ウスバカゲロウ

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ウスバカゲロウ Myrmeleontidae
分類
: 動物界 Animalia
: 節足動物門 Arthropoda
: 昆虫綱 Insecta
上目 : 内翅上目 Endopterygota
: アミメカゲロウ目 Neuroptera
上科 : ウスバカゲロウ上科 Myrmeleontoidea
: ウスバカゲロウ科 Myrmeleontidae
アリジゴク
ウスバカゲロウの幼虫
アリジゴクの巣

ウスバカゲロウ(薄翅蜉蝣)はアミメカゲロウ目(脈翅目)ウスバカゲロウ科 Myrmeleontidae の昆虫の総称、またはその一種ウスバカゲロウ Hagenomyia micans MacLachlan を指す。

ウスバカゲロウ科

ウスバカゲロウ科は「カゲロウ」という名が付けられているがカゲロウ目とは縁遠い昆虫である。ただし、一般的に区別はあまり気にされていない。いわゆる「アリジゴク」の成虫の名として有名であるが、本科全ての種の幼虫がアリジゴクを経ているわけではない。幼虫成虫という完全変態をする昆虫である。

外見はトンボによく似ていて、細長い体、丸い頭と細長い羽根を持っている。ただし、止まるときは羽根を背中に伏せてたたむこと、頭は小さくて複眼がさほど巨大ではないこと、触角が短いながらも太いことなどで区別できる。また、「カゲロウ」というだけあってその飛び方はひらひらと舞うようであり、トンボのように上手ではない。触角が短いのでツノトンボと区別できる。

地方によっては極楽トンボ神様トンボなど様々な俗称がある。

アリジゴク

このグループの一部の幼虫アリジゴク(蟻地獄)と呼ばれ、軒下等の風雨を避けられるさらさらした砂地にすり鉢のようなくぼみを作り、その底に住み、迷い落ちてきたアリダンゴムシ等の地上を歩く小動物に大あごを使って砂を浴びせかけ、すり鉢の中心部に滑り落として捕らえることで有名である。捕らえた獲物には消化液を注入し、体組織を分解した上で口器より吸い取る。吸い取った後の抜け殻は、再び大あごを使ってすり鉢の外に放り投げる。アリジゴクは、後ろにしか進めないが、初齢幼虫の頃は前進して自ら餌を捉える。また、アリジゴクは肛門を閉ざしてをせず、成虫になる羽化時に幼虫の間に溜まった糞をする。幼虫は蛹になるとき土中に丸い繭をつくる。羽化後は幼虫時と同様に肉食の食性を示す[1]。かつてはウスバカゲロウ類の成虫は水だけを摂取して生きるという説が存在したが、オオウスバカゲロウなど一部の種では肉食の食性が判明している[2]。成虫も幼虫時と同じく、消化液の注入により体組織を分解する能力を備えている。ウスバカゲロウの成虫はカゲロウの成虫のように短命ではなく、羽化後2 - 3週間は生きる。

これまでアリジゴクは、羽化時まで糞尿は排泄しないことが通説だったが、2010年に千葉県袖ヶ浦市在住の小学校4年生がアリジゴクのお尻から黄色い液体が出ることを発見。通説が覆される可能性が出てきた[3][4]

下位分類

  • コウスバカゲロウ属 Myrmeleon
    • コウスバカゲロウ
    • クロコウスバカゲロウ
    • ハマベウスバカゲロウ
    • ミナミハマベウスバカゲロウ
  • ウスバカゲロウ属 Hagenomyia
    • ウスバカゲロウ Hagenomyia micans MacLachlan, 1875
  • モイワウスバカゲロウ属 Epacanthaclisis
    • モイワウスバカゲロウ E. moiwana Okamoto, 1905
  • オオウスバカゲロウ属 Heoclisis
    • オオウスバカゲロウ
  • マダラウスバカゲロウ属 Dendroleon
    • コマダラウスバカゲロウ
  • カスリウスバカゲロウ属 Distoleon
    • カスリウスバカゲロウ
    • コカスリウスバカゲロウ
    • リュウキュウカスリウスバカゲロウ
    • ヤエヤマウスバカゲロウ
    • オガサワラカスリウスバカゲロウ
  • ホシウスバカゲロウ属 Glenuroides
    • ホシウスバカゲロウ G. japonicus MacLachlan, 1867
    • リュウキュウホシウスバカゲロウ G. okinawensis Okamoto, 1910
  • ヒメウスバカゲロウ属 Pseudoformicaleo
    • ヒメウスバカゲロウ P. jacobsoni van der Weele, 1909

ウスバカゲロウ Hagenomyia micans MacLachlan

前翅の長さは4cm前後で、頭部は光沢のある黒色、胸部の背側は黒で腹側は黄色、隆起した後頭中央接合部は陥没して黄色である。触角は黒色である。翅は透明で薄くやや幅広く、縁紋は黄白色。翅脈は黄褐色ないし褐色である。

その他

ウスバカゲロウの漢字表記は「薄羽蜉蝣」であるが、北杜夫は『どくとるマンボウ昆虫記』の中でこれに「薄馬鹿下郎」を当てて見せた。

脚注

  1. ^ アリジゴクの世界京都教育大学理学科教授 松良俊明
  2. ^ オオウスバカゲロウ - いしかわレッドデータブック動物編2009
  3. ^ アリジゴクがおしっこ 通説「排泄しない」は誤り? 2010年11月4日付 朝日新聞夕刊12面
  4. ^ アリジゴク、おしっこする 千葉の小4が通説覆す発見(asahi.com 2010年11月8日9時11分)

関連項目


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