Century (書体)

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Century
センチュリー
様式 セリフ
分類 ディドーン英語版、スコッチモダン
デザイナー リン・ボイド・ベントン英語版モリス・フラー・ベントン英語版
制作会社 アメリカン・タイプ・ファウンダーズ英語版(ATF)
発表年月日 1894-1923年
派生品 Century Expanded、Century Schoolbook、Century Oldstyle、Century Catalogue
上記表示フォント Century Schoolbook

Century(センチュリー)は、特に本文で使うことを目的としたセリフ体の欧文書体ファミリーである。

この書体ファミリーの起源となる最初のデザイン「Century Roman」はアメリカン・タイプ・ファウンダーズ英語版(ATF)社のデザイナーであるリン・ボイド・ベントン英語版(L・B・ベントン)が1894年に制作したもので、印刷監督セオドア・ロウ・デ・ヴィネ英語版が雑誌『ザ・センチュリー・マガジン英語版』で使用するためのものだった[1]。最初のリン・ボイドと後を継いだ息子モリス・フラー・ベントン英語版(M・F・ベントン)の尽力により、ATFがCentury書体を非常に大規模なファミリーに急拡張していった。

概要[編集]

Centuryは、アメリカ合衆国で19世紀初頭からよく使われていた英国起源の書体「スコッチ・ローマン英語版」様式に基づいており、19世紀の間ずっと人気のあった「ディドーン」様式の書体の一部だった[2][3]。そのデザインは鮮明さと優雅さを強調していて、細いテーパーで終わるストローク、ケルン(ボール・ターミナル英語版[注釈 1])、きめ細かく尖ったセリフを備えている。しかしながら、このジャンルで以前からあった多くの書体に比べて、ストロークのコントラスト[注釈 2]はかなり低く、シャープさを抑えて読みやすい構造である[5]。もはやATFが活動しなくとも、さまざまな特徴と品質を備えた広範なバリエーションおよび復刻版が利用可能となっている。

19世紀生まれの書体にもかかわらず、定期刊行物、教科書、文献でこの書体の使用が強く残っている。合衆国最高裁判所は、訴状をCenturyファミリーの活字で組むよう要求している[6]。チャールズ・ショウによると「Centuryファミリーの起伏がある簡潔さは、約100年にわたって米国の植字工に愛用され続けている。鋳造活字として始まったCenturyは、ライノタイプモノタイプ、ラドロー[注釈 3]写真植字、転写植字(オフセット印刷など)、電算写植、Xeroxのような「トナー方式」[注釈 4]に至る一連の技術的変革でも存続している。[8]」という。

固有の特徴[編集]

1912年のATF見本帳にある、複数のCentury書体。当時はまだCentury Schoolbookが未発表。

この書体の特徴は次のとおり。

  • 小文字:小文字cの上部にあるケルンでの巻き終わり。fのフックや、gの耳や、jの尻尾にあるケルン。
  • 大文字:大文字Rのカールした尻尾、Qの跳ねてカールした尻尾、Cの顕著なトップスパー[注釈 5]
  • 数字:3の両尻尾にあるケルンでの巻き終わり、そして2,5,6,9の片側の尻尾も同様。

バリエーション[編集]

Century Roman[編集]

Century Roman
センチュリー・ローマン
様式 セリフ
分類 モダン
デザイナー リン・ボイド・ベントン
委託元 『ザ・センチュリー・マガジン』の出版元セオドア・ロウ・デ・ヴィネ
制作会社 アメリカン・タイプ・ファウンダーズ(ATF)
制作年月日 1894年
発表年月日 1895年11月に『ザ・センチュリー・マガジン』刊行

『ザ・センチュリー・マガジン』出版元のセオドア・ロウ・デ・ヴィネは、雑誌で読みやすいフォントを求めていた。彼は、アメリカ活字鋳造社を新たに設立した友人のL・B・ベントンに、そうした書体を考案してくれるよう依頼した。主にジャンバティスタ・ボドニ英語版の影響により、19世紀全般で一般的な印刷フォントが細身になっていたため、ページ上で弱い印象を与えていた。デ・ヴィネと芸術愛好家のウィリアム・モリスはこの「ひ弱になっていく事」を批判して、もっと黒い書体への転換を訴えた[8]。L・B・ベントンが生みだした書体の「Century Roman」は、大半の書体よりもエックスハイト英語版(小文字の高さ)が大きく、一般的なものよりも厚みのあるヘアラインだったが、デ・ヴィネはこれがより読みやすいと確信して、コンデンスド書体[注釈 6]のままにした[9]。これは鋳造活字でのみ作られ、後に付随する通常幅の書体がL・B・ベントンによって製作された。「Century Broad Face」や「Century No. 2」などさまざまに呼ばれている[10]。Centuryファミリーの起源となっている書体にもかかわらず、より普通の比率である後年の書体ファミリーに比べて人気は芳しくない。

Century[編集]

Century
センチュリー
様式 セリフ
分類 モダン
デザイナー モリス・フラー・ベントン
委託元 アメリカン・タイプ・ファウンダーズ(ATF)
制作会社 アメリカン・タイプ・ファウンダーズ(ATF)
制作年月日 1900年
発表年月日 1900-1910年
提供元 Barnhart Brothers & Spindler, Linotype, Intertype, Monotype, Ludlow
別名 Century Expanded
ベース書体 Century Roman + Bruce #16 Roman

L・B・ベントンの息子であるモリス・フラー・ベントンは、1892年に23の鋳造所をATFに併合すると、これら製造業者の書体を取捨選択して統合する任務を請け負った。これに続き、彼は当時の国際活版印刷労働組合英語版 (ITU)の基準を満たすよう「Century No. 2」を適合させる任務を与えられた。スミソニアン協会の記録では、M・F・ベントンは父親の書体を再設計しただけでなく、ATFが最近買収したブルース活字鋳造所英語版 の「#16 ローマン」 も参考にしたことが示されている(そして恐らく偶然ではないだろうが、デ・ヴィネによって印刷された1877年のブルース鋳造所のカタログにそれが紹介されていた)[8]。その結果生まれた「Century Expanded(センチュリー・エクスパンデッド)」は、大成功を収めた。1912年までにATFのカタログはもはや元祖のCentury Romanを提供しなくなり、Centuryファミリーの他のサンプルを64ページ表示した[11]

この活字導入が成功した後、M・F・ベントンは最初に計画された書体ファミリーの作成に着手しており、この「書体ファミリー」という概念はおそらくベントン単独の最大の功績である。この書体は10年間にわたって発行されたが、その全てがベントンによりデザインされたもので、ATFによって発行された[10]

  • Century Expanded(センチュリー・エクスパンデッド、1900年)
  • Century Italic + Century Bold(センチュリー・イタリック+センチュリー・ボールド、1905年)
  • Century Bold Condensed(センチュリー・ボールド・コンデンスド、1909年)
  • Century Bold Extended(センチュリー・ボールド・エクステンデッド、1910年)

溶銑組版[編集]

Centuryは非常に人気があり、ライノタイプ社Intertype社、Monotype社を含め機械的な組版機の全メーカーによってライセンス取得またはコピーされることとなった。Barnhart Brothers & Spindler社は自分たちのバージョンを「Century Roman」と呼び、Ludlow社は1953年のバージョンを「Century Modern(センチュリー・モダン)」と呼んだ。いくつかの亜種が追加された[10]

  • Century Bold Extended(センチュリー・ボールド・コンデンスド・イタリック、1938年、Monotype社、Sol Hess)
  • Century Extra Bold Extended(センチュリー・エクストラ・ボールド・エクステンデッド、ライノタイプ社)、新聞や雑誌の見出しに使用するために設計された。

写植[編集]

Centuryの人気と有用性は、写真植字の時代もずっと続いており、主要な全ての製造業者が次の名前で写真植字に利用できるようにした[12]

  • Century Expanded(センチュリー・エクスパンデッド) - AutologicBertholdDymoHarrisMergenthalerMonotypeen:Varityper
  • Century X(センチュリーX) - Alphatype
  • Century Light(センチュリー・ライト) - Compugraphic
  • Censtar Expanded(センスター・エクスパンデッド)- Star/Photon
  • Cambridge Expanded(ケンブリッジ・エクスパンデッド) - Graphic Systems Inc.
  • Digi-Antiqua(デジ=アンティカ) - Hell AG
  • ITC Century - ITC: これはエックスハイト(小文字の高さ)を増やしたもので、あまり忠実ではないバージョンだが、非常に人気があり、デジタル化されている。

Century書体はまた、IBMセレクトリック・タイプライター英語版でも使用できた。

デジタルの変種[編集]

「ベントン・モダン・テキスト (Benton Modern Text)」というデジタル版は、最初にフォント・ビュロー英語版社によってボストン・グローブ紙とDetroit Free Press紙のために作成された。トビアス・フレア=ジョーンズ英語版によって設計されたもので、Century Expandedに基づいているが、イタリック体とボールド体はCentury Schoolbookに基づいており、こちらはリチャード・リプトン英語版クリスチャン・シュワルツ英語版によって設計されたものである。ベントン・モダンは、一般的なテキストと大きなテキストサイズ表示の二つの光学サイズでリリースされた[13]。フォント・ビュロー社は既に別事業として、特に新聞の見出しを意図するCentury Bold Condensedそれ自体をデジタル化していた[14]

Century Oldstyle[編集]

Century Oldstyle
センチュリー・オールドスタイル
様式 セリフ
分類 オールドスタイル
デザイナー モリス・フラー・ベントン英語版
委託元 アメリカン・タイプ・ファウンダーズ
制作会社 アメリカン・タイプ・ファウンダーズ
制作年月日 1909年
発表年月日 1909-1915年
提供元 Linotype社, Intertype社, Monotype
別名 オールドスタイルNo.9(Linotype社)
ベース書体 Century Roman+ Caslon

「Century Oldstyle(センチュリー・オールドスタイル)」は、ブラケットセリフのある重い書体に流行が戻ってきた時にリリースされた。全てがベントンによって設計されてATFにより発行されたこの書体は、6年間にわたって発行された[10]。センチュリー・オールドスタイルは、ベントン父子が45年後にPhemister’s Miller&Richard Old Style for ATF(ブックマン・オールドスタイルとしても知られる)を改造したもので、マーケティング目的でCenturyの名を冠したものであった。名前とは違って、純粋なオールドスタイルのセリフフォント(1750年以前頃に使用された鋳造活字の書体)ではないが、カールした大文字Qのような現代的特徴をよりたくさん持っている。

  • Century Oldstyle + italic + bold(センチュリー・オールドスタイル+ イタリック + ボールド、1909年)
  • Century Oldstyle Bold Italic(センチュリー・オールドスタイル・ボールド・イタリック、1910年)
  • Century Oldstyle Bold Condensed(センチュリー・オールドスタイル・ボールド・コンデンスド、1915年)

溶銑組版[編集]

「Century Oldstyle」は前作ほどの人気はなかったが、ローマンとイタリックはライノタイプ社、Intertype社、Monotype社によってコピーされた[10]

写植[編集]

オールドスタイル書体は写植時代において人気を集めたため、「Century Oldstyle」は溶銑組版時代よりも広くコピーされた。以下の名前でコピーが作られた[12]

センチュリー・カタログ[編集]

Century Catalogue
センチュリー・カタログ
様式 セリフ
分類 Modified Old Style
デザイナー モリス・フラー・ベントン英語版
委託元 アメリカン・タイプ・ファウンダーズ
制作会社 アメリカン・タイプ・ファウンダーズ
制作年月日 1917年
発表年月日 1917年
ベース書体 Century Expanded

「Century Catalogue(ATF見本帳での綴り、センチュリー・カタログ)」 はCentury Expandedよりもエックスハイトが低くなっているが、長いアセンダーにもかかわらず、同じ一般的デザインを踏襲している。Century Catalogue Italicは、基本的にバスカヴィル英語版・イタリックの再加工であり、A、V、Wだけが異なる。どちらも1917年にM・F・ベントンとATFからリリースされた[10]。知られる限り「Century Catalogue」は、他の鋳造社や組版機械にも、写植にもコピーされなかった。デジタル版では存在する可能性がある。

Century Schoolbook[編集]

Century Schoolbook
センチュリー・スクールブック
様式 セリフ
分類 トランジショナル
デザイナー モリス・フラー・ベントン英語版
委託元 ジン&カンパニー英語版
制作会社 アメリカン・タイプ・ファウンダーズ
制作年月日 1918年
発表年月日 1918-1923年
提供元 Linotype社, Intertype社, Monotype社, Ludlow
別名 Century Modern(センチュリー・モダン、Ludlow社)
ベース書体 Century Expanded

Century Schoolbook(センチュリー・スクールブック)は、1919年にM・F・ベントンによって設計されたトランジショナル・セリフの書体である。教科書向けの特に読みやすい書体を求めていた教科書出版社ジン&カンパニー英語版の要請があったATFのために設計された。Century Schoolbookには、ディドーン様式に似た要素がある。Century Schoolbookは、かつてのCentury Romanをベースにしている。

「Century Schoolbook」は、北米地域で大勢の人が最初に読み方を学んだ書体としてなじみがある。M・F・ベントンは、クラーク大学で行われた研究を利用して、若い読者がコントラストのある太さで文字の形状をより素早く特定することを示したが、軽めなストロークでの存在を維持した。同研究では、より小さなサイズで活字を認識するために、カウンターフォーム(黒い文字のまわりにある白いスペース)を維持することの重要性も示された[8]。Century Schoolbookをデザインする際、M・F・ベントンはエックスハイト、ストローク幅、全体の文字間隔を増やした。この書体は5年間にわたって発行され、その全てがベントンによって設計され、ATFにより発行された[10]

  • Century Schoolbook (1918)
  • Century Schoolbook Italic (1921)
  • Century Schoolbook Bold (1923)

Centuryファミリーの最後の書体は「スクールブック・オールドスタイル」と呼ばれる旧式のバージョンで、1920年に始まって1926年にリリースされ、1928年にイタリック体が続いた。これは姉妹書体の人気にも全く届かず、組版機械にも全く採用されなかった(当然ながら写植やデジタルにもない)。最終的にはお蔵入りとなった。

溶銑組版[編集]

ATFとM・F・ベントンにとって非常に人気の高い書体「Century Schoolbook」は、ライノタイプ社、Intertype社、Monotype社、Ludlow社を含む機械的な組版機の全ての製造業者によってライセンスまたはコピーされた。変種のひとつ、Century Schoolbookのボールドイタリック体までもIntertype社によって追加された[10]。ライノタイプ社は、教科書市場向けのCentury Schoolbookと直接競争することを意図した書体「Primer」 を設計するようルドルフ・ルツィカ英語版に依頼した。

写植[編集]

Century Schoolbookの人気は、写植時代のCenturyの人気を上回っていて、以下の名前で提供された[12]

デジタルコピー[編集]

最も一般的なデジタルバージョンは、多くのマイクロソフト製品に付属のMonotype社のものである[15]URW++社, DTP Types社, Elsner+Flake社,ビットストリーム (企業) ほかによる「ニュー・Century Schoolbook」というバージョンもある[16]

URW++社によってデジタル化された非常に限定されたセットは、オープンソースソフトウェアとしてGhostscript プロジェクトの一部として、PostScript Type 1のフォーマットでリリースされている[17]。TeX Gyre Scholaは、ポーランドのグループによるURWリリースの適応版である。キリル文字版や小文字を含め、おそらくCenturyファミリーの最も完全なオープンソースのデジタル化である[18]

紛らわしいことに、マイクロソフト製品で提供されているMonotypeバージョンは、恐らくファイル名を短くする必要があった時期との下位互換性による理由から、単に「Century」と呼ばれている。現代のマイクロソフト製品には、この「Century」(ローマン体のみだがキリル文字を含む)と「Century Schoolbook」という同じデザインが含まれている。後者はボールド体やイタリック体のファミリー全体を含む[19]

デジタル変種[編集]

Grad」は元のATF Century Schoolbookをベースにしたフィル・マーティンによる変種(マーク・シモンソン英語版によってデジタル化された)である。テキスト数字とスモールキャピタルがある広範なデジタル化で、非対称セリフなどの珍しい特徴も追加している[20]

Century Schoolbook Infant[編集]

Century Schoolbook Infantは子供が読み方を学ぶのを手助けするために使用される書体の単一バージョンである。非常に稀だが、エリック・ヒルの絵本『Spot』で見られる。

キリル文字版[編集]

Century Schoolbookの書体はまた、ソビエトのタイポグラフィーにも改作された。「Pioner(ロシア語で、開拓者)」と名付けられた最初のキリル文字版は1939年に設計され、後の1961年には2回目の改作が科学研究所 (NII) のPoligrafmashで行われた。後者のバージョンは「Школьная(ロシア語で、学校の)」と命名され、以後はそれが標準となり、ソ連および後のロシアの子供向け出版物や学校の教科書に最も広く使われている書体である[21]

Century Nova[編集]

Century Nova + Italic(センチュリー・ノヴァ+イタリック、1964年)は、活版(ホットタイプ)とオフセット(コールドタイプ)再生産の両方に等しく適合しなければならない、というATFからの規定に合わせてチャールズ・E・ヒューズによって設計された[22]。細い線が多くて、小文字ではエックスハイトがより大きく、そして(おそらく皮肉なことに)元祖Century Romanの狭い文字幅の性質に戻っている[23]。これはATFによって製作された最後から2番目の書体だった。Scangraphic社がデジタル版をリリースしている[24]

関連のデジタル復刻版[編集]

アレクセイ・クリューコフ英語版による、Century Schoolbook(monotype社のデジタル版)とOld Standard(特に19世紀ロシアの印刷物に基づいたもの)との比較。両方とも基本の文字構造は同じだが、Old Standardはよりきめ細かいヘアラインとセリフがあり、特にイタリック体で顕著である。

ニック・シン英語版のスコッチ・モダン復刻版は、Centuryに触発されたスコッチ・モダン書体の光学サイズ三つのデジタル版である[5]。批評家のマーク・シモンソンに「恐ろしい完成度」と評され、Centuryのデザインよりもコントラストの度合いが強く、よりシャープなディドーンのセリフを有し、スモールキャピタルと適応範囲のある数字デザインが特徴である[25][26]。シンはこの復刻を、1873年のニューヨーク州の野生動物に関する本で使用されたものに基づいて行なった。

アレクセイ・クリューコフ英語版のオールド・スタンダードWebフォントは、20世紀初頭にヨーロッパで使用された類似の書体に基づいている。古典研究で使用するための、キリル文字と複数アクセント記号の複式ギリシャ文字記号が含まれている[27]

マシュー・カーターMillerは、Centuryの遠い祖先、19世紀初頭におけるスコッチローマンの復刻版である。非常に控えめなストロークのコントラスト度合いが特徴となっている。新聞でよく使われる非常に大きなファミリーで、五つの光学サイズがあり、スモールキャピタルや代用数字のデザインといった多くの専門的機能もある[28]Hoefler & Frere-Jones社によるクロニクル・テキスト&ディスプレイ(Chronicle Text and Display)は、また別の新聞や専門家の使用を意図された光学サイズの、スコッチローマンに触発された大きなファミリーである[29]

Eames Century Modern(イームズ・センチュリー・モダン)は、家具デザイナーのチャールズ&レイ・イームズによるファミリーの使用に触発されたデジタル版である[30]コメディ・セントラルなどで使われている[31]

ビットストリーム (企業) から出ているCentury 751は、実際にはルドルフ・ルツィカの書体Primerのデジタル復刻版である[32]

脚注[編集]

注釈[編集]

  1. ^ 文字の書き出しや最後が球形になっている部分で、右上のサンプル図で言うと小文字rの右上留め部分。英語ではball terminalだが、日本では独自にこれを「ケルン」と呼んでいる。
  2. ^ ストロークのコントラスト( Stroke contrast) とは、書体の文字における描線の太さの変化[4]。太線箇所と細線箇所との対比。
  3. ^ 1912年にLudlow Typograph Co.から発売された鋳植機。
  4. ^ 印刷版を使わずに、印字トナーやインクジェットなどで直接デジタルデータを紙に転写する方式[7]
  5. ^ 大文字RとQは右上のサンプル図参照。大文字Cは右の図にあり、その書き始めが上へ突起した形(top spur)である(なお、小文字の c だとここはケルン)。
  6. ^ 基準よりも横幅が狭く設計された書体のこと。文字が縦長になるため和文フォントでは「長体」ともいう。これとは逆に、横幅が広いものはエクステンデッド、エクスパンデッドと呼ばれる。

出典[編集]

  1. ^ Tichenor, Irene (2005). No art without craft: The life of Theodore Low de Vinne, printer (1st ed.). Boston (Mass.): D. R. Godine. pp. 106-110. ISBN 9781567922868 
  2. ^ Drucker, Margaret Re ; essays by Johanna; Mosley, James (2003). Typographically speaking : the art of Matthew Carter (2. ed.). New York: Princeton Architectural. p. 36. ISBN 9781568984278. https://books.google.com/books?id=WqXd_w4S4SsC&pg=PA35 
  3. ^ Cost, Patricia A. (2011). The Bentons : how an American father and son changed the printing industry. Rochester, N.Y.: RIT Cary Graphic Arts Press. ISBN 978-1-933360-42-3 
  4. ^ Ralf Herrmann,"Stroke contrast | Definition and Translations",typography.guru,August 5, 2015
  5. ^ a b Modern Suite specimen”. Shinntype. 2015年11月1日閲覧。
  6. ^ Rules of the Supreme Court of the United States”. Supreme Court of the United States. p. 42 (2013年). 2017年1月11日閲覧。
  7. ^ 澤田善彦, 玉虫幸雄「コンピュータtoプリント」DTPエキスパート用語辞典、JAGAT、2005年、83頁。2019年2月21日閲覧
  8. ^ a b c d Shaw, Paul. "The Century Family" in Fine Print on Type. Edited by Charles Bigelow, Paul Hayden Duensing, and Linea Genry. San Francisco: Bedford Arts, 1989. ISBN 0-9607290-1-1, p. 46-9.
  9. ^ De Vinne, Theodore Low. ''The practice of typography; a treatise on the processes of type-making, the point system, the names, sizes, styles and prices of plain printing types. New York, NY: The Century Co., 1902. p. 359.
  10. ^ a b c d e f g h MacGrew, Mac. American Metal Typefaces of the Twentieth Century. New Castle, Delaware: Oak Knoll Books, 1993. ISBN 0-938768-34-4, pp. 76-81.
  11. ^ American Specimen Book of Type Styles. Jersey City: American Type Founders Company, 1912. p. 359. Archived: https://archive.org/stream/americanspecimen00amerrich#page/n15/mode/2up
  12. ^ a b c Lawson, Alexander, Archie Provan, and Frank Romano. Primer Metal Typeface Identification. Arlington, Virginia: Printing Industries of America: National Composition Association 1976, pp. 34-35.
  13. ^ Berlow, David and Roger Black. "New Fonts: Benton Modern Display, Rocky & ITC Franklin" from The Font Bureau, Inc. Blog. 15 September 2008. http://www.fontbureau.com/news/2008-09-15
  14. ^ Century FB”. Font Bureau. 2015年11月4日閲覧。
  15. ^ Century Schoolbook”. Microsoft. 2015年11月1日閲覧。
  16. ^ Stephen Coles, Chris Jordan, Henrique Gusso, Rainer Joswig, and Sarah Jenkins. Identifont. http://www.identifont.com/show?EIE
  17. ^ URW font ttf conversions”. Ghostscript. 2015年9月22日閲覧。
  18. ^ TeX Gyre Schola (alternative Century Schoolbook otf conversion)”. FontSquirrel. GUST. 2015年11月1日閲覧。
  19. ^ 'Century'”. Microsoft. 2015年11月1日閲覧。
  20. ^ Grad (with PDF specimen)”. Mark Simonson Studio. 2015年11月1日閲覧。
  21. ^ Yefimov, Vladimir; Shmeleva, Anna (2007). “Century Schoolbook” (Russian). Velikiye shrifty [Great typefaces]. pp. 86?113. ISBN 9785931651965. http://www.paratype.ru/arts/Century-Schoolbook.pdf/ 
  22. ^ "Century Nova, New Typeface, Shown at Premiere in Milwaukee," Inland Printer, November 1965, p. 176.
  23. ^ Jaspert, W. Pincus, W. Turner Berry and A.F. Johnson. The Encyclopedia of Type Faces. Blandford Press Lts.: 1953, 1983. ISBN 0-7137-1347-X, p.43.
  24. ^ Century Nova”. MyFonts. Scangraphic. 2015年11月4日閲覧。
  25. ^ Modern Suite review”. Typographica. 2015年11月1日閲覧。
  26. ^ Scotch Modern review”. Print magazine. 2015年11月1日閲覧。
  27. ^ Kryukov, Alexey. Old Standard TT accessed through Google Fonts website. https://www.google.com/fonts/specimen/Old+Standard+TT
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  29. ^ Chronicle Text”. Hoefler & Frere-Jones. 2015年11月1日閲覧。
  30. ^ Eames Century Modern”. House Industries. 2015年11月1日閲覧。
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  32. ^ Century 751”. MyFonts. Bitstream. 2015年11月4日閲覧。

関連項目[編集]