オオバタチツボスミレ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

これはこのページの過去の版です。Qwert1234 (会話 | 投稿記録) による 2020年6月23日 (火) 12:53個人設定で未設定ならUTC)時点の版であり、現在の版とは大きく異なる場合があります。

オオバタチツボスミレ
福島県尾瀬 2020年6月中旬
分類APG IV
: 植物界 Plantae
階級なし : 被子植物 Angiosperms
階級なし : 真正双子葉類 Eudicots
階級なし : バラ上類 Superrosids
階級なし : バラ類 Rosids
階級なし : マメ類 Fabids
: キントラノオ目 Malpighiales
: スミレ科 Violaceae
: スミレ属 Viola
: タカネタチツボスミレ
V. langsdorfii
亜種 : オオバタチツボスミレ
V. l subsp. sachalinensis
学名
Viola langsdorfii Fisch. ex DC. subsp. sachalinensis W.Becker[1]
シノニム
  • Viola langsdorfii auct. non Fisch. ex DC.[2]
  • Viola langsdorfii Fisch. ex DC. var. caulescens auct. non Ledeb.[3]
  • Viola kurilensis Nakai[4]
  • Viola kamtchadalorum W.Becker et Hultén[5]
和名
オオバタチツボスミレ(大葉立坪菫)[6]

オオバタチツボスミレ(大葉立坪菫、学名:Viola langsdorfii subsp. sachalinensis)はスミレ科スミレ属多年草[6][7][8][9]。日本では知床半島にのみ分布するタカネタチツボスミレ(高嶺立坪菫、学名:V. langsdorfii)を基本種とする亜種[9]

なお、本亜種について、いがりまさし (2008) および門田裕一 (2016) は、独立種、V. kamtchadalorum W.Becker et Hultén としている[8][10]

特徴

有茎の種。は直立し、高さはふつう30-40cmになり、ふつう全体に無毛である。地下茎は太く、分枝し、横に這い、節間は短い。根出葉は少数で、葉柄が長く、長さ10cmほどになるが、花時には枯れて存在しないことがある。茎葉は3-4個あり、葉身は長さ3-7cm、幅4-8cm、円心形、心形から三角状心形で、先端は鈍頭または短くとがり、基部は心形になり、縁には波状の鋸歯がある。葉の質は厚いがやわらかく、表面は濃緑色で葉脈に沿ってわずかにへこみ、裏面は淡緑色になる。葉柄の基部にある托葉は離生し、卵形で、大型で長さ10-20mmになり、縁に低い鋸歯があるかまたは全縁となる。茎の下部には葉がなく、節上に鱗片状の托葉があり、披針形でほとんど全縁。夏時の葉は大型になり、径30cmに達する[6][7][8][9]

花期は5-8月。は葉腋から花柄が生じ、花の径は2-3cm、花色は濃紫色から淡青紫色、日本産のスミレ属の中ではもっとも大きい。花弁は長さ15-20mm、5弁すべてに紫色のすじが入り、側弁の基部は有毛。唇弁の距は太く短く、長さ3-5mmになり、先端は嚢状になる。片は楕円形から広披針形、反対側の付属体は四角形で、先端は少しへこむ。雄蕊は5個あり、花柱はカマキリの頭形になり、上部は両端が左右に張り出す。染色体数は2n=96[6][7][8][9]

分布と生育環境

日本では、本州(中部地方以北)および北海道に分布し、湿原、湿った草地、海岸草原、湿った夏緑樹林下に生育する[7][8][9]。本州では亜高山の湿原、湿地に生育する[6]。世界では、千島列島サハリンカムチャツカ半島に分布する[7][8][9]

名前の由来

和名のオオバタチツボスミレは「大葉立坪菫」の意[6][7]で、葉の大きい「タチツボスミレ」の意味であるが、門田裕一 (2016) は、タチツボスミレの属するタチツボスミレ節 - Sect. Trigonocarpos ではなく、オオバタチツボスミレ節 - Sect. Arction に本種を置く[11]

種小名(種形容語)langsdorfii, langsdorffii は、「採集家ラングスドルフの」の意味。亜種名 sachalinensis は、「サハリンの」の意味[12]

保全状況評価

準絶滅危惧(NT)環境省レッドリスト

(2019年、環境省)

ギャラリー

下位分類

  • ケオオバタチツボスミレ Viola langsdorfii Fisch. ex DC. subsp. sachalinensis W.Becker f. pubescens (Miyabe et Tatew.) F.Maek.[13]

関連項目

脚注

  1. ^ オオバタチツボスミレ「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)
  2. ^ オオバタチツボスミレ(シノニム)「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)
  3. ^ オオバタチツボスミレ(シノニム)「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)
  4. ^ オオバタチツボスミレ(シノニム)「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)
  5. ^ オオバタチツボスミレ(シノニム)「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)
  6. ^ a b c d e f 『山溪ハンディ図鑑2 山に咲く花(増補改訂新版)』p.319
  7. ^ a b c d e f 『スミレハンドブック』p.27
  8. ^ a b c d e f 門田裕一 (2016)「スミレ科」『改訂新版 日本の野生植物 3』pp.222-223
  9. ^ a b c d e f 『新分類 牧野日本植物図鑑』p.713
  10. ^ いがりまさし『山溪ハンディ図鑑6 増補改訂 日本のスミレ』p.52, 283
  11. ^ 門田裕一 (2016)「スミレ科」『改訂新版 日本の野生植物 3』p.211
  12. ^ 『新分類 牧野日本植物図鑑』p.1499, 1511
  13. ^ ケオオバタチツボスミレ「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)

参考文献

  • いがりまさし『山溪ハンディ図鑑6 増補改訂 日本のスミレ』、2008年、山と溪谷社
  • 山田隆彦著『スミレハンドブック』、2010年、文一総合出版
  • 門田裕一監修、永田芳男写真、畔上能力編『山溪ハンディ図鑑2 山に咲く花(増補改訂新版)』、2013年、山と溪谷社
  • 大橋広好・門田裕一・木原浩他編『改訂新版 日本の野生植物 3』、2016年、平凡社
  • 牧野富太郎原著、邑田仁・米倉浩司編集『新分類 牧野日本植物図鑑』、2017年、北隆館
  • 米倉浩司・梶田忠 (2003-)「BG Plants 和名-学名インデックス」(YList)