イチハラビロウドザメ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

これはこのページの過去の版です。出羽雀台 (会話 | 投稿記録) による 2021年11月20日 (土) 14:31個人設定で未設定ならUTC)時点の版 (追記)であり、現在の版とは大きく異なる場合があります。

イチハラビロウドザメ
保全状況評価[1]
VULNERABLE
(IUCN Red List Ver.3.1 (2001))
分類
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
: 軟骨魚綱 Chondrichthyes
: ツノザメ目 Squaliformes
: オンデンザメ科 Somniosidae
: フトビロウドザメ属 Scymnodon
: イチハラビロウドザメ
S. ichiharai
学名
Scymnodon ichiharai
Yano&Tanaka, 1984
英名
Japanese velvet dogfish
分布[2]

イチハラビロウドザメ(学名: Scymnodon ichiharai、英:Japanese velvet dogfish)はオンデンザメ科に属するサメの一種。北西太平洋日本駿河湾 とその周辺海域及び、台湾に分布する。中国台東市からも記録がある[3]。 また、インド洋アンダマン・ニコバル諸島にも分布する[1]IUCN保全状況について危急種としている[1]。 種小名のichiharai東海大学海洋学部元教授の故市原忠義にちなむ[4]

分類

1984年、 学術誌『日本魚類学雑誌』において、海洋生物学者矢野和成田中彰Scymnodon ichiharaiの名で 記載した[2]ホロタイプ1983年3月16日静岡県の駿河湾、 興津近辺(北緯35°02.9’、東経138°34.6’)の水深580mから得られた全長101.1cmの雄[2]。 他に、1980年6月5日から1983年5月14日の間に駿河湾の水深450~830mで得られた、全長38.7cm~145.5cmの13個体がパラタイプに指定されている[2]。 記載された当時、属名のScymnodonビロウドザメ属として扱われていたが、後の研究によってビロウドザメ属は、ビロウドザメと本種のみで構成されるZameusという属名に変更された[5]。現在もZameus ichiharaiが使われることがある[6]が、最新の研究でビロウドザメ属から本種のみが分離、Scymnodonの属名を持つフトビロウドザメ属に分類され、記載された当初の学名に戻っている[3]

形態

第一背鰭棘が体長の中央より前方に位置、尾鰭の欠刻がはっきりしていること、歯の形が左右非対称であること、成魚においては盾鱗の外縁は鋸歯状かなめらかで、三又状ではないこと、腹鰭と尾鰭の間の距離は体長の10.2~14.0%であることが特徴。 ただし、幼魚の場合、鱗の外縁が三又状である[2]。体色は全体的に暗褐色。 近縁のミナミビロウドザメは本種と多くの特徴を共有するが、相違点は、成魚の鱗の外縁が三又状であること、腹鰭と尾鰭の間の距離は体長の15.4~17.6%であることである。 全長は最大で151.1cm[3]

分布

北西太平洋と北東インド洋に分断して分布する。 北西太平洋域では日本の駿河湾とその周辺海域、台湾及び中国の台東市からも記録がある。 北東インド洋から1個体の標本を基に分布が確認されている[1]

生態

生殖方法は 胎生[6]。水深500~800mに生息することが多い。

人との関わり

生息域に位置する港町、焼津の漁師の間では食用の深海ザメとして認知されているようである[7]。 分布海域に面する各国過去102年の漁獲情報に基づき、少なくとも30%以上の個体数減少が推測されているため、IUCNは保全状況について危急種としている[1]

脚注

  1. ^ a b c d e McCormack, C. & Tanaka, S. 2009. Scymnodon ichiharai. In: IUCN 2017. IUCN Red List of Threatened Species. Version 2017.2. <www.iucnredlist.org Archived 2014-06-27 at the Wayback Machine.>. Downloaded on 18 September 2017.
  2. ^ a b c d e Yano, K.(1988). “Reviw of DeepSea Squaloid Shark Genus Scymnodon of Japan,with a Desdription of a New Species. Japanese Journal of Ichthyology Vol.30,NO.4,pp.341-pp.360 NAID 130004018837
  3. ^ a b c White, W.T., Vaz, D.F.B., Ho, H.-C., Ebert, D.A., Carvalho, M.R.d., Corrigan, S., Rochel, E., Carvalho, M.d., Tanaka, S. & Naylor, G.J.P. (2014): Redescription of Scymnodon ichiharai Yano and Tanaka 1984 (Squaliformes: Somniosidae) from the western North Pacific, with comments on the definition of somniosid genera. Ichthyological Research, 62 (2): 213-229.
  4. ^ 矢野和成著 サメ 軟骨魚類の不思議な生態 pp.11 東海大学出版 1998年出版より
  5. ^ 仲谷一宏著 サメ-海の王者たち- pp.214-215 ブックマン社 2011年出版
  6. ^ a b Zameus ichiharai (Yano & Tanaka, 1984) on fishbase
  7. ^ 深海ザメ漁の知られざる歴史…