文明の歴史を訪ねて』 河出書房新社、1997年。
- 青柳正規他 『写真絵巻 描かれたギリシア神話』 小川忠博撮影、講談社、1998年。
- R・モアコット 『地図で読む世界の歴史 古代ギリシア』 桜井万里子監修 青木桃子他訳、河出書房新社、1998年)。
- 村川堅太郎編著 『世界の文化史跡3 ギリシアの神話』 高橋敏撮影、講談社、1967年。
- P・ミケル 『カラーイラスト世界の生活史3』 木村尚三郎他監訳、東京書籍、1984年。
- P・コノリー 『カラーイラスト世界の生活史21』 木村尚三郎他監訳、東京書籍、1986年。
- P・コノリー他著 『カラーイラスト世界の生活史25』 木村尚三郎他監訳、東京書籍、1989年。
- 『ATENES THE CITY AND ITS MUSEUMS』 Eldptike Athenon S.A.、1979年。
- Piero Ventura&Gian Paolo Ceserani 『TROIA L'avventura di un mondo』 Arnoldo Mondadori Editore、1981年。
- ^ ヘーシオドス 『神統記』。
- ^ 『神統記』116-122行。
- ^ 『神統記』123-125行。
参考文献
- ヘーシオドス 『神統記』 (発行:岩波書店)