ひっつき虫
ひっつき虫(ひっつきむし)は、かぎ針(鉤、フック)や逆さとげによってヒトや動物の皮膚や衣類に引っかかったり、粘液によって張り付いたりする、植物の種子や果実の俗称である。くっつき虫ともいう。ひっつきもっつき、あばづぎと呼ぶ地方もある。
運ばれるのが種子そのものではなく、散布体としての果実や、あるいは小穂が運ばれる単位である場合が多い。しかし、たいてい果肉は薄く、日常感覚では種子と捉えられるものが多いため、ここでは区別なく一括して種子として説明する。
概要
山林や野原などを歩いたあと、衣類を検めると、これらの種子が引っかかっていることが多い。動物側には利益はなく、場合によっては、付着装置である針や鉤によっていやな思いをしたり、場合によっては傷つくこともある。ヒトや動物など移動するものにくっつくことで生息地域を広めることができる、いわゆる適応である。
棘が若干堅くて痛いので、子ども同士のいたずらなどにも用いられる。
くっつく仕組み
くっつくための仕組みにも、さまざまなものがある[1]。
- 鉤を持つもの
- その表面に突き出した針の先が鉤になっていて、それによって引っ掛かるようになっているもの。
- (例) オナモミ属(キク科)、ヤブジラミ属(セリ科)、キンミズヒキ(バラ科)、ハエドクソウ(ハエドクソウ科)、クリノイガ[2](イネ科)など。
- 細かい鉤が密生するもの
- 種子の端や表面にごく小さな鉤が並んでいて、面ファスナーのように張り付くもの。
- (例)ヌスビトハギ属(マメ科)、ヤエムグラ(アカネ科)など。
- 逆さとげを持つもの
- 逆向きのとげのある突起があるもの。
- (例)センダングサ属(キク科)、チカラシバ・ササクサ(イネ科)など。
- 鉤になるもの
- 種子表面から突き出て、すぐに折れ曲がって寝た針があって、これによって引っ掛かるもの。
- (例) イノコズチ属(ヒユ科)など。
- 粘液を出すもの
- 種子表面に粘液毛などを持ち、それによって粘り着くもの。
- (例) メナモミ・ノブキ(キク科)、チヂミザサ(イネ科)など。
脚注
参考文献
- 伊藤ふくお写真、丸山健一郎文『ひっつきむしの図鑑』北川尚史監修、トンボ出版、2003年。ISBN 4-88716-147-6。
- 多田多恵子『身近な草木の実とタネハンドブック』文一総合出版、2010年、70-84頁。ISBN 978-4-8299-1075-7。
関連項目
外部リンク
- 波田善夫. “ひっつき虫”. 植物雑学事典. 岡山理科大学. 2012年1月26日閲覧。
- 福原達人. “8-3. 動物付着散布”. 植物形態学. 福岡教育大学教育学部. 2012年1月26日閲覧。