かに座ゼータ星

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かに座ζ星 (ζ Cnc / ζ Cancri) は、少なくとも4つの恒星から構成されるかに座恒星系である。ラテン語で「(カニの)殻」という意味のテグミン(Tegmine)という固有名を持つ。地球からは約83.4光年離れており、+4.67等級である。

かに座ζ星は黄道面の付近にあるため、や稀に惑星による掩蔽が観測されることがある。

かに座ζ星系には、2つの連星かに座ζ1かに座ζ2が含まれ、5.06秒離れている。これらの2つの連星系は、重心の周りを1100年の周期で公転している。

かに座ζ星は小さな望遠鏡を用いると二重星のように見える。1756年にトビアス・マイヤーによって初めて2つの恒星として観測された。1781年にウィリアム・ハーシェルがかに座ζ1星自体が連星であることを発見し、三重連星であることが明らかになった。1831年にジョン・ハーシェルがかに座ζ1星の周りのかに座ζ2星の軌道の摂動に気づいた。これによりオットー・シュトルーベは1871年に、かに座ζ2星の主星の近傍を公転する伴星の存在を推定した[1]。近年の観測によってこの4つめの恒星の存在が明らかとなり、さらに1つか2つの未知の恒星の存在も示唆されている[2][3]

かに座ζ1星を構成する2つの恒星は、かに座ζ星Aかに座ζ星Bと呼ばれる。これらはどちらも黄白色のF型主系列星で、視等級はそれぞれ+5.58、+5.99である。2008年時点で、2つの恒星の間は1秒離れており、分解して見るためには大型の望遠鏡が必要である。この距離は2020年まで広がると予想されている。軌道周期は59.6年である[4]

かに座ζ2星を構成する2つの恒星は、かに座ζ星Cかに座ζ星Dと呼ばれる。かに座ζ星Cは明るい方で、+6.12等級で黄色のG型主系列星である。かに座ζ星Dは10等級の赤色矮星で、近接した2つの赤色矮星である可能性がある。かに座ζ星Cとかに座ζ星Dの間は約0.3秒離れており、公転周期は17年である。

識別

明るい3つの恒星はしばしば混同されるが、カタログではそれぞれ識別されているものもある。Griffinによって正しい対応付けがなされた[1]

恒星 HR HD SAO HIP
かに座ζ星A 3208 68257 97645 40167
かに座ζ星B 3209 68256
かに座ζ星C 3210 68255 97646

出典

  1. ^ a b Griffin, R.F. (2000). “Spectroscopic Binary Orbits from Photoelectrical Radial Velocities: Paper 150: ζ Cancri C”. The Observatory 120: 1-47. http://adsabs.harvard.edu/cgi-bin/nph-bib_query?bibcode=2000Obs...120....1G&db_key=AST&data_type=HTML&format=&high=44595cfd5a08794. 
  2. ^ Hutchings, J. B., Griffin, R. F.; Menard, F. (2000). “Direct observation of the fourth star in the Zeta Cancri system” (abstract). Publ. Astron. Soc. Pac. 112: 833-836. doi:10.1086/316587. http://arxiv.org/abs/astro-ph/0004284. 
  3. ^ Richichi, A. (2000). “An Investigation of the multiple star Zet Cnc by a lunar occultation”. Astron. Astroph. 364: 225-231. http://adsabs.harvard.edu/cgi-bin/nph-bib_query?bibcode=2000A%26A...364..225R&db_key=AST&data_type=HTML&format=&high=445952a4c330915. 
  4. ^ Mason et al.; Hartkopf, William I.; Wycoff, Gary L.; Holdenried, Ellis R. (2006). “Speckle Interferometry at the US Naval Observatory. XII.”. The astronomical Journal 132 (5): 2219-2230. Bibcode2006AJ....132.2219M. doi:10.1086/508231. http://www.iop.org/EJ/article/1538-3881/132/5/2219/205407.html.